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春一番に似た天気図 北日本は雪水比が小さい湿った雪に注意

饒村曜気象予報士
着雪した木々(ペイレスイメージズ/アフロ)

春一番と同じ天気図

日本海で低気圧が急発達し、日本列島には季節はずれの強い南よりの風が吹き、暖気が入って気温が上昇しました。

北陸地方はフェーン現象がおき、乾燥した強い風によって新潟県糸魚川市では大火が発生しました。

東京では22日の最高気温が20.2度と、12月としては珍しい20度超えでした。また、最大風速は南の風10.1メートル、最大瞬間風速は南南西の風23.0メートルでした。

図 地上天気図(12月22日21時)
図 地上天気図(12月22日21時)

22日の天気図は、春一番のときの天気図と似ており、おきた現象も春一番のときに似ています。

これから24日にかけて、北日本と北陸地方中心に暴風や高波、北海道地方では大雪や猛ふぶきによる交通障害のおそれがあります。

暖気が入っていますので、雪水比の小さな雪や、融雪に注意が必要です。

その後、西高東低の気圧配置となり、寒気が南下して本格的な冬となり、ナポレオンを撃退した新聞記事が語源の「冬将軍」がやってきます。このときは、雪水比の大きな雪が降ります。

雪水比

降雪量(センチメートル)を降水量(ミリメートル)で割ったものを雪水比といいます。

10センチの降雪があったときの降水量が10ミリの場合、雪水比は1.0になります。

雪水比は、平均的には、気温が低くなるほど雪水比は大きくなります。

ー20度の場合の雪水比  1.4

ー10度の場合の雪水比  1.3

0度の場合の雪水比  0.8

1度の場合の雪水比  0.3

雪水比が小さいほど雨に近くなり、0.5~1.0の時は湿った雪、1.0以上は乾いた雪となります。

北海道の雪は雪水比の大きな雪

北海道は気温が低いことから、ほとんどが雪水比の大きな雪です。

乾いた雪ですので、コートについても、容易に払い落とすことができます。

パウダースノーと呼ばれるスキーに適した雪です。

このため、雪の日に傘をささなくて済みます。北海道・函館に最初に勤務したとき、「今年本州から転勤してきた人は、雪の日に傘をさすのですぐ分かる」と言われたことがあります。北海道に2年以上住んでいる人は雪の日に傘をささないからです。

ただ、今回の雪は、南から暖気が入っているときの雪ですので、雪水比の小さな湿った雪です。

水分を多く含んでいるということから「着雪しやすい」、「重い」、「滑りやすい」という特徴があります。

このため、着雪しやすいことによる電線の切断、重くて着雪しやすいことによる鉄塔や樹木の倒壊、滑りやすいことによる転倒などに注意が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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