Yahoo!ニュース

年間10個目の台風が上陸した日

饒村曜気象予報士

気象庁では、台風の気圧が一番低い場所が、九州・四国・本州・北海道の上にきたときを「台風上陸」といいます。島の上の通過や、岬を横切って短時間で再び海に出る場合は上陸ではありません。台風の上陸は、年平均で約3個です。

台風の上陸数の年変動が大きくなっている

台風の定義が「中心付近の最大風速が17.2m/s以上の熱帯低気圧」と決まった昭和26年(1951年)から台風上陸についての統計があります。

台風の年間上陸数は、昭和26年から55年までの30年間で3.0個、昭和56年から平成22年までの30年間で2.7個となっています。戦後しばらくの時期と近年では、長い期間での平均では若干の減少ということになりますが、それ以上に大きな変化は、年による変動が非常に大きくなっていることです。

昭和26年からの30年間では、上陸数の最大が5個、最小が1個と台風が上陸しない年はありませんでした。しかし、昭和56年からの30年間では、上陸数の最大が平成16年の10個で、上陸しない年もあります。

つまり、標準偏差を考えると、台風上陸数が2~4個の時代から、1~5個の時代に変わっているといえます。

ただ、最近で言えば、平成23年が3個、24年2個、25年2個、26年4個、27年4個と年々変動が少ない状態が続いていましたが、平成28年は今の段階でも6個と、非常に多くなっています。

平成16年の台風23号

平成16年10月20日、台風23号が、この年10個目の上陸台風として高知県土佐清水市付近に上陸しています。上陸時でも中心気圧は955ヘクトパスカルと強い勢力を保っており、日本付近の前線を刺激して、九州から関東にかけて記録的な大雨となり、兵庫県豊岡市の円山川の堤防が決壊するなど、台風第23号の被害は全国に及び、死者 95 人と、100人以上の死者を出した昭和54年の台風第20号以来の多くの死者がでました。

ニュース映像では、京都府舞鶴市での由良川氾溢で、国道175 青線では渋滞で止まった車列が水没し、バスの屋根の上に37 人が避難して夜をあかし、9時間後に救助されたことや、富山県の富山港沖に碇泊していた航海訓練所の 「海王丸」は強風で流されて防波堤への衝突が大きく扱われました。

平成16年は台風10個上陸だけではない

平成16年は、上陸台風で10回の被害があっただけではありません。7月14日に「新潟・福島豪雨」、7月18日に「福井豪雨」という、気象庁が特別に命名するほどの災害が立て続けに発生し、10月23日には「新潟中越地震」が発生しています。

このため、災害時要援護者対策など、これまでの防災対策の見直しや強化が図られています。

今年の台風上陸は今のところ6個

平成16年は、平年より北東に偏った太平洋高気圧の周りを北上し、北東進して上陸した台風が多いという特徴があります。また、10月になっても日本付近の海面水温が高かったため、台風22号と台風23号という、2個の台風が衰えずに上陸し、大きな被害が発生しました。

表 平成16年と平成28年の台風上陸日
表 平成16年と平成28年の台風上陸日

今年は、太平洋高気圧が割れて北西進して上陸した台風が多いという特徴があります。また、台風1号の発生が7月3日と遅かったこともあり、7月まで台風の上陸はありませんし、10月も台風18号が佐渡沖で温帯低気圧に変わってから東北地方を横断することがありましたが、上陸数は今のところゼロです(表1)。

つまり、今年の台風上陸数が、歴代2位タイの6個というのは、8月に台風7号、9号、10号、11号と、4個も上陸したからです(図1)。なお、台風6号が北海道の根室半島付近を通過していますので、実質、8月は5個の台風上陸です。

図1 平成16年8月の台風の経路
図1 平成16年8月の台風の経路

今年の台風22号の動き

一時、「猛烈な台風」にまで発達した今年の台風22号ですが、西北西進して中国大陸に上陸、その後、向きを東に変え、西日本に接近するとの予報です(図2)。

図2 台風22号の進路予報(10月19日21時)
図2 台風22号の進路予報(10月19日21時)

台風22号は、西日本に接近する前に、中国大陸で温帯低気圧に変わるか、消滅するので、7個目の上陸とはならないと思いますが、台風22号が早い段階で向きを東に変えた場合は、台風の持ち込んだ暖かくて湿った空気が入ってきますので、大雨に注意が必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事