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10月の季節はずれの暑さは台風とフェーン現象がからんでいる 3年前には新潟県糸魚川で10月の猛暑日

饒村曜気象予報士
親不知海岸(写真:アフロ)

10月の最高気温のランキング

台風18号が東シナ海を北上中の10月4日、栃木県佐野市では猛暑日の手前である34.1度を観測しました。南からの暖かい空気の流入に日照が加わり、それにフェーン現象が重なったと思われますが、気象庁が発表している10月の最高気温のランキングでは6位タイの記録がでました(表)。また、台風18号が佐渡沖で温帯低気圧に変わり、東北地方を通過して三陸沖に進んだ10月6日、南から暖かい空気の流入に日照が加わり、千葉県茂原で34.0度を観測しましたが、35.0度には達しませんでした。

表 10月の最高気温のランキング
表 10月の最高気温のランキング

10月の猛暑日

10月に最高気温が35度以上という猛暑日の基準である気温を観測したのは、過去に1回しかありません。

それは、古くから北陸道最大の難所として知られている親不知海岸がある新潟県糸魚川市で、平成25年10月9日13時53分に35.1度を観測しました。日本海にある台風24号から変わった温帯低気圧に向かって吹く南よりの強風によってフェーン現象がおきたためです(図1)。

図1 地上天気図(平成25年10月9日9時)
図1 地上天気図(平成25年10月9日9時)

また、糸魚川市で猛暑日となる一週間前、台風22号が関東の東海上を北上したときに静岡県天竜でフェーン現象がおき、34.1度を観測してランキング6位となっています。

さらに、3位の長崎県野母崎の34.3度は、台風19号が西進して台湾に上陸したときです。

このように、10月に季節はずれの暑さとなるときには、台風がからんでいます。そして、フェーン現象がからんでいます。

フェーン現象

気温は、空気が乾いていると高さ100メートル上昇するごとに、約1度の割合で下がり、逆に、100メートル下降するごとに、約1度の割合で上がります。

しかし、空気が湿って飽和していると、気温が下がると水蒸気が水に変わり、熱を放出します。水に熱を加えると蒸発するのと逆の現象がおきます。

図2 フェーン現象の説明図
図2 フェーン現象の説明図

このため大気が温められ、高さが100メートル上昇するごとに、約0.5度の割合でしか下がりません。

つまり、湿った空気が上昇して山を超えるときは、100メートルにつき0.5度の割合で気温が下がり、山を越えて下降するときは、100メートルにつき1. 0度の割合で気温が上がることで、同じ高度なら、山の風上側に比べて風下側の方が気温が高くて湿度が低くなります(図2)。これがフェーン現象です。

ヨーロッパのアルプス地方のフェーンという地名からきた言葉ですが、昔、「風炎」という漢字をあてた先人たちのセンスを感じます。

図1、表の出典:気象庁ホームページ

図2の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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