東海道線が127年前に全通、谷津沢川は川の下を通過、それ以外の川は橋が架けられ川の上を通過
明治22年(1889年)7月1日に京浜地区と阪神地区を結ぶ日本の大動脈である東海道線が全通しています。東京駅はまだできておらず、新橋と神戸間を20時間で結びました。
新橋と横浜間に鉄道が開業してから17年目のことです。
この東海道線の上を開業当時から川が流れています。
静岡市の谷津沢川
鉄道が川と交差するところでは、普通は、川に橋を架け、川の上を鉄道が走っています。
東海道線も、新橋と神戸間では、静岡市の谷津沢川以外の川には鉄道が通る橋が架けられています。このため、川の上を鉄道が通ります。
谷津沢川は、長さが1260メートルの川です。途中で200メートルほどの暗渠に入りますが、暗渠の一部が線路の上の鉄製の水路橋となっています(写真)。つまり、鉄道の上に川の水が流れる橋が架けられていますので、鉄道の上を川が流れているのです。
その場所は、JR東海道本線と静岡鉄道清水線が並んで走っているところで、静岡鉄道の狐ケ崎駅付近です。
橋の上部は歩道橋として利用されていますので、この場所では、東海道線の上を川が流れ、川の上を人間が歩いているのです。
谷津沢川は下流で大沢川と合流し、その大沢川は巴川に合流して清水港がある折戸湾に流れ込んでいます。
緩やかな勾配は広い範囲を潤す
谷津沢川の水路橋のあった場所は、もともと丘陵地で、日本平から谷津沢川が流れていました。それが、明治20(1877)年頃に東海道線を開通させるため、丘陵地を切り開いたときに川を残した名残です。
切り開いたままでは東海道線のところで滝となり排水のための水路が必要となりますが、それは大きな問題ではありません。
問題は、切り開いたところから下流の住民の生活です。
水がこなくなり生活ができなくなってしまいます。そこで水路橋が作られたのです。
その後の改修があり、現在の形に変わっていますが、小エネルギーで水の恩恵を受け続けていることにはかわりがありません。
水はわずかでも低い方へ低い方へと流れる性質がありますので、川が緩やかな勾配を保っていれば広い範囲を潤します。逆に、急な勾配があると潤す範囲は狭くなります。
周辺より僅かでも低い土地は水害に注意
水はわずかでも低い方へ低い方へと流れる性質は、時として思いがけない災害をもたらすことがあります。
「緩やかな勾配のところは広い範囲を潤す」ということは、「緩やかな勾配のところは広い範囲に降った雨が集まってくる」ということを意味します。自分のところでは強い雨が降っていなくても周辺に強い雨が降ればたちどころに集まってきて水害になります。
しかも、緩やかな勾配のところは、周囲より土地が低いということを認識しずらく、水害に対して油断しがちな場所でもあります。
大雨に警戒が必要な梅雨期間は半分が過ぎたところで、まだ半分残っています。
自分の身を守るためには、常に洪水ハザードマップなどを調べ、自分の周囲の状況を知っておくことが大事です。