Yahoo!ニュース

90年前の十勝岳噴火による雪解けで発生した泥流

饒村曜気象予報士
ラベンダー畑と十勝岳連邦(写真:アフロ)

十勝岳は、北海道中央部にある十勝岳連峰の主峰です。

約50万年前から、富良野岳や美瑛岳などの成層火山が形成されたのちにできた十勝岳ですが、しばらく休息期に入り、約1万年前に活動を再開し、噴火を繰り返しています。

その十勝岳では、90年前の昭和元年5月24日の水蒸気爆発がおきています。

残雪を溶かして泥流

十勝岳は、約500年前頃からは中央火口丘での活動で、安政4年(1857年)や明治20年(1887年)の噴火では周辺に灰を降らしています。

また、大正12年(1923年)の噴火では、溶けた硫黄の沼ができています。

これらは中央火口を中心とした現象でした。

しかし、今から90年前の昭和元年(1926年)5月24日、大規模な水蒸気爆発により生じた岩屑なだれは、山頂付近の残雪を融かして泥流を発生させました。

この泥流は美瑛川と富良野川を一気に流下し、十勝岳から離れた上富良野を中心に死者・行方不明者144名という大災害を引き起こしました。

山頂付近に残雪がなければ、泥流を生じることもなく、大きな被害が発生しなかったと考えられています。

十勝岳など全国の火山を監視

気象庁では 十勝岳など、全国の火山を常時監視しています(図)。

図 十勝岳の観測点配置図(気象庁HPより)
図 十勝岳の観測点配置図(気象庁HPより)

そして、噴火災害軽減のため、平成19年12月より、全国110の活火山を対象として、観測・監視・評価の結果に基づき噴火警報・予報を発表しています。また、同時に、それまでの火山活動度レベルに代わって、噴火警戒レベルが運用されています。

噴火警報は、「警戒が必要な範囲」が火口周辺に限られる場合は「噴火警報(火口周辺)」(又は「火口周辺警報」)、「警戒が必要な範囲」が居住地域まで及ぶ場合は「噴火警報(居住地域)」(又は「噴火警報」)として発表し、海底火山については「噴火警報(周辺海域)」として発表します。

これらの噴火警報は、報道機関、都道府県等の関係機関に通知されるとともに直ちに住民等に周知されます。

噴火警報を解除する場合等には「噴火予報」を発表します。

十勝岳では、ごく小規模な水蒸気噴火の兆候が見られないとして、平成27年2月26日に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(正常)に引き下げていますが、現在もレベル1が継続中です。

火山防災には気象も関係

十勝岳で発生した泥流被害のように、火山防災については、火山についての情報だけでなく気象の情報も重要です。

気象庁は、名前は「気象」しかありませんが、地震、火山、海洋など自然現象すべてを対象として業務を行っています。

一つの組織で、自然現象すべてを対象としている国はほとんどありません。私は、災害が多い日本では、自然現象を一つの組織でおこなったほうが効率的であったことや、複合する災害に対して高度な対応が可能と考えたためではないかと考えています。

火山に関する情報は、各種機関が協力して行っていますので、内閣府のHPに情報がまとめられています。また、気象庁のホームページには、火山に関する最新の情報が掲載されていますが、同時に、気象や地震、海洋など、自然現象に関する最新の情報が掲載されています。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事