桜は咲いている期間が短く、農作業の目安だった

桜と着物姿の女性(写真:アフロ)

福岡市では、全国のトップをきり、平年より4日早く桜が開花しました。

気象庁では、開花を花が5~6輪開いた状況、満開を80%以上が咲いた状態としています。

ニュースで取り上げられるトップ争いは、気象庁が観測している桜についてです。それ以外の観光地の桜のなかには、もう少し早く咲いているところもありますが、今後、全国的に開花が、加速します。

桜前線の生みの親は初代天気相談所長

日本各地の桜(主にソメイヨシノで、北海道の一部はエゾヤマザクラとチシマザクラ)の開花日が同じ場所を結んだ等期日線を桜前線といいます。

桜前線のような「花の前線」は、昭和36年頃、気象庁の初代天気相談所所長だった大野義輝さんが造語したものが広まったといわれています。同じ花が咲いているところを地図上に結んでゆくと頃を地図上で結んでできた線が、天気図上の前線に似ていたからです。

桜前線を境に、片側では暖かい空気があって花が咲き、反対側では冷たい空気があって花が咲いていないというイメージです。

大野義輝さんは、アイデアマンで、現在も使われているいろいろな気象解説の方法を編み出しています。定年は函館海洋気象台で迎えましたが、その時私は函館に新採用、小柄で温厚な紳士で、分かりやすく話しをしてくれました。今となっては、戦後に急速に充実してきた国民への気象情報提供についての話しを、もっとお聞きしておけばと思います。

桜前線は、例年3月下旬に九州南部から四国南部へ上陸し、順次、九州北部から四国北部、瀬戸内海沿岸、関東地方、北陸地方、東北地方と北上し、5月中旬に北海道東部に達します。

気象庁で行われていた桜の開花予報

気象庁による「さくらの開花予想」の発表は、平成21年(2009年)まで半世紀以上続きましたが、国全体の行政事務の見直しのなかで、桜の開花予想は防災業務を分担している気象庁の業務にはなじまないなどの理由からの廃止となっています。

民間気象会社の桜の予想が充実してきたことが背景にあります。

現在は、国民からの桜情報の需要に対しては、日本気象協会、ウェザーニューズ社、ウェザーマップ社などの民間気象会社が桜の開花予報を行っています。

気象庁が単独発表から民間気象会社どおしの競争となった桜の開花予想ですが、各社とも独自の観測地点を選び、独自の表現で、独自の日にちに開花予報を発表しています。

このため、どの社が一番当たっているかということは難しいのですが、ネットで比較し、一番使いやすいものがを選ぶと良いでしょう。

桜は種まき用の季節時計

桜が珍重された理由のひとつは、古来から稲の種まき用の季節時計として使われたからです。

春に咲く花は、秋から冬、春先の気温などの影響を受け、季節の遅れ進みによって遅く咲いたり、早く咲いたりします。

しかし、この遅れ進みがあまりにも大きくでると、農業用の季節時計としては使えません。桜の場合、早い年と遅い年の違いは3週間程度ですが、梅は40から60日、ツバキは60~100日もあります。

今年の高松での梅の開花は、平年より37日も早く、昨年の12月14日に咲いています。これは、11月が高温であったためですが、このように極端に早く咲くと、農業の季節時計として梅は使えません。

しかも、桜は、花が咲いている期間が短く、農作業をせかせるアラーム機能がついているようなものです。

開花から満開までの期間は、沖縄・奄美で約16日、九州から関東で約7日、北陸から東北で約5日、北海道で約4日となっていますので、北日本ほど、桜の期間が短くなり、それだけせかされます。

このため、春の花のうち、桜が種まきの目安として最適だったのです。

事実、気象庁の桜の開花予想は、農業と気象の関係の調査から始まっています。

最初の桜の開花予想は、気象庁の前身である中央気象台の農業気象掛が、昭和3年から発表していますが、当時は関係者のみへの伝達で、積極的には発表していません。

桜は花の期間が短いことに加えて、天気が変わり易い時期に開花です。

桜の花見に適した日は、曜日の関係や天気の関係で意外と少ないので、早めの計画が必要です。