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自然現象の融雪と人為的な融雪

饒村曜気象予報士
雪解け(写真:アフロ)

移動性高気圧の通過で晴天域が広がったため、北日本から西日本にかけて気温が上昇し、これから暖かい日が続きますので、今週末には桜の便りがあるかもしれません。

北海道や北陸の多雪地帯では雪解けが進みますが、融雪は、個体である雪の氷が、液体である水に変わることで、人間活動にとって障害となる積雪を人為的に除去しようとする融雪と、自然現象によって起きる融雪の2種類があります。

人為的な融雪

積雪は放置しておくと強度不足の建物などが潰れたり、円滑な交通を妨げるので除雪や融雪が行われます。雪を固体のまま移動させる除雪に比べ、融雪は雨と同様に低いほうへ流れてくれるので、雨と同様に自動的に処理できるという手軽さがあります。

人為的に雪を融かすには、ニクロム線に電流を通して加熱したり、灯油やガスなどで加熱した不凍液を循環させるという、熱を加えて局所的に雪を溶かす方法の他、塩化カルシウムなどの融雪剤を散布して、雪が溶ける温度を下げる方法があります。

融雪剤散布により、雪が水へ変わるので、高速道路や国道の円滑な通行に寄与していますが、融雪剤を多量に散布することによる環境への影響の他、極端に低い温度の中では効果が得られないという問題もあります。

広い範囲を融雪する場合は,経済的な観点から自然の力を利用して少ないエネルギーで温めることが考えられています。

たとえば、相対的に温かい地下水を汲み上げて道路に散水して自動的に融雪する消雪パイプや、春先に農作業を早くはじめるために雪面に炭などを散布して黒く着色し、太陽熱を吸収させて融雪する方法などがあります。

融雪の恵みと災害

春になって融けた雪は、雨が少ない春先の農作業にとって貴重な水資源となっています。この融雪の恵みによって多雪地帯は米どころとなっています。

しかし、急激に融雪が進むと、河川が増水してはん濫したり、崖崩れや地すべりなどの災害が発生します。

気象庁が発表する融雪注意報は、融雪により被害が予想される場合に行いますが、洪水注意報と同時に発表されることが多い注意報です。

雪が多く積もっていないと被害が出るほどの融雪とはならないので、融雪注意報が発表されるのは、雪が多く積もっている地方です。

ただ、融雪注意報の発表基準となる要素や表現の仕方は、地方によって大きな差がります。気温が高いほど、雨量が多いほど、風が強いほど融雪が進みますので、これ等を考慮した数値基準が作られているのですが、具体的な数値基準のない府県も多くあります。それだけ、融雪注意報は地域差があるのです。

表 融雪注意報の基準
表 融雪注意報の基準

表の出典:饒村曜(2015)、融雪、気象災害の事典、朝倉書店。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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