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気象庁が単独発表から民間気象会社どおしの競争となった桜の開花予想

饒村曜気象予報士
桜(写真:アフロ)

週明けにかけて、気温は日に日に上昇し、広く4月並みの暖かさになります。

雨は降りますが、冷たい雨ではなく、一雨ごとに桜が待ち遠しくなる春の雨です。

図1 東京の週間天気予報(3月3日17時発表)
図1 東京の週間天気予報(3月3日17時発表)

桜前線

日本各地の桜(主にソメイヨシノで、北海道の一部はエゾヤマザクラとチシマザクラ)の開花日が同じ場所を結んだ等期日線を桜前線といいます。

桜前線は、例年3月下旬に九州南部から四国南部へ上陸し、順次、九州北部から四国北部、瀬戸内海沿岸、関東地方、北陸地方、東北地方と北上し、5月中旬に北海道東部に達します。

気象庁では、開花を花が5~6輪開いた状況、満開を80%以上が咲いた状態としています。

九州から東海・関東地方では、開花から満間まで約7日です。

気象庁で行われていた桜の開花予報

気象庁による「さくらの開花予想」の発表は、昭和26年(1951年)に関東地方を、昭和30年からは全国(沖縄・奄美地方を除く)を対象に始まり、平成21年(2009年)まで半世紀以上続きました。

国全体の行政事務の見直しのなかで、桜の開花や満開などについての気候に関連する観測は、地球温暖化対策など国の業務と関連することから気象庁が継続して行うこととなっていますが、桜の開花予想は防災業務を分担している気象庁の業務にはなじまないなどの理由からの廃止となっています。

しかし、国民からの需要がなくなったわけではありません。国民からの需要に対しては、日本気象協会、ウェザーニューズ社、ウェザーマップ社などの民間気象会社が桜の開花予報を行っています(図2)。

図2 桜の開花前線(ウェザーマップ社が3月3日に発表)
図2 桜の開花前線(ウェザーマップ社が3月3日に発表)

例えば、3月3日にウェザーマップ社が発表したさくらの開花予想では、

「今年のさくらは、平年並みかやや早めの開花となるところが多いでしょう。開花が一番早い予想なのは福岡で3月20日。関東から西の地域では、見頃は3月末ごろからとなりそうです。」

となっています。

気象庁が単独で発表していた時代と違い、民間気象会社どおしの競争の中で、桜の開花予想が行われていますので、早春は民間主導で桜の開花待ち状態になります。

日本で一番早く咲くのは

関東から西の太平洋側の地方では、どこが一番早く桜が咲くかということが話題になり、早く咲いた場所は全国ニュースになります。

これは、1月中旬から咲く沖縄と奄美大島のヒカンザクラや、1月下旬から咲く静岡県河津町のカワヅザクラなどを除き、ソメイヨシノについての競争です。

そして、気象庁の有人官署で観測がある場所についてのものです。このため、愛媛県に宇和島測候所があった平成17年までは、宇和島が日本で一番早く咲いことが何度もあり、全国ニュースとなっていましたが、現在は、無人の特別地域気象観測所となっていますので、宇和島は対象外となっています。

気象庁の有人官署で観測がある場所での一番争いですので、今年は福岡が本命ですが、佐賀、熊本、大分、名古屋、静岡、横浜、東京のいずれかになる可能性もあります。

ただ、最近は東京がよく一番争いに登場するようになっています。東京の桜は靖国神社の桜が規準ですが、都市化の影響で早まる傾向があり、桜は東京から開花という時代になるかもしれません。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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