爆弾低気圧の注目点は中心気圧より等圧線の混む場所
東日本の南海上を通過中の低気圧で、広い範囲で強い風と雨や雪になっています。今後、低気圧は北海道の東海上で爆弾低気圧と呼ばれるほど急速に発達し、日本付近は西高東低と呼ばれる冬型の気圧配置となります。
続いていた暖冬が一休みし、顕著な寒波が襲来しますが、長期予報によると、それほど長続きしません。
爆弾低気圧は、「台風並みに発達」などと中心気圧が注目されますが、注目点は等圧線の混む場所です。
天気図の多くは気圧だけしか記入していない図
普段、耳にしている気圧とは、大気の重さのことです。地図上に、天気を記入した地図を天気図といいますが、気圧が等しいところを結んだ線(等圧線)しか書かれていない図も天気図といいます。気圧図と呼ばない理由は、等圧線しか描かれていなくても、天気のことをいろいろと推定できるからです。
等圧線の伸びる方向と間隔から風向と風速がわかる
等圧線だけからでも、等圧線の延びる方向から風向、混み具合から風速をそれぞれ推定できます。地図で等高度線の間隔が混んでいるところは、傾斜が急で、そこを流れる川は速い流れです。反対に等高度線の間隔が開いてるところは傾斜がゆるやかで、そこの川はゆっくりとした流れです。空気(大気)も同じです。等圧線の混みぐあいを気圧頻度といいますが、気圧傾度が大きいところで、空気が早く動く、つまり強い風が吹いています。
反対に、等圧線がまばらな場所、つまり気圧傾度の小さいとこは風が弱くなっています。ただ、川の流れと違う点は、地球の自転の影響をうけ、まっすぐに気圧の低いところには向かわないところです(図1、図2)。風が強くなればなるほど、風による被害が大きくなりますので、等圧線が非常に混んでいるところは、警戒が必要な場所です。
等圧線の分布から天気がわかる
等圧線の分布から天気等の情報も推定することができます。
周囲より気圧が低い低気圧では周辺の空気が集まって上昇気流となっています。また、暖かい空気と冷たい空気がぶつかっている前線のところでは、気圧の低い部分が細長くのびています。これらのことから、低気圧や前線付近といった雨や曇りの天気の場所が推定できます。
また、気圧が極端に低くなっているところは、台風などであり、暴風雨となっていることが推定できます。
逆に、周囲より気圧が高い高気圧の域内では空気が降りてきて、周辺に空気が吹き出しており、ここでは、晴れていることが多くなっています。
さらに、冬に等圧線の配置が、日本列島の東側で気圧が低く西側で気圧が高いとなっていれば、日本海側の地方では雪、太平洋側の地方では晴れとより細かく天気が推定できます。つまり、気圧の分布図は、天気のことをいろいろと推定できる天気図なのです。
気圧の値が低いことより等圧線の間隔が狭いことに注意
発達した低気圧の中心付近で気圧の値が低くても、等圧線の間隔が広くて穏やかな天気のことは珍しくありません。
しかし、その周辺では、気圧の値が高くても、等圧線の間隔が狭くて暴風となっているところがあります。この等圧線の間隔が狭いところがやってくると、それまで穏やかであっても急に荒れることがあります。
平成25年3月2日から3日にかけて発達した低気圧によって北海道は暴風雪となり、立ち往生した車のなかでの一酸化炭素中毒や、雪を巻き上げて視界が悪くなる「ホワイトアウト」による目的地までわずかな所での凍死などで9名が亡くなっています。2日午前の北海道は、低気圧の中心付近ではあったものの等圧線の間隔が広く、穏やかな天気でした。しかし、北海道の西海上にあった等圧線の混んだ部分がやって来た夕方から、急に風と雪が強まっています。
警報や注意報の発表時に外出する時は、最新の天気図で確認するなど、安全対策が必用です。
図1、図2の出典:饒村曜(2004)、雨と風の事典、クライム。