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台風18号と土砂災害警戒情報

饒村曜気象予報士
土砂災害警戒情報の発表地域を示す図(気象庁HP、9月9日12時30分)

台風18号は9月9日10時すぎに愛知県知多半島に上陸しましたが、台風の接近前からの大雨がふっており、台風の通過後も雨が続く予報になっています。このため、各地で土砂災害の危険性が非常に高くなっており、大雨警報と土砂災害警戒情報が発表されています。

土砂災害警戒情報の発表開始

土砂災害警戒情報は、増加傾向にある土砂災害被害を軽減するため、気象庁と都道府県とが共同で発表する防災情報で、大雨警報発表中において、大雨により土石流や集中的に発生する急傾斜地崩壊の危険度が高まった市町村を特定(一部の市町村はさらに分割)して発表するものです。つまり、土砂災害警戒情報が発表されているときは、必ず、大雨警報が発表されています。ただ、大雨とは直接的な関係がなく、技術的に予測が困難である地すべり等は発表対象とはしていません。

土砂災害警戒情報は、市町村長が避難勧告等の災害応急対応を適時適切に行うための重要な判断材料として、また、住民の自主避難の判断等に利用できることを目的としています。最初の業務開始は、平成17年9月の鹿児島県で、全都道府県で業務を行うようになったのは、平成20年3月です。

土砂災害の発生は土壌中に留まっている水分量と関係がある

大雨によって発生する土砂災害(土石流・がけ崩れなど)は土壌中の水分量が多いほど発生の可能性が高く、また、何日も前に降った雨が影響している場合もあります。土壌雨量指数は、これまでに降った雨(解析雨量)と今後数時間に降ると予想される雨(降水短時間予報)等の雨量データから「タンクモデル」という手法を用いて指数化したもので、各地気象台が発表する大雨警報の発表基準や、土砂災害警戒情報に使用しています。

土壌雨量指数が導入されるまでは、それに相当するものとして24時間雨量が使われていました。

図 24時間雨量から土壌雨量指数へ
図 24時間雨量から土壌雨量指数へ

土壌雨量指数は、強い雨でも短時間降りやむなら大きな値になりませんが、弱い雨が続くと徐々に土壌雨量指数があがり、ここに強い雨が加わると、土壌雨量指数が急上昇して土砂災害の危険性が高まります。台風18号に関する雨は、まさにこのような降り方をしています。

土砂災害警戒情報は地震があると発表基準が下げられる

大地震の発生直後は、普段であれば災害がおきない雨でも大災害に結びつくため、大雨警報や土砂災害警戒情報などの基準が暫定的に下げられます。

土砂災害警戒情報は雨が止んでもすぐには解除されない

土砂災害警戒情報は、雨がやんでも土壌雨量指数が大きな値である間は継続されています。土砂災害警戒情報が発表中は、土砂災害の危険性が高い状態が続いているということですので、雨がやんだからといっても、土砂災害警戒情報が解除されるまでは油断できません。

図の出典:饒村曜(2012)、お天気ニュースの読み方・使い方、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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