人種差別問題で浦和レッズに下された「無観客試合」の裁定と、我々が勘違いしてはいけないこと

浦和レッズサポーターの人種差別的行為に関して、Jリーグでは史上初の「無観客試合」という裁定が下った。この裁定にはどんな効果があり、そしてどんな意味を持つのだろうか。

なお日本ではじめて適用されるペナルティであり、実際にどこまで影響があるかはわからないため、あくまで私個人の想像ということでお読みいただければありがたい。

選手は静寂の中で試合をすることになる

海外サッカーファンには(不幸にも)半ば見慣れたペナルティである無観客試合も、日本においては初の実施となる。日本に関する事例でいうならば、2006年W杯最終予選のアウェー北朝鮮戦が無観客試合として行われている。この試合はどちらのホームでもないタイにて実施されたのだが、なんの応援も聞こえず静寂の中で行われる試合は、なんとも異様な雰囲気であったことを覚えている(実際には、スタジアム外で声を張り上げる日本サポーターの声がうっすらと聞こえており、とても誇らしい気持ちになったことも記しておく)。

この無観客試合が選手に与える影響は、集中力の低下だと言われている。いつもなら大勢のサポーターがおり、応援が繰り広げられているスタジアムが、その日ばかりは静寂となる。この特殊な状況に、モチベーションや集中力をを高められない選手もいるとのことだ。とはいうものの、まったく影響を受けない選手もいるだろうし、試合の大勢に影響するかどうかというのは怪しいところである。

ホーム側には金銭的に大きなダメージ

一方で、浦和を中心として、試合に関わる全ての人・団体に対する金銭的な影響は深刻だろう。

こちらについては、浦和レッズより発表されている2012年の収支状況から、とてもざっくりとした計算を行ってみた。

浦和レッドダイヤモンズ 経営情報(2012年)

まず入場料収入が約20億なので、ホームの20試合で割ると、単純に1試合あたりは1億程度となる。加えて広告料収入も単純に20で割ると、やはり1億円程度。だとすると、それだけでも合わせて2億円程度の損害が予想される。実際には契約がどうなっているのかがわからないので、どこまでが払い戻しや返金になるかはわからないのだが、少なくとも2億円程度は損害がありそうだ。加えてチェアマンより「全ての損害はレッズが負担する」的なコメントがあったこともあり、清水側およびサポーターや関係者が被る被害も、全て浦和が負担することになる可能性がある。どこまでが請求されるのかは全く想像できないが、最終的に数億円規模の損害は発生するのだろう。

資料によれば、現在の浦和レッズの純資産は5億円程度であり、また2012年の純利益は1億5000万程度。数億円の損害が想像されるこの無観客試合により、ずいぶんとダメージを受けるのは間違いないと考えられる。

もちろん浦和側の視点としては、勝ち点剥奪にならかっただけマシだったのかもしれない。それでも、いまのJリーグを考えれば、これ以上は難しいくらいの大きな、そして相当に決断の必要な裁定だったのは間違いがなさそうだ。Jリーグに新たな事例を作らせるほどの過ちであったことは、絶対に忘れてはならないだろう。

本当のゴールを間違えてはいけない

最後に個人的な見解を表しておきたい。

上記の通り、無観客試合は浦和のみならず、Jに関連する様々な企業、自治体、団体、個人に影響を与える。誤解してほしくないのだが、私自身は今回の裁定は(様々な状況や事情を顧みるに)妥当なものだと思っている。

この無観客試合については、さまざまな意見があるだろう。清水エスパルス関係者・サポーターは「良い迷惑だな」ととらえる人もいるだろうし、一方で「差別は社会問題であり、全ての人に当事者意識が必要」と考え、妥当もしくは軽すぎると考える人もいるに違いない。

我々が勘違いしてはいけないこと、それは最終的なゴールが浦和に制裁を科すことでは無く、Jリーグとして社会としての「再発の防止」にあることだ。そもそも日本人は、無意識の差別行為に対してとても無頓着であり、今回の「JAPANESE ONLY」に対しても、すぐにその行為の問題に気がつけた人がどれくらいいたのか、甚だ疑問である(笑えない話だが、一時の日本のWebサイトには意味をはきちがえた「JAPANESE ONLY」という表記がスタンダードに並んでいた!もちろん正しくは「Japanese text only」だ)そのことだけは忘れないようにした上で、後日改めて、この裁定にどんな意味と効果があったのかを冷静に見直してみたい。