韓国で初めてとなる独自開発の宇宙ロケットが21日に打ち上られた。ロケット開発は防衛力強化と表裏一体であり、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)試射に続き、ロケット打ち上げが北朝鮮を刺激したのは間違いない。北朝鮮も国防計画に軍事偵察衛星の運用を掲げており、タイミングを計りながら「打ち上げ」に踏み切る可能性が出てきた。

◇「宇宙に近づいた」

 韓国は21日夕、全羅南道にある羅老宇宙センターから韓国初の純国産ロケット「ヌリ号」を打ち上げ、967秒後に目標高度の700kmに到達した。搭載されていたダミー衛星(重さ1.5t)の分離には成功したが、予定していた軌道で安定させることはできなかった。

 だが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も「発射体を700kmまで打ち上げたことだけでも大変なことで、宇宙に近づいた」と評価した。韓国メディアは「宇宙ロケット独立の日」などと大々的に報じた。「ロケット技術は弾道ミサイルなどへの応用も可能」と強調するメディアもあり、韓国が軍事転用の可能性も念頭に置いている点を示唆した。

 韓国はこれまで射程800kmを超える中長距離ミサイルを開発できなかった。朴正熙(パク・チョンヒ)政権時代の1979年、米国との間で「米韓ミサイル指針」が締結され、米国が韓国にミサイル技術を供与する代わりに射程や弾頭重量を制限してきた。北朝鮮による核・ミサイルの脅威が増すにつれ制限は段階的に緩和され、今年5月の米韓首脳会談で完全撤廃が決まり、宇宙開発や軍事産業の発展への期待が高まった。

 ロケット打ち上げに先立つ今年9月15日にはSLBMを試射し、これを視察した文大統領は「われわれのミサイル戦力は北朝鮮の挑発を抑止するのに十分だ」と誇示していた。

 文政権は「自主国防」強化路線を掲げる。同20日には「ソウル国際航空宇宙・防衛産業展示会」(ソウルADEX)の開会式に2017年以来4年ぶりに出席し、演説で「強い国防力が目標とするのは、いつでも平和だ」と強調して、歴代大統領として初めて国産戦闘機FA-50に搭乗した。

◇北朝鮮を刺激か

 米韓ミサイル指針撤廃後の韓国側の動きを踏まえ、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は今月11日の国防発展展覧会「自衛2021」開幕式での演説で▽韓国の軍備現代化の試みが露骨になっている▽一方で北朝鮮の通常兵器実験まで「武力挑発」「威嚇」などとレッテルを貼っている――などと指摘し、「(北朝鮮を)抑止すべき相手に規定した」「敵対心の集中的な表れ」と非難した。

 そのうえで「引き続き(レッテルを貼るなどで)われわれの自衛的権利まで損なわせようとするなら、これを決して許さず、強力な行動で立ち向かう」と警告していた。北朝鮮の新型SLBM試射はこの約1週間後だった。そもそも韓国内には北朝鮮の「自衛2021」を「ソウルADEXに対抗するために開催した」という見方も出ている。

 北朝鮮は、今年1月の朝鮮労働党大会で金総書記が示した課題を「国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画」と規定し、そこには▽核兵器小型化▽極超音速ミサイル導入▽新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発▽原子力潜水艦やSLBMの保有▽軍事偵察衛星の運営――などが列挙されている。既に、極超音速ミサイル「火星8」型や新型SLBMなどを試射していることから、計画にある軍事偵察衛星の打ち上げも状況を見ながら実行に移す構えとみられる。

 衛星打ち上げも長距離弾道ミサイル発射も技術的には同じものであり、韓国の「ヌリ号」も長距離弾道ミサイル技術を使って打ち上げられた。

 ただ、北朝鮮が同じことをやれば国連安保理決議違反となる。

 北朝鮮は国際社会の反発にも構わず、核や弾道ミサイル実験を繰り返してきた経緯があり、国連安保理は北朝鮮による「いかなる核実験または弾道ミサイル技術を使用した発射」も禁じている。たとえ北朝鮮が「衛星打ち上げ」など平和利用を掲げたとしても決議違反となる。

 韓国のロケット打ち上げが認められ、北朝鮮が禁止されているのは、ひとえに北朝鮮の弾道ミサイル技術が核兵器開発と結びついているためだ。