ボランティアの共同作業によって執筆されるオンライン百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」に関連し、この運営団体が親中派ユーザー7人のアクセスをブロックし、12人から管理者の権限をはく奪した。中国当局の意図に沿って中国語版コンテンツを書き込んでいる傾向がみられたというのが理由。中国側はこの措置に強く反発し、「米国政府のような偏ったやり方」と非難している。

◇香港関連の書き込みで対立

 ウィキペディアを運営するウィキメディア財団が今月13日、ボランティアに向けたメッセージとして「中国本土の7人のユーザーの使用を禁止し、12人の管理者権限を削除した」と発表した。発表文はこのような情報公開を「前例のない措置」としている。

 同財団幹部は英BBCの取材に対し、財団が約1年前から「中国語版ウィキペディアへの潜入」について調査を進めてきたと明かした。その結果、今年夏ごろ、ウィキペディアのボランティアの安全を脅かす「確かな脅威」が発生したため早急に対応を取り、「故意の誤報チーム」を立ち上げて調査に乗り出したという。

 その結果、潜入者が中国側の「コンテンツを管理するという目的」のために書き込みをしている点が読み解けたとしている。ただ、この幹部は「中国という国を非難する立場にはなく、その根拠となる情報もない」と慎重な立場を示している。

 BBCによると、財団が調査に際して念頭に置いたのは、中国本土の編集者と香港側ボランティアとの対立だったという。BBCが引用した香港メディアの報道によると、政治に関わるウィキペディアの記事をめぐり、両者で主導権争いが起きていた。この時、中国本土の編集者が▽「信頼できる情報源」として中国国営メディアを使うように働きかけることが多くなった▽国家安全維持法違反摘発のためのホットラインに香港側ボランティアを通報するよう話し合っていた――などが明らかになったという。

 香港側ボランティアが身元を割り出されて標的にされるのを恐れ、ウィキメディア財団に助けを求めたという流れだそうだ。

◇「コンテンツの汚染防ぐ」

 ウィキメディア財団の措置に対し、中国側は猛反発している。中国共産党機関紙・人民日報系「環球時報」は今月18日、「突如として、極めて悪質かつ政治的な措置を取った」と抗議している。「ウィキメディア財団は、米国政府を彷彿させるような、偏ったもの言い」と揶揄したうえ「中国本土の編集者を『ウィキペディアに潜入した中国政府の勢力』と辱めた」と非難した。

 さらに独特の論理で中国側の作業を正当化している。

「本土の編集者は素朴な気持ちで、何年も前からウィキペディアにおける中国関連の項目の多くを無料で構築している。これらのページの客観性と公平性を維持し、極端な政治、邪教の勢力がコンテンツを汚染するのを防いでいる」

 その勢力は「米国や欧米の反中勢力に支持された集団」とも主張している。また今回の措置について「ウィキペディア編集者の信頼を大きく損ない、ウィキペディアの理念に対する読者の信頼を揺るがすことになる」と警告している。

 中国国内ではウィキペディアへのアクセスが制限されている。ウィキメディア財団は2019年5月、全言語のウィキペディアが中国当局によってブロックされていると発表したことがある。当時、天安門事件から30周年となる同年6月9日を控え、ネット上の情報に神経を尖らせている時期だった。

 中国ではフェイスブック、ツイッターなどは長期間ブロックが続いている。