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ダイエットに成功か――金正恩氏が“デビュー”当時の顔つきに近づいたもよう

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
30日掲載された金正恩氏の写真(右は12年4月12日付)=労働新聞などを筆者加工

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がさらにスリムになったようだ。朝鮮労働党機関紙・労働新聞が30日掲載した金総書記の多数の写真を見ると、「やつれた」と話題になった6月中旬よりも、さらにあごのあたりがすっきりしたように見え、最高指導者になったころの顔つきに近づいたように思える。

◇「ダイエット」説が有力

 労働新聞が掲載したのは平壌で今月24~27日開かれた会合や、朝鮮戦争停戦68周年を迎えた27日の「第7回全国老兵大会」での様子。その中には金総書記の写真がふんだんに使われ、採決で挙手する▽開講の辞などを述べる▽講習会参加者との記念撮影に臨む――など数多くの姿が写し出されている。

 これらの写真をみれば、今年6月に党政治局会議以後に話題になった「やせた姿」よりも、あごのあたりがさらにすっきりした印象が残る。

今年6月7日開催の党会議で発言する金正恩氏=朝鮮中央通信より筆者キャプチャー
今年6月7日開催の党会議で発言する金正恩氏=朝鮮中央通信より筆者キャプチャー

 金正恩氏が最高指導者になったころ、肥満の度合いは今ほどには目立たなかった。その当時に発表されたスーツ姿の写真(2012年4月12日)と今回の写真を比較すれば、肥満の度合いに差がないようにも見え、“もとの体型”に近づいた可能性がある。昨年5月に撮影された写真との比較では、顔の輪郭が明らかに異なる。

昨年5月2日に配信された金正恩氏の写真=朝鮮中央通信より筆者キャプチャー
昨年5月2日に配信された金正恩氏の写真=朝鮮中央通信より筆者キャプチャー

 金正恩氏の「激やせ」に関しては、健康不良と、健康管理のためのダイエットの二つの説が語られてきた。最近の情報を総合すると、後者の「ダイエット」説が有力になっているようだ。

 金正恩氏は、父・金正日(キム・ジョンイル)氏の死去(2011年12月)を受け、最高指導者の地位に就いた。そのころ体重は90kg程度と推定されていた。だが、ストレスなどから体重は増え続け、ピーク時には140kg程度にまで達したのではないかと報じられていた。

 ヘビースモーカーであり、糖尿病や高血圧といった疾患を抱えているとの情報もあり、動静報道が長期間途絶えるたびに健康不安説がささやかれてきた。最近は国内行事に頻繁に顔を出し、精力的に活動しており、韓国政府も「健康に異常はないようだ」との見方だ。

◇「核兵器」「核抑止力」の言及なし

 今回の会合は、初めて開かれた朝鮮人民軍指揮官・政治活動家講習会だ。軍総政治局や軍総参謀部、国防省の関係者のほか、軍の各軍種、軍団、師団、旅団、連隊の指揮官ら、軍を支える主要メンバーが大挙して参加した。

 朝鮮中央通信は講習会の目的を「党中央の重大な軍事戦略・戦術思想と、変化した情勢の要求に合致する軍建設の方向と方針を軍事・政治幹部に再浸透、体得させる」ことだと伝え、米中対立といった国際社会の趨勢や、新型コロナウイルス感染症対策などを踏まえた対応が示されたとみられる。

 講習会では、金総書記が開講の辞や結語、閉講の辞を述べた。

 その中で米韓合同軍事演習を念頭に「敵対勢力が、狂信的で執拗な各種の侵略戦争演習を強化し、わが国家を先制攻撃できる能力を引き続き系統的に拡大し、軍備を増強している」「緊張激化の悪循環を根源的に終わらせようとするわが軍隊の決心と闘志をさらに激発させている」との現状認識を示した。

 ただ、公式報道を見る限り、「核兵器」や「核抑止力」などに関する言及はなかった。

 また、軍人に向けて「人民の幸せのための創造者、党に対する人民の信頼の念を守る哨兵、一心団結の城塞を築く一つの城石である、という誇りと自負を抱くようにするのが重要である」と強調した。食糧難緩和のために金総書記が命令した軍糧米放出が適切に実行されなかった状況を踏まえ、「人民の生命と財産を生命を賭して守るべきだ」と強く指示した。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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