「責任感の欠如」「怠惰」「おざなり」――中国の習近平(Xi Jinping)国家主席が共産党の重要会議で、一部の党幹部の仕事ぶりをこう表現して、怒りをあらわにした。党内で習近平氏による「一強支配」の傾向が強まるにつれ、党幹部らは主体性を失い、上からの指示をひたすら待ってリスクを回避するようになったとみられる。

◇「苦しさや困難を嫌がっている」

 習近平氏の発言が記録されていたのは、中国共産党中央文献研究室直属・中央文献出版社が今年6月に発行した「習近平 関于全面従厳治党論述摘編」(2021年版)。「全面的な厳しい党治」、すなわち腐敗摘発に関する習近平氏の発言のダイジェスト版だ。

中央文献出版社が今年6月に発行した「習近平 関于全面従厳治党論述摘編」(2021年版)=筆者の関係者撮影
中央文献出版社が今年6月に発行した「習近平 関于全面従厳治党論述摘編」(2021年版)=筆者の関係者撮影

 それによると、習近平氏は今年1月22日、規律違反を取り締まる最高機関・党中央規律検査委員会の第5回全体会議で、党幹部らの仕事ぶりについて「責任感の欠如」「怠惰」「苦しさや困難を嫌がっている」「おざなりにやって責任を逃れている」などと不満を表明した。

 さらに「党中央委員会の指示をそのまま繰り返して臨機応変に対応できない者、党中央委の文書による指示を待ってから動く者、指示がなければ動かない者がいる」と指摘。そのうえで「私が文書指示を出すのは、最後の一線を守るためだ。私がそれを出さなければ、まさか仕事をしなくなるということではあるまいな?」とたたみかけた。

 中国では習近平氏による「一強支配」が長期化し、トップダウンによる重要事項の決定が続いているようだ。国営メディアも、米中対立や南シナ海、台湾、香港、新疆ウイグル自治区に関する問題、新型コロナウイルス対策などの重要政策において、習近平氏の判断を強調する傾向にある。こうした背景もあって、文書による指示がますます重要になり、幹部は徹底して「指示待ち族」となることでリスク回避を図っているようだ。

 その態度がさらに習近平氏をいら立たせているというわけだ。

◇習近平氏が文書による指示に依存

 党幹部の萎縮ぶりについて、中国政治と法律に詳しいオーストリア・ウィーン大のリン・リー教授は、香港の有力英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)の取材に次のような見解を示している。

「党首脳部からの指示は、党の方針や規則よりも強制力がある。なぜなら、それらは特定の問題について、指定された機関や担当者に対処するよう求めているからだ。この慣行は、2019年に採択された党の通達によって強化された。そこには、どのような状況になれば、幹部たちが上司の指示を仰いで意思決定すべきかが明記されている」

「また、習近平氏から個人的な指示を受けた者は、その実行に向けた作業の進捗状況を報告するよう規定されている」

 米シカゴ大学の楊大力(Yang Dali)教授(政治学)もSCMPの取材に「習近平氏が文書による指示に依存しながら官僚機構を厳しく管理しているため、官僚はリスクを取ることを嫌うようになった」と回答。「習近平氏とその仲間たちは、たくさんの文書による指示を出しており、人々はそれを待つのが自然になっている。反腐敗運動と政治的な教化によって、習近平氏は党全体を支配下に置くことに成功したが、その結果、みなが非常に用心深くなっている」と分析している。