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TikTok運営の中国企業をインドが“金融制裁”――中国「これは強盗だ」

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
(写真:ロイター/アフロ)

 中国アプリの使用禁止を続けるインドが先月、「脱税の疑いがある」として、北京字節跳動科技(バイトダンス)の口座を凍結した。バイトダンスは、世界的に人気の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する中国のテクノロジー企業だ。バイトダンス側は「インドの措置は嫌がらせだ」として、逆に凍結破棄を求めてインドの裁判所に訴えを起こすという事態に発展した。中国官製メディアはインド側の行為を「強盗」と非難しており、両者の対立は泥沼化している。

◇「業務に大きな打撃を与える」

 中国・インドの境界線で昨年6月に起きた紛争によってインド兵が残忍な方法で殺されて以後、インド国内で対中感情が極度に悪化した。

 インド政府は同月29日、中国の▽TikTok▽中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」▽中国版LINE「微信(WeChat)」▽中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)の「バイドゥ地図」――を含むアプリ200種類以上をインドで使用禁止にした。理由は「インドの主権と統合、インドの防衛、国家の安全と公共秩序を害する」とされた。

 さらにインド当局はバイトダンスをターゲットにして、先月中旬には「脱税疑惑の調査」を名目に、米銀大手シティバンクと英銀大手HSBCにあるバイトダンスの口座のうち2つを凍結した。他のバイトダンス関連の口座についても、資金の引き出しを許可しないよう両銀行に指示したという。

 このインド当局の強硬姿勢に対して、バイトダンス側も態度を硬化させた。今月4日付ロイター通信によると、バイトダンスは「口座凍結は嫌がらせであり、違法だ」「業務に大きな打撃を与えている」として、裁判所に凍結の破棄を求める訴えを起こした。

 同通信が伝えたバイトダンス側の裁判資料(3月25日提出)には、インド当局は具体的な証拠を提示していない▽インド国内法が定める事前通知もない――という状況で「劇的な措置」を取った、と主張している。そのうえで「調査の手続き段階で口座を凍結するというのは不当な抑圧である」と批判し、当局の目的が「嫌がらせである」と訴えた。

 ロイター通信によると、バイトダンスの現地職員は外部委託を含め1335人。口座凍結によって3月分の給与支払いが滞っているという。

◇「経済的に中国を切り離そうとする努力は無駄」

「バイトダンスの口座凍結は強盗だ」。中国共産党系メディアのグローバル・タイムズ(環球時報の英語版)は3月21日、こんな見出しで、専門家へのインタビューに基づく解説記事を掲載した。

 記事は「未確認ではあるが、同様の事件はインドの外国企業にも起きている。インド当局は脱税を口実に単に外国企業から資産を略奪しているということだから、驚くべき出来事ではない」との見解を示したうえ「外国資本を排除する姿勢は、野心的な『デジタル・インディア』(インドが進めるデジタル化政策)の足かせになっている」と指摘した。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、インドの経済はいま、厳しい状況に置かれている。同紙は「新型コロナの影響とインド政府の妨害を受けながらも、2020年には中国はインドにとって最大の貿易相手国となった」と強調し「経済的に中国を切り離そうとする努力はすでに無駄であることが証明されている」という解釈を持ち出して、アプリ禁止措置の撤回を促した。

 中印の経済・貿易協力は本来、相互に利益をもたらすもの――同紙はこう呼びかけながら、中国資本に対する差別的なアプローチの反省▽中国企業への安定・安全な環境提供――をインド側に促している。そのうえで記事は「そうしなければ、中国企業はインドへの投資を真剣に考える必要があるかもしれない」と警告し、対抗措置をちらつかせている。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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