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「新型コロナが武漢ウイルス研究所で作られた科学的証拠を発表する」と鼻息荒い中国出身の亡命女性学者

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
トークショーで語る閻麗夢氏=ITVのウェブサイトより筆者キャプチャー

「新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所(中国湖北省)で作られたという科学的な証拠を発表する予定だ」。香港大学公共衛生学部のウイルス専門家で米国亡命中の閻麗夢(イェン・リーモン)博士がこう宣言し、注目を集めている。昨年末に新型コロナ感染が初確認された直後、世界保健機関(WHO)の専門家とともに極秘調査を進めていた人物だけに、新型コロナの起源をめぐり再び論争が起きそうだ。

◇「起源を知らなければ克服できない」

 閻麗夢氏は11日の英ITVトークショー「ルーズウーマン」のインタビューで、武漢ウイルス研究所で作られたとする説について「中国疾病予防管理センターと現地の医者らから得た機密情報がある。私が持っている科学的証拠もある」と明らかにした。それを発表しようと考えたのは「世界に対し真実を語らなければ自分自身が後悔することになるから」と強調した。

 中国で感染拡大が始まった当時の状況を振り返り、閻麗夢氏は「新型コロナウイルスが『武漢華南海鮮卸売市場で最初に発生した』というのは『スモークスクリーン(煙幕)』にすぎない。新型コロナウイルスは自然発生ではない」と訴えた。

 番組の出演者から「発表しようとしている情報を少しだけ教えてほしい」と言われ、こう語った。

「遺伝子の塩基配列は人間の指紋のように識別が可能だ。このウイルスが中国でどのように発生したのか、だれがウイルスの創造者なのか、という証拠をつかんでいる。(この証拠は)生物学知識がなくても読むことができ、確認できる」

 最後に閻麗夢氏は次のように警告した。

「ウイルスの起源を知ることは大変重要だ。我々はこれを知らなければ(ウイルスを)克服することはできないだろう。このウイルスはすべての人々の生命を脅かすだろう」

 新型コロナウイルスの起源をめぐっては、米国や豪州などが中国に対する国際調査を求めてきた。中国は「武漢ウイルス研究所起源説」を否定し、研究所の核心人物3人へのインタビューを伝えるなどで疑惑払しょくを図っている。(参考資料:中国が渦中の「コウモリ女」と「美人上司」を露出させて新型コロナの疑惑に反論したわけ)

◇中国の自宅には公安当局の家宅捜索も

 閻麗夢氏は中国山東省青島の出身。2013年ごろに香港大に留学して博士号を取得、同大で研究を続けていた。

 今年7月の段階で米メディアの取材を受け、新型コロナウイルス感染拡大に関して「中国はもちろん、WHOも感染初期の段階から『ヒトヒト感染』が起きていることを知っていた」と告発していた。

 米メディアなどによると、閻氏は香港大で研究員をしていた昨年12月、中国当局が「ヒトヒト感染」する「重症急性呼吸器症候群(SARS)に似た肺炎」の発生を隠していることを知った。WHO顧問でもある香港人教授の上司から指示され、同月31日、WHOの専門家とともに極秘に調査を開始。同じ日、中国疾病予防管理センターの友人から「家族全員の感染を確認した。『ヒトヒト感染』が起きている」と知らされた。この情報を伝えると、上司は「中国共産党のレッドラインを踏むな」「(盗聴に)気を付けろ、口に出して言うな」「(この情報を知った)2人とも消されてしまうかもしれない」と懸念を示したという。

 その後、身の危険を感じて香港を脱出し、4月末に米国に亡命したという。

 閻麗夢氏の青島の実家は公安当局の家宅捜索を受け、両親は怯えているという。香港大は7月の段階で「大学として個人の表現の自由は尊重するが、閻麗夢氏の個人的な意見は大学を代表するものではない」「彼女は『ヒトヒト感染』に関する研究などしていない」「科学的な支持もない」と批判している。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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