中国初、イヌ・ネコ「食べてはならぬ」条例――新型コロナ「野生動物規制」に便乗

条例内容を発表する深セン市人民代表大会常務委員会のウェブサイト

 中国広東省深セン市は5月1日から、イヌとネコの肉の販売・消費を禁止すると発表した。野生動物が新型コロナウイルスの感染源だった可能性が指摘されるなか、中国は国家的に野生動物の取引・消費を禁止、深セン市はこれに乗じてイヌ・ネコ肉の消費を禁止するところまで踏み込んだ。中国の都市がイヌ・ネコ肉の販売・消費を禁止するのは初めて。

◇野生動物乱食への危惧

 新型コロナウイルスによる感染は、中国湖北省武漢にある野生動物やその肉を売っていた市場で発生し、ヒトに感染した可能性が高いとされる。

 中国の野生動物保護法は、国が重点的に保護する動物などに限って食用にすることを禁止している。「疫病を伝播する『高リスク種』(コウモリ、ネズミ、カラスなど)を含む多くの野生動物が対象となっていない。『高リスク種』を使った料理を食べることは非常に危険だ」。北京林業大・生態法研究センターの楊朝霞主任は北京商報の取材にこう指摘する。だが、野生動物保護法の包括的改正には一定のプロセスが必要とされた。

 中国で感染拡大防止が重大局面に差し掛かっていたため、共産党指導部は法改正前に迅速な措置が必要と判断。全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会を2月24日に開き、感染の温床となる野生動物を食べる習慣の根絶や、全面的な野生動物の取引禁止を緊急に決めた。

 ただ、中国社会では野生動物を食用・医療目的に利用する習慣が深く根付いている。中国の野生動物育成産業の就業人口は1400万人を超え、その生産額は5000億元(7.7兆円相当)を上回る巨大な利益を生む仕組みができあがっている。業者が抜け道を見つけて流通を続ける可能性もあり、全人代決定が有効に機能するか確証はない。

◇「人間と非常に近い関係」

 この全人代決定を受け、深セン市人民代表大会常務委員会は3月31日、野生動物を食用肉化するのを全面的に禁止する条例を採択した。野生動物を違法に消費した者には、野生動物の価値の30倍の罰金が科せられることとなった。

 この中で注目されたのが、イヌやネコもその範囲に加えたこと。深セン市は声明で「イヌとネコは他の動物と比べても、人間と非常に近い関係を築いてきた」「先進国や香港、台湾ではイヌやネコ、その他のペット動物の食用消費を禁止するのは当たり前だ」と指摘した。

 米国動物擁護団体「ヒューメイン・ソサイエティー・ インターナショナル」(HSI)は、中国では年間1000万頭のイヌと400万頭のネコが食肉のために殺されていると主張する。HSIの中国政策専門家は「この残虐な取引を終わらせる努力をしてきた者にとって、深セン市の決定は感動ものだ」と評価している。

 条例で食用にしてよいとされる動物には、ブタ、ウシ、ヒツジ、ロバ、ウサギ、チキン、アヒル、ガチョウ、ハト、ウズラ、および他の法律・規制で禁止されていない水生動物が含まれる。

◇クマの胆汁は「推奨」

 一方、AFP通信によると、中国・国家衛生健康委員会は3月、新型コロナウイルスの重症患者の治療用として、クマの胆汁の粉末やヤギの角などが含まれる「痰熱清」の注射液の使用を推奨する指針を発表した。

 クマの胆汁は、生け捕りにしたクマから直接採取するもので、古くから漢方薬として使われてきた。採取の際、クマに苦痛を与えるとされる。クマの胆汁に含まれるウルソデオキシコール酸は、胆石の分解や肝臓病治療に用いられる。

 ただ新型コロナウイルスに効果があるかは立証されていないという。動物愛護活動家らは、新型コロナウイルス発生と野生動物取引・消費が問題視されているなかにあって、動物由来成分を含む治療薬を認可するのは「悲劇的で皮肉だ」と指摘している。