抗PD-1抗体療法の効果を高める 1、がん組織にとどまるサイトカインの開発

(写真:ロイター/アフロ)

本庶先生達により開発された抗PD-1抗体によるチェックポイント治療は、ガンに対する免疫にブレーキがかかるのを阻害する治療で、対象になるガンの範囲は着実に拡大してきているとはいえ、ガンに対する免疫の弱い人には効果がない。

この治療をもっと多くのガンに使えるようにするには、ガンに対して確実に免疫を成立させることがカギになる。このための戦略の一つが、ガン細胞と、免疫細胞が反応し合っているガン組織での免疫反応を高める様々な治療法の開発で、様々な方法が試されている。このような研究の中から、最近気になった3研究をとりあげ、この分野の現状を紹介する。

初回の今日は、ガン組織での免疫を高めるためにこれまでも用いられてきた、T細胞活性化サイトカインを改良する研究だ。

繰り返すが、ガン免疫療法の根幹は、がん細胞に特的な免疫反応を誘導することだ。この最初の引き金が引かれるのが、ガンが増殖している組織で、がん細胞が発現しているガン抗原がT細胞を刺激することで始まる。この時、組織内で様々なサイトカインと呼ばれる免疫細胞活性化因子が分泌される。IL-2もその一つで、T 細胞を活性化する重要なサイトカインで、これまでもガン局所に注入する治療が試みられてきたが、はかばかしい結果は得られていない。

理由の一つとして考えられるのが、局所に注入したサイトカインが循環系により除去され、T細胞を十分活性化できる局所濃度が維持できない可能性だ。また、IL-12のようにさらに強い免疫活性化サイトカインは、全身に回ると強い副作用を引き起こす。これらの問題を解決すべく、マサチューセッツ工科大学のグループはIL-2やIL-12がコラーゲンと結合して組織内に長く留まるようにし、その効果を確かめた論文を発表した(Momin et al, Anchoring of intratumorally administered cytokines to collagen safely potentiates systemic cancer immunotherapy, (ガンの中のコラーゲンに結合するサイトカインは全身の免疫治療の効果を高める),Science Translational Medicine 11, eeaw2614: DOI: 10.1126/scitranslmed.aaw2614 )。

この研究では、IL-2やIL-12を、ガン組織に多く存在するコラーゲンIやIVに結合するLumican分子と融合させ、ガン局所に長く留まるよう改変した。蛍光ラベルしたアルブミンとの融合タンパク質を腫瘍内に投与して腫瘍組織からの消失を調べると、Lumicanとの融合タンパクは、アルブミンだけを注射した場合と比べ、はるかに長く腫瘍にとどまることを確認できる。

あとは期待通りガン免疫を高めることができるかどうか確かめるだけになる。

まず、様々なガンで実際に利用されているガンに対する抗体を投与する治療法(例えばリンパ腫に対するリツキサン治療)との相性をメラノーマでたしかめると、抗体だけではほとんど効果がない場合も、Lumican-IL2を組み合わせると、ほとんどのマウスの腫瘍を抑制できることを明らかにしている。

さらに全身投与すると副作用の強いIL-12も、Lumicanと結合させると局所にとどまって副作用が軽減されることも示している。

この結果を受けて、Lumicanと結合させたIL-2とIL-12を抗PD-1抗体と組み合わせる実験を、やはりメラノーマをモデルに行なっている。

もともと抗原性の低いメラノーマモデルを用いているので、抗PD-1抗体ではほとんど効果がないが、Lumican-IL2およびLumican-IL12を組み合わせて局所投与すると、腫瘍を消失させられる。

同じように、マウスに発ガン遺伝子を導入して発症させる自然発生メラノーマでも、Lumican-IL12, Lumican-IL2, ガンに対する抗体、そしてPD-1抗体を全て組み合わせると、完璧に腫瘍を消失させられる。

以上が結果で、サイトカインをLumicanと結合させガン局所へ長く留まるようにする、比較的簡単な改変だが、抗PD-1チェックポイント治療をもっと多くの患者へ拡大できると期待できる。