ハンドスピナーが原因の事故の報告

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

たまたま目に止まったこの論文を読むまで全く知らなかったが、米国では2017年からFigdget spinner(日本ではハンドスピナーとか図にあるようにフィンガースピナーと呼ばれているようだ)が児童を中心に広まっているようだ。ハンドスピナー自体はあまり問題にはならないが、光を発するタイプにはボタン電池が使われており、これが深刻な事故を起こす可能性がある。

すでに小児外科学会のHPに警告されているように(http://www.jsps.gr.jp/general/attension/litium-battery)、ボタン電池は食道や胃粘膜に対して強い毒性を持つことから、児童の目につかないように管理することが求められている。

この警告の背景には、おそらく2015年Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutritionに報告された小児の誤嚥に関する治療ガイドラインがあると思う(Kramer et al, Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition 60:562, 2015)。

この報告によると2000年以前もボタン電池の誤嚥は米国で約2000例報告されているが、重症例は2例に止まっていた。ところが2000年以降に報告された8600例の誤嚥の症例のうち、73例が重症の消化器障害を示し、そのうち13例が死亡している。すなわち、リチウム型のボタン電池の普及が誤嚥事故の深刻化に寄与していることになる。

小児外科学会の警告にあるように、リチウム型ボタン電池の危険性は広く認識されているが、ハンドスピナーの普及は新たな問題になり始めており、今日紹介するニューヨークのSteven and Alexander Cohen Children's Medical Centerからの2例の症例報告はこれを裏付けている(Kahlaf et al, Button Battery Powered Fidget Spinner: A potentially deadly new ingestion hazard for children(ボタン電池を使うハンドスピナー:死亡の危険性のある新しい小児の誤嚥事故の危険)Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition, in press, 2018:DOI: 10.1097/MPG.0000000000001892)。

症例報告の内容

1例目:4歳女児。ハンドスピナーをしゃぶっていて、誤って外れた電池を飲み込んでいる。最初無症状だったが、X線で電池が検出されたため、3時間後救急搬送され、ERで電池を吐き出すことができた。その後、痛みのため食事を摂らなくなり、内視鏡で食道に2箇所大きな潰瘍が認められた。幸い、その後回復して5日目に退院できた。

2例目:3歳男児。原因不明の胸痛、咳、吐き気で病院を訪れる。病院で初めてボタン電池を誤嚥していることが確認され、誤嚥後7時間目に内視鏡によりボタン電池を摘出。父親が、壊れたハンドスピナーを発見し、これが原因と特定される。ボタン電池が引っかかっていた食道に2-3cmの潰瘍が認められ、全体に炎症が起こっていた。食道を保護するBlakemoreチューブを設置を含む治療が行われ、20日目に退院することができた。

この例からわかるように、子供だけが遊んでいた場合、ハンドスピナー内の電池を誤嚥したことがすぐに分からない可能性がある。また、噛むだけで電池が外れる構造を持つハンドスピナーがあることも認識しなければならない。

医師の立場から見ると、電池の誤嚥であることがわかっても、ハンドスピナーが原因と即座に特定するのは難しい。幼児のいる家庭では、是非ハンドスピナーに潜む危険性を正しく理解することが必要だと思う。また、電池が簡単に外れない構造に設計し直すよう指導することが重要だと思う。