遺伝子組み換え食物の意外な問題

除草剤グリホサート(商品名ラウンドアップ)(写真:ロイター/アフロ)

個人的には、遺伝子組み換え食物(GMO)を食べても、組み替えで導入した遺伝子が直接体に悪さをすると思ったことはない。また乾燥に強い食物を作成して砂漠で農業を行えるようにしたり、病気に強い作物を作ることが悪いと思ったことはなかった。もちろん、問題を感じる人がいてもいい。できるだけGMO使用の有無を正確に表示し、消費者が正しい選択を出来るようにすればいいと思っている。あえてGMOの問題を挙げるなら、自然変異をベースに続いてきたダーウィン進化が人間によって中断してしまったという点だろう。

ところがそんな私も、GMOによって農業の方法が変化することで、人間に思わぬ影響が及んでいるとは気がつかなかった。すなわち、除草剤に耐性遺伝子を組み込んだGMOが、除草剤の使用を増やすという問題だ。

今日紹介するカリフォルニア大学サンディエゴ校からの論文はGMO開発後急速に使用が拡大した除草剤がカリフォルニアのホワイトカラーに蓄積し続けていることを明らかにした研究で10月24日号の米国医師会雑誌に掲載された(Mills et al, Excretion of herbicide Glyphosate in older adults between 1993 and 2016(1993年から2016年の間の高齢者でのグリホサートの分泌), JAMA, 318:1610, 2017)。

グリホサートは米国の農業コンツエェルン・モンサント社により開発された最も成功した除草剤だ。特に、遺伝子組み換えによりグリホサート耐性食物が開発されてから、その使用量は増加している。これまで食品衛生上ほとんど毒性がないとされてきたが、2015年アメリカ及びヨーロッパで農業とは無関係の一般市民にグリホサートが蓄積していることが明らかになってから、毒性再検討の必要性が指摘されている。実際、カリフォルニア州では発ガンを誘導する可能性がある薬剤として指定された。

この研究では、カリフォルニアのランチョ・ベルナルドに住む、ほぼ全員が大学卒のホワイトカラーを対象に1972年から追跡が続けられているコホート集団の中から、1993-1996年の第1回調査から、2014-2016年の第5回調査まで、尿サンプルが得られた100人の、尿中のグリホサートとその代謝物AMPAの量を検査している。

結果だが、両化合物ともこの50年で尿中の量は増え続け、例えばグリホサートでは最初の1993年からの検査では平均0.024μg/Lだったのが、2014-2016年の調査ではなんと10倍を超え、平均0.314μg/Lに増加している。分解産物のAMPAに至っては、0.008μg/Lから0.28μg/Lと40倍近くに増加している。また、尿中にこれら化合物が検出された人の数も最初の10%程度から、70%に増加している。

すなわち、カリフォルニア州に限った調査とはいえ、20年間に除草剤の蓄積が私たちの体で進んでいることを示している。このことは、GMO自体の普及より問題が深刻だと思う。最初健康に安全とされてきたグリホサートも脂肪肝からNASHを引き起こす可能性が示されている。したがって、健康被害について大規模な調査が必要になる。幸いこの研究により蓄積の有無を調べる可能性が示され、ある程度暴露の続いた個人と、そうでない個人を分けて、暴露による健康被害を調べる目処がついたのではと思う。すでに蓄積が起こった世代はともかく、次世代に同じ問題を残さないことが重要だ。

そして何よりもGMOの場合、薬剤耐性を組み込んで農薬を使いやすくして生産性を上げることを目的にした開発には監視が必要だと思う。

それにしても、必要に応じてすぐ20年以上にわたる結果を提出できるコホート研究が住民とともに維持されていることには敬意を表したい。