Autism Speaks 特別レポート(自閉症の健康)紹介 II

Autism Speaks主催の自閉症支援の会で話すポールサイモン(写真:ロイター/アフロ)

Autism Speaksの「自閉症と健康」についての特別レポート紹介の第2日目。

III 自閉症と睡眠障害

最近の論文によると、自閉症の人たちの半数が、寝つきが悪い、なんども目がさめる、朝起きるのが極端に早いなどの睡眠障害を持っている。これに昼間の行動障害が加わり、学習を妨げ生活の質の低下を招く。

睡眠障害の子供を持つ親も、徘徊して事故が起きるのではと心配で眠れなくなり、強いストレスにさらされている。実際、4歳を超えると徘徊による事故は命に関わる。

自閉症に伴う睡眠障害は病気として捉える必要がある。

例えば自閉症の場合、概日周期(夜と昼のリズム)に関わる遺伝子の変異する確率が2倍高い。   

就寝中に起こるてんかん発作で睡眠が妨げられている場合があること、自閉症の人の11-40%が様々な不安障害を抱えていること、も知られており、これが睡眠障害の原因になることを念頭におく必要がある。

自閉症児の脳波を調べる睡眠の研究も行われており、自閉症の場合動眼神経が活動するREM睡眠の比率が少ないことがわかっている。このレポートではREM睡眠をそのまま夢を見ることと関連させているが、最近の研究ではREM=夢という通説は間違っていることがわかっており、頭頂後頭皮質のような夢中枢の活動を調べる研究が今後必要になると思う。

他にも、メラトニンの分泌が少ないなど研究は着実に行われている。もしこの結果が正しい場合、メラトニンの投与は治療のための選択肢になる。

現在睡眠障害の治療として期待されているのが、バンダービルト大学で開発された、自閉症児を持つ親に向けた教育プログラムで、ワークショップでは、日中の運動とアウトドアでの活動の重要性を説き、子供が決まった時間に就寝し、途中で起きてもすぐに寝るための様々な方法を教えている。ワークショップ参加者の声から判断すると、このプログラムは効果があるようで、同時に両親もストレスから解放されることができたと述べている。

IV 自閉症と摂食障害

最近の総説論文によると実に70%の自閉症スペクトラムの子供に何らかの摂食障害が見られ、36%は重い摂食障害と診断される。

限られた食物や、特定の色や口当たりの食べ物しか口にしなかったり、食事を中断するなどが症状として見られる。ただ、全てが精神的な症状ではなく、例えば運動障害によって咀嚼や嚥下機能が低下していたり、胃から腸への排出が遅れたりする場合もあるので、専門家の診断を仰ぐ必要がある。

以上は摂食障害(feeding disorder)だが、食欲や食行動の異常(eating disorder)、すなわち食べなかったり食べ過ぎたりする行動異常もしばしば認められる。

慢性的な過食症は、子供だけでなく、成人後も続く。おそらく、満腹感が欠如することが要因になっている。

自閉症児は食物の匂いや口当たりに感受性が高く、その結果、市販の高カロリー食品を偏食することになる。この場合、肥満になるだけでなく、栄養素によっては不足する。

一方、自閉症治療に認可されているリスペリドンも食欲増強作用があるので注意する必要がある。

異食症

食べ物とは言えない様々なもの、例えば釘、ガラス片、時には壁から禿げた塗料や消毒材など、を口に入れる異食症は、知的障害を持つ自閉症児にとっては命に関わる重大な事故につながり、最も注意の必要な症状といえる。

ただ、行動治療を受けて効果が上がると、異食症も改善することが知られている。

最近アトランタの自閉症センターから、異食症を改善するプログラムが発表されている。このプログラムでは、セラピストが自閉症児に、危険性のある様々なものを示し、褒美を使って子供が危険物を口にするのを避ける訓練、興味を違う対象に向けさる訓練、間違ったものを食べるのを止める気持ちを持つ訓練、などのセッションを繰り返す。必要な場合、なんと87セッションが行われる。現在短期効果については確認されているが、長期効果がわかるためには今後の追跡調査が必要。

摂食障害対策

摂食障害に対しては家庭で対応しきれないことが多い。このレポートでは、医師、栄養士、介護士からなるチームによる、食生活の診断、それに基づく治療プログラム作成、そして児童に対する個別指導などの必要性が強調されている。

特に、

1) 野菜、果物、タンパク質など、特定の食品を完全に避ける、

2) 特定のブランド、あるいは特定の形や色の食品しか食べない、

3) 食べさせようとすると、口を閉ざしたり、嘔吐したり、食事を中断する。

4) 食べ物に興味を示さない。また褒めても反応しない。

5) 専門家により咀嚼などの運動障害があると診断される。

6) 専門家により栄養不足と診断される。

のうち2つ以上が認められるときは、治療が必要。

過食症:

最近の研究によれば、過食は早期から始まり、2-5歳の自閉症児の16%が肥満であることが明らかにされている。これは正常児の10%と比べると明らかに高い。原因か結果かは明らかでないが、過食児の多くは、複数の向精神薬を服用している場合があり、この場合専門家とよく相談して治療方針を決める必要がある。

治療としては、偏食を治し、摂取量を減らし、エクササイズを進めるといった一般的な方法しかない。

冷蔵庫や食べ物の保存場所に鍵をかけるのも対策の一つになる。

自閉症を持つ家族のためのマニュアルも公開されており、この利用も役にたつ(我が国でも同じようなマニュアルが公開されているのか把握できていない)。

問題は、アウトドアでのエクササイズといっても、自閉症児には難しいことが多い点で、これがもとになって、両親のストレスが増えるようでは元も子もない。行動異常や知的障害のある子供達にも利用出来るメニューの開発が望まれる。

最終回の明日は精神的な問題について紹介する。