妊娠中のオメガ3脂肪酸摂取は子供の喘息を減らす

(写真:アフロ)

ウェルクを始めとするキュレーションサイトが問題になったが、最も深刻な問題は、信頼性の検証がされていない情報が混じっていることだ。この問題はキュレーションサイトに限ったことではない。書籍からコマーシャルまで信頼性について検証されていない情報があふれている。

結局これに対しては、厳格な審査を経た論文に掲載されたデータのみ信頼できるとして紹介する以外に方法はないと私は思っている。もちろん、研究論文ですら再現性、捏造など多くの問題を抱えている。それでも今の所、結果の信頼性を保証できるのは論文審査システムだけだと思っている。したがって、今年もなるべく個人的思いつきや意見を排して、頑なに論文紹介という形式で科学や医学の情報を伝えようと決めている。

さて、健康な子供が生まれ育つため、妊娠中のお母さんが何に気をつければいいのか、これを本当に調べるためにはかなり大規模で長期の調査が必要になるが、生まれた子供の喘息や湿疹などのアレルギー疾患については、果物フルーツジュース野菜脂身の多い魚未精製穀物、などが良い影響があり、マーガリン塩分は悪い影響があることを示す論文が発表されている。例えば、妊娠中の食事が子供の喘息やアトピーに及ぼす影響を調べた、2000人規模のオランダの調査では、週に4個以上のりんごを食べていたお母さんの子供は、医師により診断された喘息の発症率が半分近くに低下し、魚を十分とっていたお母さんの子供は、やはり医師により確認された皮膚湿疹を持つ子供がはっきりと低下することが示されている(Thorax 62:773, 2007)。

今日紹介するコペンハーゲン大学からの論文は、魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸(EPAとDHA)を濃縮した魚油を妊娠24週から毎日飲んでもらって、子供の喘息をおさえる効果があるかどうかを調べた研究で12月29日The New England Journal of Medicineに掲載された(N Engl J Med 375:2530)。タイトルは「Fish oil derived fatty acid in pregnancy and wheeze and asthma in offspring(魚油由来の脂肪酸が生まれた子供の喘鳴や喘息に及ぼす影響)」だ。

研究では736人の妊婦さんをランダムに2群に分け、片方にCRODA社のオメガ脂肪酸魚油(2.4gのEPA+DHA)、もう片方に同量のオリーブ油を妊娠24週から出産後1週まで摂取してもらい、生まれた子供を5年にわたって追跡し、喘鳴症状、あるいは医師により確認された喘息の発症率を調べている。

結果は明確で、喘鳴や喘息の3歳時点での発症率は、オリーブ油群で23.7%、魚油群で16.9%だ。30%の低下を大きいと見るか、それほどでもないと見るか意見は異なるかもしれない。しかし、あらかじめ血中のEPAとDHA濃度が低いことを確認した母親を抽出して調べると、オリーブ油群34.1%に対し魚油群では17.5%と半分に低下する。一方、もともと魚を多く取っていて血中のEPA,DHAが高いお母さんでは、あまりオメガ3脂肪酸摂取の効果はないことも示されている。したがって、メカニズムはよくわからないが(おそらく抑制性T細胞が誘導されやすくなるのだろう:これは私見)、オメガ3脂肪酸を妊娠中期以降に摂取すると、子供の喘息を防ぐ効果があると結論していいだろう。

重要なのは、もともと血中オメガ3脂肪酸が高いお母さんでは、魚油の効果があまりない点だ。おそらく一番いいのは、妊娠中はせっせとお魚を食べることだろう。できれば、妊娠20週ぐらいに食生活をチェックするとともに血中オメガ3脂肪酸を測定し、低いお母さんにはオメガ脂肪酸を飲んでもらうというキメの細かい指導ができれば最高だ。

オメガ3脂肪酸と妊娠で検索すると、妊婦さんにオメガ3脂肪酸を進めるサイトがずらっと並ぶ。しかし、この研究では妊娠初期の胎児発生期はわざわざ避けて、高濃度のオメガ3脂肪酸を妊娠24週から服用させている。最初から飲ませても副作用はないのかもしれない。しかし、どんなに体に良いと思われるものも、効果を期待するなら副作用の可能性についても真剣に考慮するのが医学研究だ。そして、食品やサプリメントも全て医学的な検証を経て初めて効果が確認できる。

我が国では、テレビや新聞にトクホや機能性食品の広告が満ち溢れているが、宣伝費にお金をかけるのではなく、このぐらい長期的視点で製品をテストしていく真面目な会社が優遇される時代がくることを願う。