米国科学界はトランプ嫌い

(写真:ロイター/アフロ)

アメリカ大統領選挙まで後1週間。両候補ともスキャンダルにまみれ、互いに相手を攻撃しあう前代未聞の選挙戦になっています。

この機会をとらえて、米国の科学者がどのような政治的傾向を持っているのか?民主党支持なのか、共和党支持なのか?などについて教えてくれる面白いレポートがNature(vol 538, p290)に掲載されました。

Nature専属レポーター、Sara Reardonさんの記事で、読むと米国科学者の政治的傾向をよく理解することができます。

記事はトランプ支持のKaylee(偽名)さんというカソリック教徒のポスドクが、現在の大学は反トランプ一色で、人前でトランプ支持を口にしようものなら、職を失うかもしれないと語るところから始まっています。大学や研究機関の雰囲気が反トランプを超えて、トランプ支持者のバッシングへとエスカレートし兼ねない状況がよくわかります。

もともとアメリカの大学の教授陣はリベラル派が多く、これにトランプの女性差別や人種差別発言が重なった結果、共和党というより、トランプへの非寛容が顕著に表れているようです。

実は私自身もトランプにいい印象は持てたことはありません。ニュースでトランプの演説姿を見ているだけで、演説内容に関わらず気分が悪くなります。こんな気持ちのせいで、米国の大学の雰囲気が半トランプ一色と聞いても、さもありなんと納得できます。しかしだからといって、他の人間の言論を弾圧する理由にならないでしょう。アカデミアも冷静さを取り戻して欲しいと願っています。

この記事で、私がもっとも注目したのは、大統領選の行方ではなく、米国の科学者がリベラルと保守のどちらを支持しているのかについて分野別に調べた統計です。

統計では各分野の科学者に、リベラルか、中道か、保守か、あるいはさらに左翼か、右翼かを選ばせています。棒グラフ以外に数字が示されていないため、グラフから得る印象だけから判断すると次のようになります。

まずほとんどの分野で大学ではリベラル傾向が圧倒的に強く。天文、社会、生物、地質、物理の各分野では、8割以上が中道より左といえます。

次に、左翼・リベラル支持の強い順に分野を並べると、天文学、社会学、生物学、地質学、物理学、化学、数学、経済学、そして工学と続きます。工学や経済学はもともと実社会とのつながりが深いと思われますが、これがこの分野で保守支持が多い理由だとすると、他の分野は社会と繋がっていないのかと心配になります。

とはいえここに示された各分野の順番を理解するのは難しそうです。例えば生物学の方が数学よりなぜリベラルが多いのか、元生物学者としては是非理由が知りたいところです。さらに、天文学や天文物理はほぼ9割がリベラル支持で、保守支持がほとんどないことや、社会学にはさらに急進的な左翼思想を持った人が3割もいるのも面白いと思います。

我が国の研究者の政治意識をぜひ知りたいところですが、しかしここまで科学者の政治意識が一般と違うと、科学者もなかなか笑って済ませませないように思います。この大きなギャップが何によるか、科学者が知って初めて、社会とのコミュニケーションが成立できるでしょう。

と言っても、もちろん政治信条を一般に近づける必要はありませんが。