I am here, but… ~日本に生きる難民~

認定NPO法人 難民支援協会を訪れた難民認定申請者 /筆者撮影

「世界難民の日」

 2018年6月20日。世界難民の日。フランス・パリのレピュブリック広場で、難民支援にちなんだイベントが開かれていた。昨年、フランスが受け入れた難民の数はおよそ2万人。多様な人々が、お互いの故郷を思い、そしてフランスという国で生きていくことを確かめ合っていた。

 現在、世界中で難民となる人が増えている。その数は、昨年の統計では世界で6,850万人を超えると言われている。紛争や迫害によって、新たな危機の頻発や人道問題が長期化し、故郷を追われた人々だ。例えば紛争が長引くシリアでは、国民の25%である500万人以上が国外に逃れている。そして日本における難民の申請者も、01年の300人から、17年には約2万人に急増している。しかし昨年、認定をされたのはその0.1%、20人にすぎない。先進諸国の中でも飛び抜けて低い割合だ。

日本における難民審査

 なぜ、この国では難民の受け入れが進まないのだろうか。東京・神田にある認定NPO法人「難民支援協会」(JRA)は、1991年から日本に逃れて来た難民の支援や国への政策提言を行なっている。広報担当の野津美由紀さんは、大きく次の二点に、日本の難民審査の問題があるのではないかと指摘する。

1、制度上の問題

 難民審査は現在、法務局の入国管理局が担当している。この部署は、例えば麻薬の密売や犯罪者が入国しないようにと、犯罪を水際で防ぐ重要な役割を担っている。しかし犯罪行為を監視することと、迫害から逃れて祖国から日本にたどり着いた人を審査することは、性格の異なる専門性が求められるのは自明である。欧州では導入されている、移民省のような難民審査に特化した部署の設立が早急に必要なのではないだろうか。

2、審査の厳格化

 例えば内戦が続くシリアでは、アサド政権への反政府デモに参加することは危険な行為だと認識されており、欧州ではその事実だけで難民として認定をされるケースが少なくない。しかし日本では、反政府デモに参加していたことを証明する書類の提出(デモの中心人物として政府からマークをされているといった具体的な新聞記事など)を求められ、しかも全ての書類を日本語で用意をしないといけない。祖国から逃れてきた人に対し、現地の書類を用意することを求めるという、審査基準の厳格化が問題視されている。

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東日本入国管理センター

 茨城県牛久市にある「東日本入国管理センター」 ここには、難民申請者を含む多くの外国人が収容されている。定員は700名。入国管理局は、収容命令を受けたり、本国への送還措置が決まった外国人を収容所に入れ監視下に置く。厳重な警備が敷かれた施設内では、自殺を含む死亡事故、自傷事件、あるいは拘禁状態が長期間続くことによる精神疾患の発生が後を絶たない。

 前述の難民支援協会によれば、10年以降国内の入国管理施設で死亡した被収容者は、少なくとも8人に上るという。今年4月にも、施設内にてインド人の男性が自殺をする事件があった。施設から出るための仮放免申請も不許可となり、絶望ゆえの行動だったと言われている。

 「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子さんは、収容者との面会行動を通して、長期収容の問題に20年来取り組んでいる。犯罪者ではない難民たちが、いわば人権を奪われ、出口の見えない無期限の収容を繰り返されている現実に、憤りを隠さない。「2年3年の長期収容者は、16年には年間30~40人程度であったのが、現在は150人にも上る。今年6月段階の被収容者数340人前後の中で、およそ半数の方々が長期収容というのは、あまりにも異常なことだと言わざるを得ない」

 田中さんは市内で飲食店を営む傍ら、週に数回、これからも面会行動を続けていく覚悟だ。「収容されている人の中には、難民申請や仮放免申請が不認可となり続け、家族と引き離された人が数多くいます。日本で普通の生活をし、ただ生きていきたいだけなのに、何故このような仕打ちを受けないといけないのか。一刻も早く、家族の元に収容者を戻してあげてほしい」

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日本に生きる難民

 東京の高田馬場にあるビルマ・ミャンマーレストラン「ルビー」 このお店は、日本で難民認定をされた男性が、02年にオープンをした人気店だ。

 店主のチョー・チョー・ソーさんが日本に来たのは91年の時。学生時代に88年のビルマ民主化運動に参加。軍部によってデモが弾圧され、身の危険を感じたチョーさんはタイを経由して、日本に逃れてきた。翻訳など様々な仕事で生計を立て、96年に日本政府に難民認定を申請し、運良く2年後に受理された。そして本国から家族を呼び寄せ、いまも日本で暮らしている。

 チョーさんは、いまも日本における難民保護が進まない現状を危惧しながらも、希望を込めて思いを語ってくれた。「難民申請者は、戦争や政治の問題、あるいは宗教的な問題など色々なバックグラウンドはあるけれども、共通しているのは、自分の国で暮らす事が出来ず、日本に逃れているということ。その人たちを排除するのではなく、どう一緒に暮らしていくかという思考に転換させる必要があると感じます。特に若い人たちには、自分たちがあと20年したら国や社会のリーダーになるのだという意識を持って、自分の考え方や見方をオープンに、まずは理解をするということをしてほしい。日本の将来のことを、そして将来的な政策を、いまから考える練習をしてほしいですね」

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難民アシスタント育成講座

 今年7月、東京にて難民支援協会が主催する「難民アシスタント育成講座」が二日間に渡って開催された。参加者の中には学生の姿も多く、みな自らの問題意識を持って情報を吸収しようという姿が頼もしく映った。

 国連の定める難民条約に加入している国(日本も含まれる)が難民を受け入れる場合、難民の出身国に代わってその人権を回復し、守ることが義務付けられている。その場合、難民を保護する責務は主として条約に加入している各国政府にあると考えられている。国側も先月24日、法務大臣の閣議後記者会見で「『入国管理庁』のような外局を設けることも含め、組織体制・人員確保について速やかに検討を進める」と述べ、来年4月に向けて改編を目指す意向を示している。

 日本では残念ながら、難民支援について世間一般の声が後押しをし、大きく政策を動かす所までは至っていない。しかし難民支援協会を始め、民間の取り組みをサポートしていくこと、そしてこれからの共生社会に向けて、私たち市民、一人ひとりが意識を持ち、難民保護の世論を形成していくこと、更には私たちの声を代弁し実行してくれる政治家を選んでいくこと……それが、これからの未来を担う世代に課せられた使命であると強く感じるのは、私だけであろうか。

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【この記事は、Yahoo!ニュース個人の動画企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】

【映像記事/2018年10月2日 修正】