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エアコンつけっぱなしで寝たから朝だるい…どう防ぐ 熱帯夜でも快眠する方法

西多昌規早稲田大学教授 / 精神科専門医 / 睡眠医療総合専門医
shutterstockより

 今年の夏は、全国的に気温が上昇し、猛暑になるという。熱帯夜が続くことは確実で、夜の睡眠のためにも、エアコンを使いこなすことは例年以上に重要となってくる。既にご存じのことも多いかもしれないが、エアコンと睡眠とのつき合い方を簡潔にまとめてみた。

基本的にはつけっぱなし

 気温が28度を超えると、夜間でも熱中症のリスクが高まる。基本的には、タイマーは使わないで、朝までエアコンはつけっぱなしがいい。ほとんどのエアコンには、睡眠に適した温度・風量に調節する「おやすみ」モードがついている。「おやすみ」モードをオンにして、朝まで切らずにつけておくことをおすすめする。

 エアコンをつける時間が長くなることで、空気清浄の役割も果たすことになる。エアコンでからだがだるくなる人は、後述するようにタイマーをかけてもよいが、3時ごろなど夜明けに近いほうがよい。

睡眠は最初の3時間がゴールデンタイム

 「ぐっすり眠る」にあたる「深いノンレム睡眠」は、睡眠前半に現れる。入眠開始から3〜4時間が、睡眠の勝負時、ゴールデンタイムである。この大切な時間帯で中途半端に目覚めてしまうのは、次に日のパフォーマンスを落とすのは間違いない。

 寝つきのときだけエアコンを効かそうと、1時間程度でオフになるようタイマーを設定する人がいるが、結局暑くて目覚めてエアコンをオンにするなどしてしまい、睡眠のゴールデンタイムをむざむざ壊してしまう。タイマーをつけるならば、3時頃など夜明けに近い時間帯で切れるように設定したい。

湿度も大切な調節因子

 温度ばかりに関心が向いてしまうが、湿度も温度と同じくらい重要だ。体温は汗をかいて水分を蒸発させることで調節されるので、蒸発しづらくなる多湿環境は、睡眠の質を悪くし、場合によっては高い気温でなくとも、熱中症を引き起こすことがある。

 また湿度の高い環境は、特に気管支喘息や慢性肺疾患の持病を持つ人は注意すべきで、布団やマットレス、マットレスの下のスプリングなどにカビが繁殖すれば、この上ない有害なアレルゲンだ。

 アメリカの環境保護庁(Environmental Protection Agency, EPA)は、30〜50%の湿度を推奨しており、少なくとも60%以上の湿度は避けるよう警告している。

実は、エアコンの冷房は、除湿機能をも持ち合わせている。空気中に含まれる水分は、温度が下がると空気中にはいられなくなる。冷えたジュースやお茶が入ったグラスを室温に置くと、グラスに水滴がびっしりつくが、この水分は、冷たいグラスにふれて空気の温度が下がったために、空気中にいられなくなった水分である。

 この点からも、猛暑の夜は、除湿よりも「おやすみ」モードの冷房で寝るのがベターである。

高反発マットレスに利あり

 ヒンヤリする冷感寝具を組み合わせると、主観的な快適度は増すが、熱帯夜に対しては限界もあるので、エアコンと併用するのが望ましい。マットレスについては、体温を逃がすという点では、高反発マットレスに利がある。

 高反発というとバネがあって弾むというイメージだが、そうではない。素材自体を見ると、弾力性の強い特殊な繊維が粗く編み込まれており、隙間が非常に多い。高反発マットレスは弾むだけでなく、体温の発散に優れている作りになっている。

エアコンで身体がだるくなってしまう人は

 エアコンをつけて身体がだるくなってしまうのは、体温が下がりすぎてしまうからである(過去の記事「エアコンをつけて寝ると朝だるい」を防ぐには? 熱帯夜の上手な乗り切り方」も参照)。おそらく、末梢循環の良くない冷え性、ないしは筋肉量(筋肉は、基礎代謝によって熱を産生する)の少ない人に多く見られる現象と考えられる。

エアコンによるからだのだるさに悩んでいる人は、シャツ、パンツなど半袖よりも、長袖・長ズボンのパジャマを着て、その服装でちょうどよい温度に設定したほうがいい。腹巻き、レッグウォーマーも、試す価値のあるグッズである。

 したがって、室温設定は半袖シャツで寝ているより、やや低くなるかもしれない。エアコンでのだるさが強い人は、一晩つけっぱなしにこだわらず、前述したように3時頃など夜明けに近い時間帯に切れるよう、タイマーを設定しよう。

パートナー、子どもといっしょに寝ている人は

 年齢、性別によって、適した睡眠環境は違ってくる。男性よりも、女性の方がエアコンによる冷え=だるさを感じる人は多いと考えられる。逆に子どもは暑がりであり、寝相が悪くなり親の睡眠を阻害してしまう。

 おそらくだるさや冷えを感じることが多いお母さんは、パジャマを長袖にする、寝具の厚さを変えて調節することをおすすめする。逆に蒸し暑い場合は、冷感寝具を試してみよう。吸湿・伸縮性に優れたスポーツ用のシャツは、蒸し暑い場合の寝衣としては優れていると考えられる。

「夏ごもり」の運動不足に注意

 猛暑の時期は、ともすれば冬よりも運動不足になりがちである。夏の運動不足は、寝苦しさをより強めている可能性がある。朝や夕方、夜など涼しい時間帯に、ジョギングやウォーキングを行うのもよい。雨が降りそうなときや台風前の高湿度状態など、天候が優れないときは無理をする必要はないだろう。

運動の時間がなかなか取れない人は、階段を使う、少し遠回りをするなど、日常生活の中で運動量を増やすように努めよう。屋内でいいので、暑い夏だからこそ、エアコンの効いた部屋に座りっぱなしの「夏ごもり」は避けて、体を動かす時間帯を作りたい。

温湿度計で記録して最適化を

睡眠は、個人差がかなりある。人によって暑いと感じる気温も、他人にとってはちょうどよいという場合もある。進歩が著しい「おやすみ」モードなどの機能も、もしかしたら今ひとつという人もいるかもしれない。

 自分に合った睡眠環境を知るのも、大切なことだと思う。温度はエアコン設定などでわかりやすいが、自分の寝室の湿度がどれくらいかを把握している人は、ほとんどいないのではないだろうか。

 わたしの研究室でも用いているが、温度も湿度も測れる温湿度計で、自分の寝室の温度や湿度を、実際に測ってみてはいかがだろうか。デジタル温湿度計は機能にもよるが、1000〜3000円程度であり、家庭用では安いもので十分である。この数値をもとに、自分の主観的感覚を交えて、自分にとっての睡眠環境の最適化を図ってみることをおすすめする。おそらくエアコンをつけなければ、日本の場合は、温度ももちろんだが湿度が危険な数値になるのではないだろうか。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

早稲田大学教授 / 精神科専門医 / 睡眠医療総合専門医

早稲田大学スポーツ科学学術院・教授 早稲田大学睡眠研究所・所長。東京医科歯科大学医学部卒業。自治医科大学講師、ハーバード大学、スタンフォード大学の客員講師などを経て、現職。日本精神神経学会精神科専門医、日本睡眠学会総合専門医など。専門は睡眠、アスリートのメンタルケア、睡眠サポート。睡眠障害、発達障害の治療も行う。著書に、「休む技術2」(大和書房)、「眠っている間に人の体で何が起こっているのか」(草思社)など。

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精神科医の西多昌規(にしだ まさき)です。メディアなどで話題となっている、あるいは世間の関心を集めている事件や出来事を、精神医学やメンタルヘルスから読み解き、独自の視点をもとに考察していきます。医療・健康問題だけでなく、政治経済や社会文化、芸能スポーツなども、取り上げていきます。*個人的な診察希望や医療相談は、受け付けておりません。

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