女性より先に猿が輝く国 日本

写真; Igor Zhukov

数年前に娘が生まれた。家族が住む京都で初宮参り。ここでは参拝の際に誕生子の額に一字を書く習慣がある。男の子なら「大」と書き、女の子なら「小」と書くのである。いくら長年の文化とはいい、なぜ女性が「小」と決まっているのか、腑に落ちなかった妻が京都でのお参りを断念し、別の県を選んだ。

写真;L'oeil trange
写真;L'oeil trange

日本は、男女の差がいろんなところに見られる。結婚の際、友人からもらった夫婦茶碗も大小の対。我が家では結局、妻が「大」でご飯を食べ、私は「小」を使っている。おかずがなくても白米さえあればと言うほどお米が大好きな妻だけにお碗の使い方は正しいと私自身ももちろん納得している。

無意識な部分も含め男女を分ける習慣がこの国に多く存在する。幼稚園のPTA会長までは女性だが、小学校以降はほぼ決まって男性が会長になる。その中で思い込みも少なくない。最近ではないが、建設仕事関係者の口から「女が立って小便出来ないくせに」と女性蔑視した言葉を聴いたことがある。「出来ないのだ」ということが思い込みであるということを意外な場所で知った。

小樽だった。かつて鰊(にしん)漁で栄えたこの町の高台にいまでも残っている当時に建てられたいわゆる鰊御殿である、旧青山家別邸を訪問した時だった。私は、口にこそしていなものの女性は立ち小便が出来ないと思っていたことが、大きな思い込みに過ぎなかったことが分かった。ここの住人である青山政恵のトイレは立ち小便器である。男性と一つ違いがあるとするならば、用を足すときの向きが逆になるぐらいである。日本では明治時代になっても学校のトイレも含め女性の立ち小便が普通だったようである。

日本女性の輝きを政治の人気取りに使われている事も、ないよりは有難いが、いまだに社会の細部まで張り巡らせた女性に対する思い込み、偏見、決め付け、過信、無関心の壁は厚い。

写真 Anton Novoselov
写真 Anton Novoselov

近代化して世界で初めての女性国家首脳が誕生したのは1960年であるから、それから実に55年が経とうとしている。ヨーロッパだけではなく、アジアでも国家首脳が当たり前のように活躍しており、筆者の母国のスリランカではすでに2人も誕生している。「脱亜入欧」を目指した日本だが、女性輝きに関してもとっくに「脱欧入亜」の時代が来ている。女性輝きがないのは政治畑だけではない。最近、栃木県の高校を訪問した際の話では、同県全体の60ある高校の中で女性校長はわずか6校で1割、群馬県では女性校長はゼロだという。

他所の国に抜かれていると言ってもなかなか反応が薄い日本。このニュースを聞いたら少しはお尻に火が付くのではないか。それは大分県から舞い込んで来た。高崎山自然動物園からである。1350匹のニホンザルがいるこの動物園のC群(約710匹)に所属する年齢15歳(人間なら40代後半)のメス猿ミルサーはここで初の女性ボスになるのではないかと注目されている。彼女は、上位のオスが定位置とする切り株に陣取ったり、ときにはオスを威嚇したり、上位のオスより先に餌を食べたりと、「オス社会」の仕来たりを覆す振る舞いを続けている。初のメスボスが誕生するのではないか!?目が離せない。

写真;mickyroo
写真;mickyroo

これを聞いたからには、日本の人間社会が、思い込み、偏見、決め付け、過信、無関心に浸っている場合ではない。諸外国だけではなく、このままだと、女性輝きの実現はこの国の猿にも追い越されかねない。「女性が輝く」を猿に先越されては、人間は猿から進化したとはとても言えなくなる。これは日本の現状を見てられないという猿からの強烈のメッセージなのではないか。このニュースを機に、女性が輝く社会の実現に日本全体がいい加減に焦りを感じ、拍車をかけて行くことを期待したい。