松坂桃李が殺人犯を演じる映画『不能犯』が好調。前日譚となるdTV配信のオリジナルドラマも見応えあり。

(C)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会2017(C)dTV

 2月1日(木)。松坂桃李が主演を務める映画『不能犯』が公開された。

(C)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会  (C)2017 dTV
(C)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会 (C)2017 dTV

 「グランドジャンプ」(集英社)で連載されている青年漫画(原作・宮月新、作画・神崎裕也)を映像化した本作は、思い込みやマインドコントロールを駆使して次々と人を殺していく立証不可能な犯罪をおこなう不能犯・宇相吹正(松坂桃李)を、女刑事・多田友子(沢尻エリカ)が追うというホラーテイストのサスペンス映画だ。

 宇相吹の存在はインターネットで「電話ボックスの男」として都市伝説化しており、とある電話ボックスに殺したい人間の名前と自分の連絡先を書いて貼っておくと、タダで殺してくれると噂されている。しかし、その殺したいという思いが純粋なものでないと依頼した人間にも不幸が訪れるという。

 宇相吹は、神出鬼没な男で怪物的な存在だ。一方で、理不尽な憤りを抱えている人にとっては自分を追い詰める悪党を殺してくれるダークヒーローで『必殺仕事人』(テレビ朝日系)の殺し屋たちのようにも見える。

 依頼人の殺して欲しいという願いは叶うものの、その結末はことごとく理不尽なもので、見ていて何度も重々しい気持ちになった。だが同時に、この救いのない世界観が、だんだん気持ち良くなり、病みつきになってくる。

 監督は白石晃士。人気ホラー映画『リング』の山村貞子と『呪怨』の佐伯伽椰子が共演したことで話題となった映画『貞子vs伽椰子』を手がけた監督だが、インターネットで彼の知名度が高まったのは映像制作会社の社員たちが口裂け女や河童といった怪奇現象を追う姿をフェイクドキュメンタリー形式で描いたオリジナルビデオ『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズだろう。

 当初は知る人ぞ知る怪作だったが、ニコニコ動画のニコニコ生放送で全作が一挙放送されたことをきっかけにして一気に話題となった。

 『コワすぎ』シリーズ以前にも、白石監督は『ノロイ』『オカルト』『カルト』といったフェイクドキュメンタリー形式を用いたホラー映画を多数製作している。これらの作品は入り口こそ実話テイストのリアリズムで物語を進んでいくのだが、途中から物語は逸脱していき、クトゥルー神話的な世界に突入していく。そのため恐怖と同時に笑うしかないコミカルさと、極限状態でも必死に生きようとする人間たちの姿に、すさまじい感動が立ちあがってくる。

 そんな、今までにない斬新な映画を撮り続けてきてカルトな評価を受けてきた白石監督だが、本作は原作モノと言うこともあってかスタンダードな劇映画として撮られている。

 主演俳優も松坂桃李と沢尻エリカという知名度の高い人気俳優を起用しており、映画公開に合わせて松坂桃李がテレビや雑誌に連日出演している。その意味で『貞子vs伽椰子』以上にメジャー感の作品ある作品だが、映画自体はいつもの白石晃士テイストの不気味さが全開で、むしろ作りがオーソドックスだからこそ白石監督の映画の中にある恐さや善と悪の間で葛藤する人間たちの姿が、よりストレートな形で表現されていると思う。

(C)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会  (C)2017 dTV
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予習にオススメなオリジナルドラマ

 

 映画版では代行殺人を繰り返す宇相吹に対して、刑事として彼と向き合おうとする多田友子が対決する物語となっていくのだが、いきなり映画に入るのではなく予習から見たいと言う方にオススメなのが、現在dTVで独占配信中のオリジナルドラマ版『不能犯』だ。

 こちらは映画の前日譚となっており、何らかの理由で宇相吹に殺人依頼をした人間が、予想外の展開を迎える様子を描いたオムニバスドラマで、それぞれ30分弱の作品となっている。(第3話~第4話の「神待ちサイトの悪魔」は前後編となっている)

 白石晃士監督は監修、監督は『ライチ☆光クラブ』などで知られる内藤瑛亮が担当している。見ていて引き込まれるのは、容赦のない残酷描写とアダルトなシーン。特に永尾まりやが出演している第1話「隠したい過去」の描写は壮絶の一言で、ここまでやるのかと彼女の演技に感心した。

 『不能犯』の世界観や殺人をめぐるルールの予習はもちろんのこと、独立した映像作品としても面白いので、可能ならばdTV のオリジナルドラマを先に見ることをオススメしたい。

(C)宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会  (C)2017 dTV
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