国会の議員定数については、よく一票の格差問題と合わせて議論されるが、三権分立という観点からはあまり十分に議論をされていない。議員定数の問題は、国会は何をするところかという機能の問題とかかわる。そこで何回かに分けて、国会の機能とその課題について考えたい。

国のあり方として、わが国では小学校で「三権分立」を教えている。立法、行政、司法が互いにある種の牽制関係に立ちつつ、民主主義を支えていくというものである。しかし、現実にその三権がどのような関係になっているのかが意識される機会は少ないのではないか。

憲法41条は国会について「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」と規定している。前回「未来に対する責任」の中で国の機能は、徴税、予算の執行、法律の制定、金融政策の4つあると書いた。徴税は根拠となる法律が国会で制定されなければならず、予算については国会の議決が必要とされており、日本銀行総裁の選任も国会同意人事となっている。このように制度上は、国会は国権の最高機関としての位置づけがなされている。課題は、国会がその機能を十分に果たしているのかどうかにある。

毎年、多くの法律が制定されたり改正されたりしているが、その発議の殆どは内閣からされている。例えば昨年の通常国会である第183回国会(常会)における内閣提出法案(閣法)の数は75法案あり、そのうち63法案が成立している。一方、議員提出法案は衆議院が49法案、参議院が32法案で合わせて81法案あるものの成立しているのはそれぞれ衆議院で7法案、参議院で3法案となっており10法案に過ぎない状況となっている。このことからすれば、国会は立法機関でありながら、法案を提案する能力が十分ではなく、実質的には行政庁から出されてくる法律案を審議する場になっているとも言える。

法律を制定していく、あるいは改正していくためには、当該法律がなぜ必要なのか、当該改正がなぜ必要なのかという「立法事実」というものが求められる。立法事実の例を挙げよう。例えば、インターネット検索というサービスを提供するためには、ウェブ上に存在しているホームページなどのデータを収集して索引を作り、検索結果の中にホームページなどのデータの一部を表示することが必要であるが、データの収集やデータの表示は著作権法上「複製」や「公衆送信」といわれるものに該当し、2009年改正前の著作権法には特段の定めがなかったために、果たして日本国内でインターネット検索エンジンを作ることができるのかどうか疑義が生じていた。その疑義を解消するという立法事実のため、著作権法を改正して47条の6という条文を追加することにより、日本国内でインターネット検索エンジンを作ることができる法律的な裏付けを与えている。また、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)は、従来、だれかに盗まれたIDやパスワードが実際に使われないと犯罪行為が成立せずに処罰できなかったが、フィッシング対策を進める社会的必要性の高まりによって、IDやパスワードなどを盗もうとするフィッシング行為も処罰対象とできるように改正されたという事例もある。このように、立法事実に基づき、法律の制定や改正が必要であるかを十分に検討してから法律案は作成されている。この観点からみた場合に、個々の国会議員が立法事実を十分に把握したり、分析したりする術が与えられているのかということが課題である。公設の秘書は3名に限られており、かつては政党がもっていたシンクタンクもなくなってしまった現在、個々の議員の調査能力よりも、組織化されており人員も豊富な行政庁のもつ能力の方が、勝っていることは否定できない。法案の審議の過程においても、国会議員の有する調査能力を上げていかなければ、行政庁から提示された立法事実が正しいものであるのかという分析や、条文の内容が適正なものであるのかを検討することが十分にはできない。加えて、国会の審議時間は有限であり、重要法案に時間を割かざるを得ない結果、十分な審議をへることなく通過してしまう法案も皆無とは言えない。かつて、電気用品安全法の改正を巡って旧来の表示をした電気用品の販売が規制されることになることが社会問題化し、立法過程で十分な検討がなされていなかったと指摘されたことがその一例である。

国民からすれば、このような事態は避けて頂かなければならないと言わざるを得ない。

次回につづく。