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2021年東京五輪へエールを送り続ける米ケイティ・レデッキー選手が携わる「STEAM教育」とは何か?

上野直彦AGI Creative Labo株式会社 CEO
次世代教育支援に熱心な米競泳ケイティ・レデッキー選手(提供:Panasonic)

東京五輪を応援するアメリカ競泳選手が取り組む、新しい教育法

2020年3月24日、安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)会長のトーマス・バッハとの間で話し合われ、東京五輪は2021年夏までに開催することで合意。その直後に実施されたIOC理事会で正式に延期が決定した。近代オリンピック史上初となる延期だ。

1年延期の決定でアスリートや関係者の間では大きな動揺が広がり、早々と年齢的な理由から引退を決めた選手もいた。

そんな状況にもかかわらず、来年の東京オリンピック・パラリンピックに、常にポジティブで熱いエールを送り続けている選手がいる。アメリカの競泳ケイティ・レデッキー(Katie Ledecky)選手だ。アメリカ史上最強の女子競泳選手だが、現在23歳なのもあり、来年の東京大会さらには4年後のパリ大会も視野に入っている。

キャリアとしては、自由形選手としてロンドン五輪・リオデジャネイロ五輪に連続出場、合計5個の金メダルをもぎ取っている。水泳そのものは6歳から始め、2012年にアメリカで最年少の五輪代表に選出された。初めての出場であるロンドン五輪において若干15歳で800m自由形に出場、見事金メダルを獲得した。そこから彼女のスーパーシンデレラストーリーがはじまる。現在は世界水泳選手権において女子として歴代最多の15個の金メダル獲得という、驚異的な実績を残している。

今も忘れられない世田谷区の子供たちとの思い出

レデッキー選手はスポーツマンシップやアスリートの発信力としても際立った能力を持っている。この面でもアメリカで高い評価を得ている。

五輪延期が決定した以降、アメリカにおいてインタビューやインターネット番組のコメントで「来年、2021年に東京オリンピックがあると思うと笑顔になる」など常にポジティブな意見を発信し続けている。そこには、アスリート自らが発信して来年の東京大会を盛り上げていこうという強い意思を感じる。

実はレデッキー選手、2年前にアメリカ選手が東京五輪に出場する際にキャンプ地となる世田谷区大蔵の総合運動場温水プールのイベントにも参加していた。世田谷の子供たちに水泳を積極的に指導する姿は自身のInstagramにアップしている。この時のイベントに参加した子供たちは”五輪金メダリストから直接指導を受けた”という特別な体験を、今も嬉しそうに語ってくれる。

また、下の年代への指導は競泳だけでなく、次世代の教育支援にも積極的に参加しておりアメリカではこちらの活動でも有名だ。こういった現役やかつてのアスリートの活動は最近では日本でも様々な分野で見られるようになったが、レデッキー選手はさらに一歩進ませて、現在は「STEAM教育」という教育法に携っておりニュースにもなった。

だが、そもそも「STEAM教育」と何なのだろうか?

世界で注目される「STEAM教育」が、WithコロナPostコロナの時代をつくる

STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとり、統合的に学習する「STEM教育」に、Art(芸術)を加えて提唱された教育手法のことである。近年アメリカで提唱され、既成の教育概念を越え、分野をまたぎ多角的に物事を考えて行動する人材づくりに貢献するとして、現在日本や世界中でも注目されている。

今後のWithコロナPostコロナの時代において、より多元的な思考と行動が求められるのは大人としては必須だが、次世代をつくっていく子供にとってはもっと重要になってくる。科学、技術、工学、数学、そこに芸術をプラスした教育は新しい時代にふさわしい要素がつまっている印象をもつが、どうやって学べるものなのだろうか。

例えばレデッキー選手などは自ら教育プログラムを主催して運営している。プログラムは、複数のゲストスピーカーを招待し、子供たちを対象に展開してSTEAM教育の大事さ、成功者たちとのコミュニケーションなど様々なコンテンツを誰もが学びやすいように構成されている。

日本でも学べる時代が、やっと到来した

日本でも本格的なSTEAM教育が遂にはじまる。米メダリスト・ケイティ・レデッキー選手も登場する。「未来をソウゾウするちから」(提供 Panasonic)
日本でも本格的なSTEAM教育が遂にはじまる。米メダリスト・ケイティ・レデッキー選手も登場する。「未来をソウゾウするちから」(提供 Panasonic)

そして、ようやく日本でも「STEM教育」「STEAM教育」を学ぶ機会が生まれようとしている。日本におけるこれら教育法の研究者や教育評論家が声を上げた経緯もあるが、グローバル企業であるPanasonicの全面サポートもあり、ワークショップなどが開かれる。そのなかにはレデッキー選手自らが登場する「未来をソウゾウするちから~The power to create the future~」として、オンラインイベントがある(*下記に掲載)。

日本にも本格的なSTEAM教育の時代が到来したが、教育関係者だけでなくビジネス界やスポーツ界も注目している。それには理由がある。

旧来の文武両道型のスタイルではこれからの新時代はうまくいかない可能性がある。日本の教育スタイルは文系理系などのセグメント化、受験勉強中心の弊害、ディスカッション不足による思考力の欠如などプラスもある反面マイナスも多く指摘されている。

Postコロナではスポーツや学びの本質は変わらないにしても、スタイルは再定義されていく。新しい生活様式と同じで、新しい学びのスタイル、新しいスポーツのあり方がアップデートされていく。新しい環境に適した者だけが生き残っていくのが進化論の本質であれば、学びにおいては間違いなくSTEM教育・STEAM教育は重要な要素となっていくと考えられる。

オリンピアンであり、来年の東京大会の実現を熱烈に待ちわびているケイティ・レデッキー選手の教えは、子供たちにとってかけがえのないものとなるだろう。

【未来をソウゾウするちから~The power to create the future~】

日時:2020年5月31日(日)10:00~11:40 ※日本時間です

場所:オンラインイベントLive配信

対象:中高生、教育関係者、STEAM教育にご興味がある方 ※ただし進行は英語です

料金:無料

※ 詳細については、パナソニックセンター東京のホームページから。

https://panasonic.co.jp/center/tokyo/event/all/2020/05/steam_0531.html

(了)

AGI Creative Labo株式会社 CEO

兵庫県生まれ スポーツジャーナリスト/早稲田大学スポーツビジネス研究所・招聘研究員/江戸川大学・追手門学院大学で非常勤講師/トヨタブロックチェーンラボ所属/ブロックチェーン企業ALiSアンバサダー,Gaudiyクリエイティブディレクター/NFTコンテンツ開発会社AGICL CEO/CBDC/漫画『アオアシ』取材・原案協力/『スポーツビジネスの未来 2021ー2030』(日経BP)など重版/ NewsPicksで「ビジネスはJリーグを救えるか?」連載/趣味はサッカー、ゴルフ、マラソン、トライアスロン / Twitterアカウントは @Nao_Ueno

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