東京を襲うものと守るもののメディア史――東京防衛軍からシン・ゴジラまで――

 世間的には「シン・ゴジラ」ネタは飽和状態なのでしょうが、まぁ、こんな見方もあるのか、くらいのことで。おつきあいいただければ幸いです。

 遅ればせながら先々週、映画を観た直後の感想は、「東京防衛軍だ!」でした。

 何のことかと思いの方も多いでしょうが、よしもとよしとも『東京防衛軍』というマンガでは、地球を侵略する巨大な一円玉型ロボットが、池袋サンシャイン60に押し潰されています。『東京防衛軍』は1990年に単行本化されていますから、(少なくとも池袋方面では)サンシャインだけが屹立していた80年代の東京と、超高層ビルが林立する2010年代という対比が、何だかおもしろいなぁくらいの感慨でした。

 でも昨日、ふと『東京防衛軍』を読み返してみて、ここ30年のメディア史について妙に語りたくなってしまいました。というわけで

『東京防衛軍』とテレビ

 さて、巨大一円玉が暴れたのは、「東京防衛軍2宇宙指令0.03」の方でした。消費税3%が導入され、財布にたまる一円玉に皆うんざりしていた頃の話です。

 が、ここで取り上げたいのは、「東京防衛軍 東京ゴースト」の方です。

 80年代当時、ウォーターフロントともてはやされた湾岸エリアで謎の大爆発が起こります。「芝浦インクじゃ東京スカムーブメントでうかれる若者達全員が焼死したそうですよ…」

 その後、爆発騒ぎが六本木から青山へと広がっていくにつれ、その張本人が可視化されてきます。胴体が東京大空襲で頭部が大学紛争時の東大安田講堂、他には三島由紀夫、日劇ホール、カミナリ族、路地裏の空地などなど、かつての東京の風景で構成された謎の巨大生命体。目や口の部分に「昭」「和」「怨」などの文字が浮かんだりもします。その正体は、失われた東京の風景が怨霊と化して、平成の世に現れた「東京ゴースト」。

 その化け物に、高円寺駅前のインド雑貨屋二階に本拠を構える「東京防衛軍」5名が立ち向かいます。まず用意された新兵器は、ノスタルジーにはトレンディーで対抗ということで、「巡航ミサイルムラカミ1号」。「某作家のベストセラー ダンス(×3)並びにノルウェーの森上下巻セットを満載したミサイル」を「亡霊のドテッ腹にぶちこむ」ものの、火に油を注ぐ結果に…。

 そこで採られた最後の手段。まず、東京ゴーストを新宿駅東口に誘導します。そしてアルタ屋上で決死の覚悟でカメラを構える隊員2名が東京ゴーストを撮影し、その映像をフジテレビのスタッフがアルタビジョンに映し出し、おのれの姿をゴースト自身に見せるという作戦。

そうだこっちを向け怪物!! この放送は全国に 全世界に生中継されているんだ。その視聴率がどれくらいかわかるか!! つまり今もっともトレンディーなのは… きさま自身なんだ――!!

出典:よしもとよしとも『東京防衛軍』双葉社、1990年

 そして、自爆・自壊していく東京ゴースト。

 文豪としての評価が定着した村上春樹も、当時は「トレンディー」な一作家であり、フジテレビ&スタジオアルタ的とされていたことは驚きですが、こうして振り返ってみると、1980年代はつくづく地上波テレビ放送(とくにフジテレビジョン・ネットワーク)のディケードだったんだなぁと思います。

『三丁目防衛軍』とパソコン通信

 続いて、喜国雅彦『三丁目防衛軍』(単行本3巻は1992~94年に刊行)。同じく、東京を次々と襲う異星人や怪獣などに、「生鮮食料品と地球の平和を守る 八百吉 地球防衛軍」の5名(とミジンコ1匹)が立ち向かいます。

 隊長は怪獣と戦うためにパソコン(ビデオインターフェイス、CD-ROMドライブ内蔵。マイク付。プリンターとスキャナーとしめて百六十万円)を買います。迫りくる怪獣。その対策を求めて、「よし、パソコンネットだ!パソコンネットでみんなの意見を聞いてみよう」「他の番号知らないから、とりあえずビッグコミックスピリッツのネットにつないでみよう!!」「えーと、番号は〇三の○○××・△△□□です」「みなさんこんにちは――僕達は地球防衛軍です。誰か今暴れてる怪獣の倒し方を知ってる人は教えて下さい、と」…。しかし、誰もその話題にはのってこず、「『F・F5』のオメガはどーやって倒せばいいんですか?」といったレスポンスばかり…(注:原文では電話番号は伏せられていません)。

 ダイアルアップ接続で、会議室とかフォーラムとか。なんか、そんなパソ通文化ってあったよなぁ(遠い目)。

「こち亀」100巻とインターネット

 まぁ本来的には東京を守る存在だし、旬な話題なので、秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。

 もうすぐ200巻目が出るということで、1996年刊の第100巻を読み返してみました。そのタイトルは「インターネットで逢いましょうの巻」。記憶媒体はフロッピーディスクやMOディスクだし、まだポケベルやPHSがはばをきかせてはいますが(ダイヤルQ2や伝言ダイヤルも出てきますが)、両さん意外にリテラシーが高く、署のホームページを作ったりしています。ただし、アクセス数を稼ごうとエロにはしって、本庁は大騒ぎ、みたいな。

 両さん、顔文字のことを、「スマイリーマーク」と呼んでいます。ウィンドウズ95が出たてで、ブラウザと言えばモザイクだったりした頃の雰囲気が漂い…。

 こち亀でノスタルジーと言えば、ベーゴマだったり、「省電(国鉄・国電でもなく、当然JRではなく、もちろんE電でもなく、鉄道省の引いた電鉄の意)」といった言葉づかいだったりとなりがちですが、メディアがらみもかなり懐かしい。もちろん、100巻目にも鉱石ラジオネタや、電気部品の街だった時代の秋葉原ネタなど、ガチ・ノスタルジーもありますが。

シン・ゴジラとスマホ、SNS

 まぁ、言わずもがなです。スマホで動画撮ってる暇あったら逃げろよとか、どんなに非常事態でもSNSやめないんだなぁとか。

 東京防衛軍から30年、世の中すっかり変わったようでもあり、まったく変わらないようでもあり。