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山火事が土砂災害などを引き起こす危険性

中澤幸介危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長
国土交通省の重ねるハザードマップで足利市の浸水や土砂災害リスクを表示

栃木県足利市の山火事は、発生から一週間がたって、ようやく沈静化した。

今年は、国内のあちこちで山林火災が発生しているが、世界的にも、ここ数年、山林火災は猛威を振るう。Bloombergによれば、アメリカでは2020年、400万エーカー(約1万6187平方キロメートル)が山林火事に見舞われた。これは過去3年間の合計を上回る面積だという。

オーストラリアでも2019年9月から2020年2月にかけて大規模な山林火災が発生したことは記憶に新しい。その継続期間は5カ月近くに及んだ。森林火災から発生した大量の煙が都市部を覆い、呼吸困難を訴える患者が続出したそうだ。

出典:ウィキペディア

ところで、アメリカでは近年、山火事があった場所で土砂災害が多発しているという。

https://phys.org/news/2021-02-post-wildfire-landslides-frequent-southern-california.html

NHKワールド気象アンカーで、気象予報士の森さやか氏によれば「火事で地面が焼けると舗装された道路のように表面が固まって、水を吸い込みにくくなることがある。そのため、雨が降っても地面にたまることなく、すぐに流れ出てしまう」とのことだ。

https://news.yahoo.co.jp/byline/morisayaka/20180112-00080373/

山火事により焼失した木々の残骸、灰などが地表を覆っているために、それが水で一気に流され、家屋や建物、橋などを壊していくのです。

アメリカ気象局によると、土地の傾斜や山火事の規模によって異なるものの、1時間で10ミリの雨が降れば、土砂災害が起きる可能性があるとしています。

実際、2018年1月には、前年に山火事があったロサンゼルス北西部地域で大規模な土砂災害が発生し、20人以上が犠牲になった。

今も火種がくすぶっている中、悪戯に不安を煽るわけではないが、山林火災があった地域では、今後、こうしたリスクがあることは頭の片隅にでも入れておいた方がいい。

参考までに、足利市の火災現場を例に、地域のリスクについて調べてみた。

地域リスクの調べ方

ハザードマップについては、下記記事で紹介した通り。

わが家の危険を調べる方法 「まさかこんな場所に家があったなんて」と後悔しないために

ハザードマップに山火事の危険地域が載っているわけではないが、延焼地域や避難勧告の対象地域に指定された場所を見ると、土砂災害が起きやすい地域指定されていることが分かる。

西宮町林野火災延焼概略図(2月26日現在) 足利市ホームページより
西宮町林野火災延焼概略図(2月26日現在) 足利市ホームページより

国土交通省の重ねるハザードマップで足利市を検索。ピンク色は浸水リスクで「茶色」や「黄土色」「橙色」が土砂災害の危険を示す
国土交通省の重ねるハザードマップで足利市を検索。ピンク色は浸水リスクで「茶色」や「黄土色」「橙色」が土砂災害の危険を示す

ハザードマップは、水害や土砂災害などの危険を示したもので、山火事のリスクを示したものはないが、急峻な山が多い日本では、山林との接点は、土砂災害などのリスクが高いことが改めて分かる。大雨が降れば、山火事により焼失した木々の残骸、灰などが川へと流れ込み、川を堰き止め、洪水を起こすことも考えられる。

日本は国土の3分の2が森林で、いつどこでまた森林火災が発生しても不思議ではない。「自分の裏山が燃えたら」と心配な方も多いだろうが、その際、ハザードマップを広げ、豪雨災害など地域の危険についても、調べてみてはどうか。

足利市の火災の一日も早い完全鎮火を祈りつつも、こうした地域のリスクを市民が認識し、将来的に豪雨災害の被害に遭わないことを願いたい。

危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長

平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト平成25年度事業継続マネジメントを通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務アドバイザー、平成26年度~28年度地区防災計画アドバイザー、平成29年熊本地震への対応に係る検証アドバイザー。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」「LIFE~命を守る教科書」等がある。

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