水害から生活を立て直すために必要なステップは 身の安全から支援制度の確認まで

九州を襲った豪雨により被災した住宅(写真:ロイター/アフロ)

今年も深刻な水害が起きてしまった。家屋が浸水するなどして避難を余儀なくされている方にとっては、生活をどう立て直したらよいのか、大きな問題を抱えることになる。

これまでも災害が起きるたびに「生活再建に向けて何から手を付けたらいいのか。何をどう進めたらよいのか」という悩みを聞いてきた。片付けや手続き、場合によっては転居など、やることは多い。再建までの期間はそれぞれで、年単位、あるいはそれ以上の長期戦の覚悟がいる場合もある。しかし、決してあきらめないでほしい。今は絶望感に包まれていても、必ず生活を立て直すことはできる。国や自治体、そしてボランティアの方々をはじめ、さまざまな支援者も被災者のために動いてくれる。あせらずに、まずは自分の安全と健康を守ることに専念して、そうしたさまざまな支援の手を借りながら、生活を取り戻していってほしい。

■自宅に入る前に「安全の確保」を

生活再建に向けてまず確認したいことは「安全の確保」だ。

避難先から自宅に戻る前には、再び大雨の危険性はないか情報収集し、身体の損傷はないか確認する。自宅に着いたら、まずは家に入る前に周辺をよく確認し、躯体が被災しているような場合は入らない。電線が切れていたり、ガス漏れがないかも確認する。外壁のひびが無いかもチェック。危険なら専門家に事前にチェックを依頼する。特に漏電・感電には細心の注意が必要だ。屋内のブレーカーは確実に切り、水没した自動車は決してバッテリー部に触らない。ハイブリッドや電気自動車は特に注意が必要で、まずは保険会社やディーラーに相談した方がいい。

自宅でのステップについては、被災地支援のネットワーク組織が作った冊子を紹介したい。

■自宅の復旧に向けた7つの手順

被災地支援を続ける全国のNPOやボランティア団体からなる「震災がつなぐ全国ネットワーク」が2016年度に作った手引きは、被災後の復旧に向かうための手順が分かりやすくまとめられていて注目を集めている。昨年相次いだ台風災害の後リニューアル版が公開された。

生活再建までの一般的な手順を次の7項目でまとめている。

1 被害状況を写真に撮る

2 施工会社・大家・保険会社に連絡

3 罹災(りさい)証明書の発行を受ける

4 ぬれてしまった家具や家電をかたづける

5 床下の掃除・泥の除去・乾燥

6 掃除をするときの服装

7 復旧のまえに確認をすること

出典:水害にあったときに 浸水被害からの生活再建の手引き(チラシ版/PDF)-震災がつなぐ全国ネットワーク

「震災がつなぐ全国ネットワーク」の手引き
「震災がつなぐ全国ネットワーク」の手引き

手引きの7項目に沿った形で、生活再建までのポイントを私なりに解説したい。

1 被害状況を写真に撮る

市町村から罹災証明書を取得する際や、保険金の請求にも必要になる。ポイントは、被害の様子がわかる写真を撮ること、家の外をなるべく4方向から、浸水した深さがわかるように、そして室内の被害状況もわかるように撮ること。

2 施工会社・大家・保険会社に連絡

もし火災保険に入っているか分からないような場合は、自然災害損保契約照会センター(一般社団法人 日本損害保険協会内)に連絡すれば、調べてもらうことができる(電話:0120-501331)。施工業者には依頼が殺到し数カ月待ちの場合もあるが、施工業者が分からないような場合は、悪徳業者なども多いことから、ひっかからないよう注意が必要だ。

大分県日田市のホームページでは、不適切な住宅の貼り紙に注意を呼び掛けている
大分県日田市のホームページでは、不適切な住宅の貼り紙に注意を呼び掛けている

3 罹災(りさい)証明書の発行

罹災証明書は、後で公的な支援を受ける際に必要になる。市町村から連絡が来るが、市役所・町村役場に浸水したことを申し出て、被害認定の調査を受ける。自治体によってスピードが異なり、数週間から数カ月に及ぶこともある。

4 ぬれてしまった家具や家電をかたづける

落ち着いてゆっくりと行い、作業のあとには手指を消毒する。泥で足をすべらせてケガをしたというような事故が後をたたないことから十分に気を付ける必要がある。また、分別の方法は普段とは異なるので、市町村などからの正しい情報に基づいて行うとともに、一人で行おうとせず、ボランティアセンターや市町村、社会福祉協議会にお願いすることも大切だ。

5 床下の掃除・泥の除去・乾燥

ぬれた家をそのまま放っておくと、後からカビや悪臭が発生し、生活に支障がでる場合があるため、まずは床下の状態を確認することが大切。自分でできない場合は、施工業者やボランティアに作業を依頼した方がいい。床下の乾燥には最低1カ月はかかる。

6 掃除をするときの服装

自分で作業する場合は、ケガなどしないよう露出をできるだけ避け、手袋などを二重にするなど十分気を付ける。

7 復旧前に確認すべきこと

作業を行う前は、まず、水害後にブレーカーが落ちている場所があれば、漏電の可能性があるため、電力会社に連絡する。これらの作業の前提としては、安全を確保した上で行うこと、二次災害にまきこまれないようにすることを補足しておきたい。例えば、被災した家屋は、天井や壁が剥がれ落ちてきたり、床が抜けたり、泥で足をすべらせて大けがをする危険性があるし、再び雨が降る危険性もあるため、早めに避難できるようにしておくことが重要だ。

なお 、全32ページの冊子版(PDF)では、仮住まいの選択肢のメリットデメリットのほか、被災者が受けられる様々な支援制度についても細かく解説されている(11~14ページ)。公的な支援金や見舞金のしくみや、各種税金や保険料、電気・ガス・水道・電話料金、NHK受信料などの支払い猶予や減免が受けられる可能性があることを確認しておきたい。

■生活と家屋の復旧ロードマップ

また災害支援ネットワークおかやまが制作した「復旧ロードマップ水害編」(PDF)もわかりやすい。「生活」と「家屋」の両面から、復旧に向けてとるべきステップを図解している。

「災害支援ネットワークおかやま」サイトでダウンロード可能
「災害支援ネットワークおかやま」サイトでダウンロード可能

復旧作業にあたる上で留意すべきは、感染症対策だ。感染症は新型コロナウイルスばかりではない。甚大な被害が発生した熊本では、県がホームページで「7月豪雨に係る被害地域における感染症予防対策について」を掲載し、浸水した家屋の感染症対策などについて解説しているので参考にしてほしい。

生活再建のために何より大事なのは、心身の健康といえる。疲れをためないように決して無理はせず、自分や家族の健康を守りながら、生活再建に向かってほしい。