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いま考えたい災害対策 感染リスクを避けた避難と備えとは【#コロナとどう暮らす

中澤幸介危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長
まず地元のハザードマップを確認しましょう(写真:アフロ)

Yahoo!ニュースは「#コロナとどう暮らす」というテーマを設定し、コロナ禍が終息しない中での日常生活について「みんなの意見」でアンケートを行っています。その中の「新型コロナを踏まえた災害対策を実施していますか?」という質問に対しては「対策したいが、方法がわからない」という回答が最多となりました。そこで、特に水害や土砂災害の危険が高まる今の季節、どう対策すればよいか解説いたします。

感染リスクを抑える「分散避難」

さて、出水期を迎え、国は自治体に避難所の「過密」防止策を求めています。具体的に自治体からどのような情報が出されているか見たことがありますか?

例えば、昨年10月に令和元年東日本台風(台風19号)で千曲川が決壊し大きな被害が出た長野市では「新型コロナウイルス感染症と自然災害の複合災害に備えて」として次のように「分散避難」を呼びかけています。

昨年の台風災害の時にも、ご自宅の2階、親せきや友人などの家、車で安全な場所で待機、近くにある企業などの高い建物など、避難所以外へ避難された方が多くいらっしゃいました。このような避難所以外へ避難することが、新型コロナウイルス感染症の感染リスクを下げるために有効です。

避難することは命を守る上で最も重要なことですが、「避難所」に行くことだけが避難ではありません。体育館や公民館などの避難所は、密集、密接、密閉のいわゆる「3密」になりやすいとされています。危険性がない場所にいるなら、あえて避難する必要はないでしょう。日頃から、避難する必要があるのか、あるとすれば、どのタイミングで、どこへ、どうやって、誰と避難するかを考えておくことが重要です。

また内閣府と消防庁は下記のようなチラシを作り、住民向けに災害時の注意点をまとめています。

 

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出典:新型コロナウイルス感染症が収束しない中における災害時の避難について(PDF)(内閣府防災情報のページ)

新型コロナウイルスの影響で避難をためらうことがないよう「危険な場所にいる人は避難することが原則です」と強いメッセージを冒頭に載せています。裏面(画像下=PDF2枚目)には、避難行動のフローが分かりやすくまとめられていますので、ぜひご自分でやってみてください。

また、具体的な避難時の注意点を分かりやすくまとめている自治体もありますので、お住まいの市区町村のホームページを調べてみてください。

いざ災害が発生したとき適切に行動するには、発生前の備えがとても大切です。

1.予測する

まずは災害時の危険性を知り、自分の状態を正しく予測することです。地理的・物理的な視点から、自宅やその周辺でどのようなことが起き得るのか、知っておく必要があります。

そのためにハザードマップを見て洪水、土砂災害、津波の危険性があるか、危険性はどの程度なのか確認しておいてください。

ハザードマップは市区町村が家庭に配布する場合がありますが、なければ国土交通省の「ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~」で調べることもできます。

<ハザードマップポータルサイトの使い方>

  1. 「重ねるハザードマップ」に自宅の住所を入力すると、地図上に位置が表示されます。
  2. 「災害種別」から洪水と土砂災害をクリックして、自宅が色のある範囲内かどうか確認します。
  3. 洪水は色のある場所をクリックすると、浸水の高さが分かります。仮に0.5メートル未満なら床上まで浸水する可能性は低いし、それ以上でも3メートル未満なら、2階建て以上の家なら2階に逃げることで命は助かります。
  4. 土砂災害はさまざまな色が塗られていますが、特に「警戒区域」に指定されている場合は注意が必要です。

地震なら1981年より前に建てられたかどうかで耐震基準を満たしているかどうかを確認します。さらに室内に転倒または大きく移動しそうな物がないかも確認し、転倒防止や移動防止、落下防止策を講じておいてください。

2.避難先を考える

どのような災害があったら、どこに避難するかを考えておきます。本当に自宅が危険なら避難すべきです。安全が確保できるなら自宅内で避難するのもよいでしょう。

自宅外に避難する場合、感染リスクを意識しましょう。体育館や公民館などの避難所は、密閉・密集・密閉のいわゆる「3密」になりやすいとされています。「3密」を避け感染リスクをできる限り下げるため、少しでも広い避難所を探したり、安全な親戚・知人宅に避難するのもよいでしょうし、ホテルなども空いていると思います。ただし災害が起きてから親戚・知人にいきなり連絡したら受け入れる側も大変でしょうから、避難が必要になりそうな場合はあらかじめ話し合っておいてください。

また考えてほしいのは、避難することで新たなリスクが発生するということ。3密を避ける手段として車中泊が注目されていますが、上記チラシにもあるように豪雨時の屋外の移動は危険です。大雨の中、車で逃げることで命を落としてしまった方は少なくありません。早めに避難する、落ち着いて避難することがとても重要であることをくれぐれも忘れないでください。

なお新型コロナウイルス対策により、避難所や避難場所が変更または増設されている可能性があるので、災害時には市町村ホームページ等で確認したほうがよいでしょう。

3.備蓄する

上の避難場所をイメージしつつ、しっかり備蓄しておきましょう。javascript:void(0);

一般的な備蓄品(参考:防災用品 - Yahoo!天気・災害 防災手帳)に加え、基本的な感染対策がとれるようにしておくことが大切です。次のリストを参考にしてください。

画像制作:Yahoo!ニュース
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上のリストのうち、防虫スプレーは蚊が増える季節の定番ですが、3密を避けるため窓を開けたり屋外で過ごしたりする場合に備えて今年は特に必須と思われます。

このほか、タオルを多めに用意するとよいでしょう。マスク代わりに口や鼻を覆うと楽ですし、せき込んだとき音が消せます。また避難生活でも心身の健康を保つために、安眠グッズ(アイマスク、耳栓、ヘッドフォン)や好みのおやつ、ビタミン剤などもおすすめです。ヘッドライトまたはランタン、乳児には液体ミルクもあると便利です。

そして大事なポイントは、人それぞれ違う「必要なもの」があるということ。なるべく我慢が少なくてすむようイメージして備えてください。人によって予備のメガネは欠かせません。

災害は予測しきれない

最後に、災害や自分自身の状況は予測しきれるものではないことも頭に入れておいてください。安全だと思っていた自宅が被災してしまい、その時あなたは新型コロナウイルスに感染しているかもしれません。地域で集団感染が発生し、避難所の感染リスクが非常に高まっている事態も考えられます。ですので常に状況を把握し、どう行動するか複数の選択肢が選べるようにしておくことが大切です。

※記事をお読みになって、コロナ禍中の災害対策についてさらに知りたいことや疑問に思っていること、自分なりの対策などのアイデアがありましたら、ぜひ下のFacebookコメント欄にお寄せください(個別の回答はお約束できませんのでご了承ください)。

また、Yahoo!ニュースでは「私たちはコロナとどう暮らす」をテーマに、皆さんの声をヒントに記事を作成した特集ページを公開しています。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長

平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト平成25年度事業継続マネジメントを通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務アドバイザー、平成26年度~28年度地区防災計画アドバイザー、平成29年熊本地震への対応に係る検証アドバイザー。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」「LIFE~命を守る教科書」等がある。

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