【熊本地震】企業が危機を乗り越えられた15のポイント

熊本地震で本震後も駐車場で販売活動を継続したイオン熊本店

富士フイルム九州/イオン/再春館製薬所/工務店(アネシス・新産住拓)/熊本県構造計画研究所/トヨタ自動車の対応に学ぶ

熊本地震における企業の対応から学ばされることは多い。富士フイルム100%出資の生産子会社で、熊本県菊陽町にある富士フイルム九州は、地震などの自然災害を想定して繰り返し訓練をしてきたことで熊本地震の被災から早期に復旧した。同社はTACフィルムと呼ばれる液晶ディスプレイの構成部材である偏光板の保護膜を生産する。フィルムの厚みがサブミクロン(1万分の1ミリ)単位でのズレも許されない精度の精密設備を持ちながら、東京にある富士フイルム本社の災害対策本部と連携し、発災から2 週間で生産を再開させた。

国内小売業最大手のイオンは、熊本地震で店舗が使えなくなりながらも屋外駐車場などで販売を続けるとともに、イオン九州、マックスバリュ九州、イオン本社からの迅速な支援により、早期に店舗での営業を再開させた。自治体からの要請に対しても、これまで積み重ねてきた訓練の経験を生かし、震災直後から物資を被災地に送り届けた。

地元工務店であるアネシスと新産住拓の2社は、毎年のように大きな被害をもたらす台風への備えを強化してきたことから、今回の地震でも迅速に対応した。

そして、震源地に本社を置く再春館製薬所は、大きな被害を受けながらも、被災した社員の安全を最優先に、社員の団結力と社長のリーダーシップで危機を乗り切った。

これの企業の取り組みの詳細は、7月25日発行のリスク対策.com「熊本地震 企業の対応」で詳しく紹介しているので参考にしてほしい。

私の個人的な視点から、何が、なぜうまく対応できたのか、課題はなかったのか。これらを本社、現地の双方から取材・検証することで、BCPの見直すべき点を洗い出してみた。

以下、取材を通じて感じたことを15の項目でまとめてみた。

1.日々の備え

熊本地震における企業対応は、しっかりと災害に備えて準備をしてきたか否かで明確に結果が分かれた。繰り返し訓練をしてきた企業は、BCPで定めた「目標復旧時間」より早く事業を再開させるなど見事な対応を見せた。今回の事例から学ぶべき最も大きな点は「日々の備え」の重要さであろう。

では、「備える」とは何か。それは発生するだろう事態を予測し、その予測に対して、ハード・ソフト両面から対策を講じることである。富士フイルム九州は、建設時から布田川・日奈久断層の存在を把握し、さらに地震などの自然災害を想定して繰り返し訓練をしてきた。対策本部には必要な備蓄がされ、被害状況集計表などもすべて事前に用意されていた。具体的な備蓄品目や被害状況集計表は誌面に細かく紹介したので参考にしてほしい。

富士フイルム九州の災害対策本部 災害対応に必要な機材がしっかり備蓄されている
富士フイルム九州の災害対策本部 災害対応に必要な機材がしっかり備蓄されている
富士フイルム九州の災害対策本部
富士フイルム九州の災害対策本部

リスク対策.com Vol.56 熊本地震 企業の対応

繰り返し安否確認訓練を行い、夜間での発災も想定し、夜間の参集訓練も実施。本社との情報共有の訓練も積み重ねてきた。平時にできないことが、緊急時にできないはずがない。「備え」がいかに大切かを学ばされる事例だ。

イオンにおいても、その訓練の数、そして質には驚かされる。「リアリティーのある訓練をやり続けなければいけないということで、従業員が犠牲になるような、これまでタブーとされた状況も想定し、かつ、ブラインド型(シナリオをあらかじめ公開しない方法)で実施をするなど、随時課題を洗い出し、あえて、対応が難しいシナリオにおいて訓練を実施することで、対応方法を改善してきた」(イオングループ総務部長の津末浩治氏)。

2. 避難場所、対策本部の設置場所

一方で、検証しなくてはいけないこともある。

例えば災害対策本部の設置場所だ。今回の熊本地震では、耐震を満たしていても、天井や壁が崩壊したり、オフィス家具類が散乱するなどして、一時的に施設は使えなくなった。社員をどこに避難させるのか、対策本部が使えなくなったときどうするのか、これは東京など都市圏においても考えておく必要がある。

ここでも、富士フイルム九州の事例を紹介したい。同社は、火災も想定して、本社工場とは離れた場所に対策本部室を設置していたことで、本震で一時的に施設内に入れない状況になっても、直後から対応にあたれた。繰り返しになるが、対策本部をどこに設置するか、仮に使えなくなった場合、どこに設置するのかは、企業だけでなく、自治体、そしてあらゆる組織が考え直すべき点だと感じた。

3. 安否確認

基本的な点を言えば安否確認も見直す必要があるのではないか。今回の地震では、余震が多かったことからその都度、安否確認システムが自動発動し、どの時点での安否集計かわからなくなったという組織もあった。その点、イオンは独自のシステムで、どのタイミングでどのエリアを対象にするかを現地と本社の対策本部が意思決定して配信する方法で、スムーズに安否確認ができた。

最近は便利な安否確認システムが次々に登場している。「震度○○以上なら自動的に安否メールが発動」など、その機能を否定するつもりはないが、「どのような事態の時に、誰が、誰に対して、どのように(仮にシステムが使えない場合どのような方法で)、何を報告するのか、その報告を受けてどうするか」という安否確認の基本をしっかり押さえておく必要がある。

4. 事業を停止する

事業を継続するだけでなく、「停止させる」という判断が重要になることも今回の取材で改めて教えられた。

富士フイルム九州では、前震で工場のラインが自動停止しなかったにもかかわらず、余震も続いたことから、「もしもの一手」としてラインを止める判断をした。そのことが本震の被害を軽減することにつながった。ITセキュリティに置き換えるなら、サイバー攻撃を受けた、あるいは、不審メールを社員が開いてしまった際、システムを止めるのか、動かし続けるのかという判断が迫られる。何を優先させるのか「判断基準」を明確にしなくてはいけない。

アメリカの災害対応では、LIPという言葉が使われている。(自らの)命を守る(Life safety)、二次災害を食い止める(Incident stabilization)、財産を保全する(Property conservation)の順番を示したものだが、二次災害を防ぐことを怠り、売り上げの損失を恐れ、工場を停止することを躊躇してしまうケースがBCPでは起こり得る。継続させることだけがBCPではない。

熊本市内の工務店のアネシスと新産住拓が当初社員を屋根に登らせなかったこともLIPに基づく好判断だ。顧客は、地震直後から、屋根にブルーシートを早くかけてほしいと言っている。そのニーズを早く満たすことだけが事業継続ではないということだ。余震が続いるなら、社員は屋根に上らせない。大切なものは、顧客より、売上より、まず社員の命である。ちょっとした事例だが、こうした点こそBCPの最も重要な部分ではないか。

5. 先手を取る

災害時に「もしかしたら」と考えることは、先手を打てるか、後手になるかの明暗を分ける。

富士フイルム本社は、前震の時点で、現地が大きく被災していないことを確認したにもかかわらず「もしかしたら社員の家族や地域の人が被災しているかもしれない」と翌日に食料を現地に向けて発送し、そのことで本震の直後に現地に食料が届くというスーパープレーを実現した。もしかしたら工場に被害が出ているかもしれないとゼネコンに連絡したことで、本震の直後に専門家が来て建物を診断してくれるという信じられない早さの連携を実現した。

また、誌面で紹介した工務店の新産住拓は、東日本大震災で生じた問題点などを参考にして、次に発生する事態を予測し、職人を確保するために特別手当を出したり、賃金を上げたり、県外からの応援のためにホテルやアパートを確保するなど、先手の対応を打った。「職人が不足する」「職人の賃金が上がる」「応援部隊の宿泊施設がとりにくくなる」「災害後に社員の疲労が高まる」…、これらの情報を、過去に被災した工務店からのヒアリングで知り得たからこそ、先手が打てた。

1つ1つの災害をしっかり検証することが、次の災害対応を早めることにつながるということだろう。

6. 資源の確保

少しきつめの話になってしまうが、災害時は資源の取り合いが生じる。当然ゼネコンや建設会社の仕事が増える。ということは、それだけ仕事を依頼しにくくなるということである。いかに早く、ゼネコンや建設会社を押さえられるかで自社の復旧の早さも変わってくる。各社ともBCPの中で、ゼネコンなどとの連携は強化しているだろうが、建物だけでなく設備やITシステムについても早期に復旧できるよう応援資源を迅速に得られる体制を構築しておかねばならない。

もう1つ、限られた人数で多くの作業に対応するには、一人ひとりの「多能工化」という手法がある。工務店のアネシスが、日常的には工具も持たない社員にも、水道管の簡易修理などができるよう講習を開いて現場に向かわせたことは他の業種でも学べる点ではないか。同社が平時から、全社員による顧客の定期訪問をしていることで、このような多能工化が可能になったことは誌面で紹介した通りだが、やはり平時からの取り組みがいかに重要かということだ。

7. 現地支援のあり方

現地の支援の方法は、富士フイルム、イオン、構造計画研究所に学ぶべき点だ。現地は、安全の確保で精一杯。その中で、いかに早く適切な人材を選定し先遣隊として送れるかがその後を大きく左右する。現地でどのような支援が必要かということも先遣隊が調整した事例は大いに参考になる。本社側から送られてくる大量の支援部隊の交通手段や宿泊施設の確保も現地が行うとなれば大きな負担となってしまう。こうした現地の負担を和らげる支援のあり方を見習いたい。

熊本地震では、支援部隊の派遣をためらったが故に対応が遅れたという反省が、本誌5月号で紹介した企業アンケートでも課題として挙げられた。政府も、被災府県からの具体的な要請を待たずに避難所・避難者へ必要不可欠と見込まれる物資を調達し緊急輸送する「プッシュ型」支援を実施したが、当初は現地で仕分けられる人がいなくて機能しなかった。

8. 現地の判断

では、現地の役割は何か。イオン熊本店では、店長が指揮を執り、地震後に顧客を避難誘導し、駐車場を開放するなど自ら判断し行動した。翌日からの販売方法も、何を販売するのか、屋外でどう販売するのか、いくらで販売するのか現地の店長が中心となって決めた。現地で判断できない施設面は本社側がサポートする。このように現地を支えるエスカレーションの姿勢に学べる点は多い。

そして、現場が判断できるようしっかりと権限も与える。アネシスは、予算も含め課長である災害対策室長に権限を与えていた。平時と非常時の柔軟な組織体制の切り替えができるよう、平時の事業部責任者を執行部として災害対策組織の中に組み入れていたことも柔軟な対応を可能にした要因であろう。

イオン熊本店。店長の判断により、余震で帰れない人のために駐車場を開放し続けた
イオン熊本店。店長の判断により、余震で帰れない人のために駐車場を開放し続けた

9. 情報共有・リーダーシップ

現地を支援するには本社との情報共有が不可欠になる。どのような情報をどのように共有するのか。今回の地震では通信が途絶しなかったことから全体的に情報共有はうまくいったようだが、一方で、電話では現地に負担をかける危険性があることも考えておく必要がある。ある企業の社員が「本社と携帯電話で話をしている最中に余震が起きることが何度もあったが、電話は初動を鈍らせる」と話していた。

デマも起きた。災害時には正しい情報だけが発信されるわけではない。大切な情報は収集できず、余計な情報ばかりが飛び交う。その中でどう必要な情報を精査(トリアージ)するのか、情報が入手できない状況なら、いつまで待つのか、情報がなくても対応するのか、その決断も求められる。

日常的な情報共有の仕組みが生きた事例は再春館製薬所だ。同社はもともと、1000人近い社員がワンフロア間仕切りなしで働くほどコミュニケーションを重視している。こうした組織体質に加え、西川社長のリーダーシップにより組織全体で目標・目的が共有され、即座に全体調整がとれた活動が展開できた。経営でも「目標による管理(Management by Objectives)」が重視されるが、災害のような緊急時こそ組織が一体となって対応にあたれるような情報共有を考えておかなくてはいけない。

再春館製薬所 間仕切りなしのワークスペース
再春館製薬所 間仕切りなしのワークスペース

昨年、鬼怒川決壊の対応にあたった常総市では、災害対策本部と安全安心課の部屋が分かれ情報共有しにくかったことは検証報告書でも指摘されている。

10. 連携

情報共有をした上で「連携」が生まれる。この連携においては、イオンが自治体や陸上自衛隊、航空会社と迅速に連携できたことが参考になる。繰り返しの訓練で成し遂げた点は改めて強調しておきたい。

新産住拓が、県外から支援に来た職人と連携して対応にあたった事例も参考になる。土地勘のない人が突然支援に来ても力を発揮することは難しい。その点、同社は、自社の付き合いの深い地元の職人と外部の職人の混成チームを編成することで支援力をフルに発揮させた。さらに、一度編成したチームも状況に応じて合体したり、別々に活動させるなど日々状況に応じて柔軟に対応させた。専門的な用語を用いるなら「事業規模に応じた柔軟な組織体制(Modular Organization)」と言われる大切なことだ。

一方、自治体についてはどうだろう。多くの自治体から被災自治体に職員は派遣されるが、都道府県職員が来ても、市町村とでは普段からやるべき業務が違うし、災害時の対応を理解している人だけが派遣されるわけではない。被災自治体の職員が先頭に立ち指揮を執らねば復興作業は進まないが、基礎自治体が都道府県職員を指揮することは気分的にも困難という話も聞く。3.11以降、連携を強化するための「災害対応の標準化」の検討が行われてきたが、普段一緒に働かない人とチームプレーができるようにする共通のルール(Incident Command System)や制度を考えていく必要がある。

11. 状況認識の統一

新産住拓では、全社員が住宅の被害状況をなるべく正しく把握できるためのチェックシートを作った。これも連携の上で重要な手段である。専門的な用語を使うなら「状況認識の統一(COP:Common Operational Picture)」と言って、災害対応に関わるあらゆる人が同じ認識を持てるようにする災害対応の「肝」とされる。こうした対応を地元の工務店ができたことは、災害の種類こそ違うが、普段から台風などの対応を経験し、備えていたからだろう。

12. 社員のケア

そして、多くの企業が課題に挙げたのが社員のケアだった。特別手当を支給したり、交通費を無料にしたり、休暇を与えたり、様々な取り組みが見られた。被災した社員にどのような援助をするのか。社内を避難所として開放した再春館製薬所、熊本構造計画研究所の取り組みは大いに参考になる。社員を守ることが地域全体の負担を軽減することにつながる。

本当に社員の困っていることが何かをいかに把握し、どう対応するか。再春館製薬所が被災した「全社員にヒアリング」を実施したことは同社がどれだけ社員を大切にしているいるか、その姿勢が伝わってきた。これは安否確認システムではできないことだ。システムで集計できないことがあることを人事担当者は考えておかなくてはいけない。

再春館製薬所では、学校が休校し、子供を預かってくれる場所がないという社員の悩みに対して、幼児から高校生まで自社の保育施設であずかった。被災された社員にはどれだけありがたかったことだろう。家が被災した社員には寮を貸し出したり、不動産を紹介する。対応に限界があるにしても親身に接する姿勢は学びたい。社長からの心のこもった手紙も社員を勇気づけたに違いない。

今回の熊本地震で、ある企業では、被災したコールセンターを被災地から少し離れた別の場所に移そうとしたが、社員は移せなかったという話を聞いた。社員は家族を持ち、地域で暮らしている。短い期間といえども、勤務地を変えるということは容易ではない。ハードの対策だけでなく、社員のメンタルを考えBCPを見直すことも必要だ。

そして、新産住拓の小山社長が言うように、社員にとって一番の不安は「いつまでこんな仕事の大変な状況が続くのか」ということも頭の中に入れておかなくてはいけない。今後の方針やスケジュールを明確にすることが社員に「出口」を示

すことであり、不安を和らげることにつながる。

13. 地域支援

再春館製薬所の社員が避難所をまわって被災者を支援している姿勢を見て、これは共助ではなく自助だと感じた。真夜中の地震で、社員が駆けつけるのは本社ではなく地域の避難所だ。社員である前に地域住民である。そして家族がいる、知人、友人がいる。別の言い方をするなら地域が社員を守ってくれている。その地域を会社として支援していくのは、自社を守ることにつながるということだ。「私たちは支援をしてあげているのではない。支えられているんです」(再春館製薬所広報室の江河氏)という言葉がすべてを象徴している。

多くの人が、個々の企業のBCPが地域継続につながると信じている。だからBCPが重要なのだと。もちろん、各企業がそれぞれの機能を果たすことで、地域機能が維持されるし、各企業が事業を早期に復旧することにより地域経済が早く復興する。そして地域の雇用を守ることにつながる。

しかし、現実にはこんな美しい話だけが起きているわけではない。

自社の事業だけを考え、当面の食料を買い占めたり、燃料を買い占めたり、普段の備えがないことで、緊急時に地域に大きな負担をかけるケースが散見される。全社的な話ではなく、ごく一部の社員が行ったことでも、会社としてそのような姿勢であると見られてしまう。メディアでも、自社の報道のためにガソリンスタンドの列に割り込むようなことが今回の災害対応で問題視された。地域と事業継続の関係は、末端社員まで含め、しっかり考えておくべきことだ。

14. 企業理念とBCP

最後は企業理念とBCPについて。再春館製薬所は、企業理念としてコミュニケーションを重視し、製造も販売も同じワンフロアで活動してきた。しかし、逆に考えれば災害で両方同時にやられるリスクもある。「分散したり代替生産にすることは会社の理念に抵触する」。同様に、トヨタ自動車のジャストインタイムは「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」という生産効率の向上化を追求した考えで、もちろん何か異常が発生した際にただちに対応できるというメリットもあるが、在庫などを極力持たないようにしているため災害時などで特定の部品調達が止まれば即生産に影響することが指摘されてきた。

どの会社でもこうした問題は生じ得る。企業としては、理念に抵触してでも事業継続のために万全を期すのか、理念の許容範囲の中で可能な対策を行うのか、一定の被災や調達の途絶は覚悟の上で事後の対応でカバーできるようにするのか――、何らかの方針を決めているのだろうが、他方で、社会全体の視点としても、事業が止まることだけを安易に批判することは避けなくてはいけない。

そもそもBCPは、被災しないことを前提とした考えではなく、被災することを前提に、いかに早く復旧するか、そのために何をしておくかをあらかじめ考えておく「転んだ先の杖」であることを社会全体が再度認識する必要があるのではないか。

15.災害の全体像を見極める

最近、「災害は奇怪な生き物だ」と考えるようにしている。小さな地震、動物に例えるなら猫程度の大きさの揺れかと思えば、直後にライオンのような大きな揺れが起きたり、大きな像のような顔をした巨大台風が出現したと思えば大した被害がないまま消滅したり、連続で大きな地震が発生する今回のような2つの頭を持つ蛇のような場合もある。その全貌を見極めるには時間がかかる。しかし、重要なことは、一度危険を乗り切っても決して安心するのではなく、アメリカの災害対応で紹介したLIPのごとく、とにかく二次災害を防ぐ姿勢だと思う。

今回の地震で最初に思い浮かんだのが2003年に起きた宮城県北部地震だ。7月26日の午前0時13分に最大震度6弱の前震が発生し、その7時間後の午前7時13分に6強の本震が発生し、さらに夕方5時に震度6弱の余震が発生した。その2カ月前にも震度6弱の地震が発生している。これらの地震で30億円以上の被害を出した会社に取材をした記事が手元にあるが、読み返すと「まさかあれだけの揺れの後に本震が来ると思わなかった」とまるで今回の熊本地震で語られていることと同じ言葉が載っている。

今回の熊本地震で学べることは何か。各組織でしっかりと検証をしてほしい。今回のような地震災害を乗り切った企業の話を講演で話すと必ず受ける質問がある。それは「好事例はわかったが、悪い事例は何か」ということ。それについては、「何も被害を受けなかったからといって、傍観し、自社で何の改善活動もしていない企業ではないか」と答えている。