ゴルフ大会を例に考える危機管理力の高め方!

ゴルフ場のリスクは何?

 首都直下地震や南海トラフ地震などへの危機感の高まりから、自治体とゴルフ場の防災協定が結ばれるなど、「ゴルフ場は安全」という固定概念が定着しているようです。ゴルフ場が大規模な災害協定

確かにゴルフ場には多くの人が避難できる広大な敷地があり、クラブハウスでは食事や風呂の提供も可能。また自家発電の施設があったり、駐車場はヘリポートとして利用することもできます。が、これらはゴルフ場が被災しない前提。

こうした誰もが安全と思っている場所にこそ、リスクの落とし穴が存在します。

ゴルフ大会を例に、危機管理のあり方を考えてみましょう。

熊本地震の後、日本ゴルフコース設計者協会理事長の佐藤毅氏が重要な発言をされています。

施設の防災安全を知る上からも、コース建設の歴史を今一度確認すべきだとの緊急提言です。

震災に学ぶゴルフ場の危機管理

特に歴史の新しいコースは、丘陵地に建設されてきたケースが多いことから、切盛土の施工量が多くなる傾向にあり、建設時には予想しなかった地下水の変異、浸透水の滞留などが、時として災害発生の要因となる場合がある。また、工事完成後の土壌圧密沈下、土質、土壌の変化が地滑りを助長するなど、土砂崩壊の原因に繋がる危険性さえ秘めている。含水比の高い土壌などは特に地震の影響を受けやすいこともあり、崩落、崩壊回避のためにも、各施設における保安確認が不可欠である。

また、切盛土工の高さが数十メートルに及ぶといったゴルフ場などでは、基幹排水管などが地下深くに埋設されていることもあり、実態調査が難しいというケースも少なくない。地下深くに埋設された排水管、土止め構築物などの位置確認や形態、種類、施工規模などの確認が難しい場合は、維持管理が疎かになりやすいため注意が必要だ。

出典:日本ゴルフコース設計者協会 震災に学ぶゴルフ場の危機管理 

実際、海外ではここ数年、ゴルフコースでの斜面崩壊や大規模陥没事故が発生しています。

Fauquier Golf Course landslide  British Columbia in western Canada

Sinkhole opens up at Kansas golf course

ただし、日本も海外も含め、歴史的にゴルフで死者を伴う事故は、落雷が最も多いです。地震の犠牲者は聞いたことがありません。

●2012/6/29ドイツ ヴァルデック市/コース脇の木陰に建つ木造小屋(屋根付きベンチ)で4人が雨宿り中、落雷。3人死亡、1人負傷。

●2010/7/4北海道奈井江町/4人でゴルフプレー中、雨が降り出したあと、突然落雷。3人負傷。

●2006/6/10韓国京畿道広州市/傘を差してホール間を歩いて移動中のゴルファーに落雷。1人負傷。

●2004/7/10佐賀県北茂安町/雨が強くなり、引き上げる途中、コース内のカート用道路で、雨傘を差して歩いていたゴルファーに落雷。1人死亡。

●2001/8/17中国 青島市/日本人の駐在員が、休暇でゴルフプレー中に落雷に遭い、1人死亡。

●2001/8/4岡山県井原市/雨は降っておらずプレーしている最中、 クラブを手に持ちグリーンに上がったところで落雷。1人死亡。

●1997/9/8茨城県桜川村/中学校教員グループが、ゴルフプレー中に雷雨となり、高さ十数mの松の木の下で雨宿り中、木に落雷。松の木から1m程度の距離にいた、ゴルファー2人とキャディ1人が死亡、2人が負傷。

●1995/8/20山口県山陽町/コース脇の木の下で雨宿り中、落雷。1人死亡。

●1991/8/8アメリカ/ゴルフ観戦 男子全米プロ選手権中に落雷。1人死亡。

●1991/7/27宮崎県北方町/18番ホールに落雷。ゴルファー1人死亡。

●1991/6/13アメリカ/ミネソタ州 ゴルフ観戦全米オープンゴルフ中に雷雨で競技が中断。4万人の観客が逃げまどう。木の下で雨宿りしていた1人が死亡、5人が負傷。

など

出典:あおば屋主な落雷事故(人身)リスト

もちろん、地理的に考えれば、山なら噴火、海に近いコースなら津波の被害もありうるかもしれません。

地震災害について調べてみると、今年2月のニュージーランド女子オープでは開催中にM5.6の地震が発生しましたが、大事には至りませんでした。ただし、観客は動揺したと報じられています。

New Zealand cliffs collapse in Christchurch earthquake

熊本は、KKT杯バンテリン・レディース開催直前に熊本地震(前震)が発生し、主催者の中止の英断により、本震の被害は避けられました。

また、別のリスクとして、最近ではトーナメントをねらったテロへの懸念も高まっています。世界放映されている大イベントで、警備の限界があるゴルフ大会はテロの絶好のターゲットになりえます。災害対策の盲点とならぬよう、注意が必要です。

さて、このようにリスクを洗い出す時には、地理的条件(地盤の強さ、断層の有無、近くにあるもの等)、歴史的条件(過去に起きた事件、過去にその地で起きた災害・事故等)、物理的条件(建物・施設の丈夫さ、備蓄の量等)、環境の変化(朝から夜、数十年前と今、開発の過程)、直観(ヒヤリハット)といった視点が必要になります。それに対して、どう予防するか。予防も防ぐだけでなく、被災した後の「軽減」という視点からも考えてみる。さらには、危機に直面した後の対応を考えることが大切です。この予測、予防、対応があらゆるリスク対策の基本となります。予想しないことを予防できるはずがありませんし、予防できなければとても高い対応力が求められます。予測しても予防しきれないものもあります。この場合、予防しきれなかった部分は対応でカバーするしかありません。

危機管理キャット(catastrophe)モデル! 予防・予測・対応の3原則((C)リスク対策.com)
危機管理キャット(catastrophe)モデル! 予防・予測・対応の3原則((C)リスク対策.com)

さて、特定のリスクを決めた上で、そのリスクにどう備えるべきかを考える上で効果的なのが机上訓練です。

例えば、地震を例に考えてみましょう。

こんなシナリオです。

「1万人の観客が見守る真夏のオープンゴルフトーナメント表彰式の開催中、付近を震源とするM6.8の地震が発生。最大震度6弱の揺れを観測。観客の悲鳴がひびきわたり、観客席から落下してけが人も出ているようだ。クラブハウスは停電し、水道も出ない。119にも電話が通じない」

広大な土地に分散している観客にどう安全確保を呼びかけるか、観客席から落ちてケガ人が出ていたらどう助けるか?

ゴルフ場のデメリットは、市街地から離れているので、救援が受けにくいこと、アクセス道も土砂災害などで通行できなくなる可能性が多いことなどが考えられます。

さらに、急に大雨が降ってきて、雷が鳴り出したら。

ゴルフトーナメント地震シナリオ
ゴルフトーナメント地震シナリオ
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肝心なのは「ケガ人を助ける」というような答えを出したとき、5W+1Hでさらにイマジネーションを高めることです。

誰が、何人で、どうやって助けるのか、必要な資機材はあるのか。

コース内の安全確認をするなら、やはり、誰が(何人が)、どうやって、どのくらい時間がかかるか、日が暮れてきたらどうするか、広大な敷地で、仮に消防や医療機関関係者が来ても、正しく場所を伝えることができるか?など疑問をできる限りつぶしていきます。

ここで気づいた点、備えておいた方と思ったことをどれだけできるかが、被害の軽減度合いと比例してきます。

「無理」「やっても意味がない」と考えるか、できることだけでも今やってしまおうかと考えるかで明暗が分かれます。いきなり100%の対応なんてできません。まずは少しでも出来ることをやることが危機管理の第一歩です。

ゴルフを一例に考えてみましたが、是非いろいろなイベントにあてはめてチャレンジしてみてください!

先日、ゴルフ大会主催者の集まる勉強会で、同じシナリオで演習をしてみました。

・観客席近くには応急手当、AEDをあらかじめ設置しておく

・熱中症に備えて各コースで簡易貯水槽を用意しておく

・特に高齢者の観客が多いのでクラブハウス内の医療体制を強化しておく

・カートで負傷者をピストン輸送できるようにする

・誰でもカートでコース内がまわれるようゴルフ場の地図上にグリッド線を引き、グリッド番号で場所が把握できるようにする。本部と各カートに地図を入れておく。

・雨で全員受け入れられないので、アルミシートやタオルを大量に用意しておく。

・出店業者に緊急時の協力を求めておく(飲食の提供など)

・大型テントを用意しておく

・可搬式WIFI基地を用意しておく

などなどのアイデアが出されました!