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「災害用トイレ」を備蓄している事業者はたった33.8%。これで防災・BCPは大丈夫か?

中澤幸介危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長
災害用トイレ

「災害用トイレ」を備蓄している都内の事業者はたった33.8%。

こんな数字が、東京都が実施したアンケート調査で明らかになった。東京都帰宅困難者対策条例施行から1年が経過することから、都内の事業所を対象に、大規模災害発生時に備えた取組がどの程度実施されているかを把握するために行ったもの。

その結果、被災時に備え、従業員用の「飲料水」「食料品」を3日分以上の備蓄をしている事業所の割合はそれぞれ49.8%、49.1%であるのに対し、「災害用トイレ」については33.8%にとどまった。3日未満の備蓄については、「飲料水」が80.5%、「食料品」が74.7%で、「災害用トイレ」は53.0%、「毛布」は51.2%となっている。従業員向けの備蓄をしない理由は、「備蓄の保管スペースを確保することが難しい」が35.5%で最も多い。

都の帰宅困難者条例では、一斉帰宅の抑制を推進するため、従業員が3日程度、事業所内にとどまれるように備蓄を義務付けている。

兵庫県の「避難所等におけるトイレ対策検討会」(座長:兵庫県立大学准教授木村玲欧氏)が26年4月にまとめた「避難所等におけるトイレ対策の手引き」によると、阪神・淡路大震災では、約900人が震災関連死として認定されており、その死亡原因をみると、3割程度が心筋梗塞や脳梗塞で、ストレスの蓄積もあるが「トイレを無理に我慢したことも影響している」と指摘している。トイレを我慢して水を飲まなかったり、食事を摂らないために、血液の流れが悪くなり心臓に負担をかけて、死を招いたと言われている。

東日本大震災でも、断水や停電、給排水管の損壊、汚水処理施設の被災により、多くの地域において水洗トイレが使用できなくなった。そのため、災害発生直後のトイレは排泄物で一杯になり、劣悪な衛生状態となったところも少なくない。

様々な視点でトイレ問題を考える

こうした問題から、危機管理の専門誌「リスク対策.com」を発行する新建新聞社と日本トイレ研究所では、2014年12月11日(木)に、東京都新宿区の四ツ谷区民ホールで「防災トイレサミット2014」を開催する。入場は無料。

http://www.risktaisaku.com/sys/seminor/?p=808

NPO法人日本トイレ研究所代表理事の加藤篤氏が講演するほか、女性や若者の視点として考えるべき防災トイレのあり方について防災ガール代表の田中美咲氏が、また、企業が従業員を守る上でのトイレの備蓄の必要性と法的な留意事項について丸の内総合法律事務所パートナー弁護士の中野明安氏が、それぞれ講演する。

また、トイレ対策に積極的に取り組んでいる組織として、よこすか海辺ニュータウン連合自治会会長の安部俊一氏と、プルデンシャル生命保険株式会社リスク管理チームの岡本誠治氏が、災害時のトイレの利用も含めた訓練の必要性について株式会社タフ・ジャパン 代表取締役の鎌田修広氏が講演する。

防災計画や事業継続計画(BCP)においては、トイレの問題が見落とされがちだ。しかし、トイレが使えない状況で、防災活動も事業継続も行えるはずがない。避難所だけでなく、まずは個人、家庭、企業などの組織が、しっかりと被災時を想定したトイレ対策を講じるべきである。

危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長

平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト平成25年度事業継続マネジメントを通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務アドバイザー、平成26年度~28年度地区防災計画アドバイザー、平成29年熊本地震への対応に係る検証アドバイザー。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」「LIFE~命を守る教科書」等がある。

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