芦田愛菜さん、病理医オススメですよ ~医師の視点~

病理医はこんなお仕事です。結構かっこいいんですよ(写真:アフロ)

タレントの芦田愛菜さんが「将来の夢は病理医です」と発言したことで、お医者さんたちは大騒ぎになりました。私も、とっても驚きました。

しかし、病理医(びょうりい)ってどういう人々なのか?知らない方が多いでしょう。

そこで、この記事では、芦田愛菜さんや中学生・高校生など若い皆さんへ向けて、病理医はどんな人なのかを書きました。最後の方には、友達の女性の病理医にインタビューした内容ものせています。

病理医はドラマにもなったことがあります

突然ですが、病理医はかっこいい。とにかくかっこいいのです。かっこいい病理医は先日、ドラマ化もされました。長瀬智也さん主演の「フラジャイル」というドラマで、天才イケメン医師がまさに病理医でした。

かっこいい理由を説明するために自分の話を少ししますが、わたしは外科のお医者さんです。外科のお医者さんは、手術(しゅじゅつ)をします。わたしもほぼ毎日しています。わたしがよくやる手術は、おなかを切っておなかの中の病気を切り取る手術。これをやったあと、切り取った悪いもの(がんだったり、それ以外の病気だったりします)を渡して詳しく見てもらうお願いをするのが病理医のお医者さんなのです。

病理医は、わたしのような外科のお医者さんが手術で切り取ったものを病院中から集めて、かたっぱしから細かくナイフで切って、顕微鏡(けんびきょう)で見ます。見るだけではなく、見て「ああ、これはナントカ病だな」とか「これはがんだ、しかもかなり悪い顔つきをしている」というふうに判断します。そして判断した結果を、わたしのような外科のお医者さんに手紙で教えてくれるのです。「この患者(かんじゃ)さんから切り取ったこれは、結構タチが悪いからしっかり治療(ちりょう)してあげてください」「これはそれほど悪くないから、だいじょうぶでしょう」といった具合にです。

他にも、「この患者さんの治療、どうすればいいかなあ」と困った時に相談しに行くこともあります。

ですから、病理医はお医者さんからとても頼りにされていて、別名「お医者さんのお医者さん」と言われるくらいです。お医者さんが困った時、相談しに行ってなんとかしてもらう人、という意味ですね。病理医ははばひろく、しかも深い知識をもっているのです。きっと、とても勉強をしているのでしょう。

だからわたしは、しょっちゅう病理医に会っています。

病理医は、患者さんと会うことは少ない

けれど、病理医はあまり患者さんと会うことは多くありません。ほら、お医者さんのイメージって、病院で大きないすにすわって白衣を着て、「きょうはどうしましたか?」と聞いてくる、そんなイメージですよね。病理医は、こういうことはあまりしません。白衣を着ない人もたまにいるくらいです。普段は「病理室(びょうりしつ)」という、病院のひと部屋にいて、そこでけんびきょうをのぞいたり患者さんから切り取った内臓を細かく切ったりしています。病院にひとりだけしか病理医がいないこともあれば、何人かいることもあります。

芦田愛菜さん、けんびきょうは好きですか?

芦田愛菜さん、けんびきょうは好きですか?

病理医が、毎日必ず見るものがあります。それは「けんびきょう(顕微鏡)」です。

さきほど話しましたが、病理医は患者さんの体から切り取ったものをけんびきょうで見ます。わたしもけんびきょうを見たことはありますが、病理医のスピードと見る目、そして知識にはとてもかないません。きっと、病理医の目はわたしたちの目と違うのでしょうね。ちょっと目が疲れそうですが。

でも最近ではけんびきょうをのぞくだけではなく、大きな画面に出して見るという最新の機械もあります。

友達の病理医にインタビューしました

私の友達である、現在子育て中の女性の病理の先生にインタビューしてみました。彼女はとっても明るい、美人な女医さんです。

(質問) いきなりですが、「びょうりい」って、言いづらくないですか

(答え)「びょうりいです」っていう音が言いづらいと言うことでしょうか??あんまり意識したことなかったです。

社会的に「病理医です」と言いづらいと言うことはないのですが、一般のかたには、ちゃんと発音できても「なんですかそれ?」となってしまい、その後の会話ははずみません。最近は「フラジャイル知ってますか?あれです!」と言えるようになったので、あのドラマにはとても感謝しています。

(質問) 病理医って、変わった人が多くないですか?

(答え)ご指摘の通り、病理医は変わった人が多いかもしれません。真面目な人、凝り性(オタク含む)の人、その両方の人が多いような気がしています。勉強好きの人も多いです。メガネのおじさん率が高いです。若手は女子が増えてきているようです。

(質問) 病理医になったのは、なぜですか?

(答え)わたしが医学部に入って、病気の名前を初めてたくさん学んだのが病理学でした。もともと解剖学、組織学が好きだったので、組織をみて病気を診断したり、病理解剖で病気の原因を知ることができるのは、とても興味深いと思いました。

(質問) 病理医は、楽しいですか?

(答え)病理医は楽しいです。4年間の修行期間はつらいことも多々ありましたが、それでも毎日なにか新しいことを学び、充実した毎日を送ることができました。病理医になってよかったと毎日思います。

(質問) ちなみに病理医って、血とかダメだとなれませんか?

(答え)修行中は、病理解剖(※筆者注、亡くなった患者さんの病気を調べるために体を切ることです)をする時に血をみたり、切って取ったものを処理するときに血がついていたりすることがあります。血が全く無理だと、きびしいと思います。が、ほとんどの人は医者になると仕事で血を見るのは慣れていくような気がします。

病理医、オススメです

そんなわけで、わたしは芦田愛菜さんやこれからお医者さんを目指す人に「病理医」をオススメします。

病理医ってとても少なくて、お医者さんが100人いても1人いるかどうかなのです。医者の0.6%と言われています。

人数が少ないということは、チャンスでもあります。だって、ライバルが少ないのですから。

そして、これから人工知能の技術などが入ってきて、さらに進歩していくだろうと思います。コンピューターと話し合って、一緒に診断をするなんてわくわくしませんか。

しかも、ほかの仕事がある程度しやすいかもしれませんね。人数が少ないと、大切にされますから。

最後に、もっと詳しく病理医の仕事を知りたい方は、病理医のお医者さんが自ら書いたこの記事をご覧ください。

「芦田愛菜さんがあこがれる病理医とは?~女性にも女優にも向いた職業です」(榎木英介 | 病理専門医かつ科学・技術政策ウォッチャー

4/20(木) )