医師になるための試験は簡単?合格率は88.7%、過去10年で最低

3日間かけて行われる試験では、このような画像の問題も出ます(写真:アフロ)

先日、医師になるための国家試験が終わり、合格発表がありました。今年の合格率は全国平均で88.7%と、過去最低となりました。90%近いのに過去最低?と思われるかもしれません。試験は簡単なのでしょうか?

どんな試験なのか、実際の試験問題を紹介します。そして合格率が高い理由について考え、最後には医学部志望の方へメッセージを載せました。

医者になるための試験ってどんな試験?

医者になるためには、国から免許証をもらう必要があります。これを医師免許と言い、この免許を得るために、基本的には日本国内の医学部を卒業して、厚生労働省が行う試験に合格しなければなりません。

この試験を「医師国家試験」と言います。今年でなんと第111回。私が受けたのが第101回でした。

試験は毎年2月の上旬に行われ、全部で3日間あります。時間は毎日朝の9:30から夕方17:00まで、1日当たり120~150問を解き続けます。これはなかなか体力的にもきつい試験です。もちろん再試験はなく、一発勝負ですしね。

どんな問題が出る?

問題は、「この病気の特徴はどれか」にaからeまでの選択肢から一つ選ぶようなものから、かなり長い文章を読ませてその患者さんの病態(体がどういう状況になっているか)を考えさせるものや、かなり最新の検査画像を見て診断させるものも・・・正直なところ10年前に受けた筆者が知らないようなものも多く含まれます。医学は日進月歩ですからね。ちょっと実物を引用しましょう。

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(問題)

第110回医師国家試験より
第110回医師国家試験より

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去年の問題ですが、上は環境問題についてで、下は点滴の成分についての詳しい中身を聞く問題です。なかなか幅が広いですね。

そして、こんな問題も。

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(問題)

第110回医師国家試験より
第110回医師国家試験より

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ちょっと字が小さくて読みづらいので解説します。

(解説)

バイクで転倒した19歳の男性が運ばれてきて意識は途切れ途切れだった。血圧が下がり、貧血もある。点滴をしながらおしっこのチューブを入れたら血尿があるので、腎臓からの出血を疑って血を止める処置をしたが血圧が上がらない。そこで、CTの写真を別冊で出して「さて、どうしますか?」という問題です。CTでは腎臓から出血している画像があります。

もし自分が救急外来でこんな患者さんの担当をしたら、これは結構ヒヤリとします。血圧が上がらない、出血は続いているーーー

答えは迷わず大急ぎで手術室へ行き、お腹を開けて止血をすることです。選択肢だとaとなります。この判断が遅いと、19歳男性が死亡する危険性は高くなります。

国家試験にはこのように、極めて実践的な問題も出るのです。実に多様で、あまり簡単な試験とは思えません。

では、なぜ合格率はこれほど高いのでしょうか?他の国家試験である司法試験は2割程度、公認会計士は1割程度の合格率です。

なぜ9割近くも合格する?

これにはいくつかの理由があります。

一つ目には、「受験資格が厳しく受験生のレベルが高いため」があります。医師国家試験を受けるためにはまず大学医学部に入らねばなりません。そしてあまり知られていませんが、試験だらけの6年間のカリキュラムで合格しまくった人が辿り着くのが、「卒業試験」です。医学部は卒業論文ではなく、卒業は試験で認定されます。この卒業試験がべらぼうに難しいことが多く、よく「国家試験より難しい」と言われます。この試験に合格できなければ国家試験を受けられないので、必然的に「国家試験を受けるのは、国家試験に受かりそうな人」になります。

ちなみにm3.comという、医師の多くが登録しているサイトの記事(※1)によると、8923人の入学者数に対して8828人がストレート(6年間)で医師国家試験までたどり着いています。落第した人は1.1%。これに学士入学などもあるでしょうから、多めに見積もってもストレートで卒業できない学生は5%未満でしょう。

そして二つ目は、「医学生はかなり勉強をするから」という理由です。なんだかバカバカしい理由ですが、これも重要な要素です。

筆者は最終学年の大学6年生次の後半8ヶ月の間、平均して1日15時間くらい勉強していました。計算すると3600時間ほどを医師国家試験の勉強に費やしましたが、それでも他の医学生と比較するとかなり少ない方です。私立大学医学部の学生は1年以上前から国家試験勉強を始めている人がほとんどだと思います。そして医師国家試験専用の予備校もいくつかあり、多くの医学生がかなりの額を支払って利用しています。

さらに三つ目には、「合格率が下がると医者が減ってしまうため」という現実的な理由もあります。医師の数は厚生労働省によってかなり厳密にコントロールされています。合格ラインは毎年固定されていないため、これを動かすことで簡単に合格率を調整することができます。

事実、去年の合格ラインは「一般問題は、125点以上/199点、臨床実地問題は、388点以上/594点」でしたが、今年は「一般問題は、128点以上/198点、臨床実地問題は、381点以上/600点」と変わっていました。

医学部の志望校選びの際に、合格率は重視すべきか?

最後に、医師を志す方やその親御さんなどにとってとても切実な問題である、「医学部の志望校選びの際に、合格率は重視すべきか?」という問題。

私立大学では確かに5人に1人落ちる大学もありますが、それでも合格率は80%です。みなと同じように普通に勉強し、普通に対策をとっていれば合格するのです。合格率が低い大学は、その大学の医療レベルが特別低いとか、教育レベルが低いということはまず考えにくいと筆者は考えています。その論理でいけば最高の研究者や教授が揃う東京大学は合格率が一位となるはずですが、実際は21位で合格率は95.5%(現役のみ)です(※1より引用)。理系受験の最高峰である東大理科三類に合格する頭脳の学生も、数人はこの医師国家試験に落ちているのです。

ちなみに私の出身である鹿児島大学は32位の94.4%でした(※1より引用)。これだけの僅差ですから、あまり意味はないように感じます。

終わりに、医学生の皆さんへ

では、国家試験を受けられた医学生・既卒生の皆さん、本当にお疲れ様でした。これからが本当のスタートです。これから学ぶべきことは、試験で学んだことの数倍あります。春休みはしっかり遊んで、リフレッシュしてください。

そして来年試験を受ける皆さん。他の学生と同じように、同じ量を学べば必ず合格します。そして案外試験本番で生きるのが「あの時病院実習でああだったな」という感覚。教科書である患者さんはテキストや予備校の黒板の中ではなく、現実世界にいます。実習をおろそかにせず、最終学年を楽しんでください。

(参考)

※1合格率88.7%、過去10年で最低、2017年医師国試 新卒合格率100%は自治医科大のみ(m3.com 2017年3月17日)