【WELQ後】ネット世界の健康情報はどう変わったか 医師の視点

ネット上の医療の情報は、信じられるものになったのだろうか?(写真:アフロ)

背景

大手IT企業DeNAが運営していたWELQ(ウェルク)という医療情報サイトが、その内容のずさんさなどの理由で閉鎖した。その後のネット上での医療情報はどうなったか。筆者が実際に「腹痛」「風邪」などで検索をし、ヒットした上位サイトの内容を調べた。WELQについての一連の流れは過去記事「ネット上の無責任な医療記事について考える【welqというサイト炎上に】~医師の視点~」を参照されたい。

方法

実際に、医師である筆者がインターネット検索サービス「google」で「腹痛」「頭痛」「吐き気」「風邪」の4つを検索し(2016年12月16日)、それぞれ上位5サイトの信頼性を調べた。筆者のアカウントをログアウトした上で「腹痛」をキーワードにgoogle検索をすると、このような結果が出てきた。

「腹痛」でgoogle検索した
「腹痛」でgoogle検索した

この一つ一つのサイトを閲覧し、信頼性は「書いた人は誰か」「内容の信ぴょう性は高いか」「商品への誘導はあるか」の3項目で採点した。そして上位5サイトの点数を合計し、今のネット検索がどれほど信頼できるかどうかを調べた。採点方法は、「書いた人」は医師で記名があれば2点、医師(記名あり)・製薬会社の監修は1点、医師以外の有資格者と無資格者の記名記事は0.5点、不明0点とした。「内容の信ぴょう性」は、論文や教科書などの引用があり内容は合格であれば1、引用はないが内容が良ければ0.5点、それ以外は0点とした。内容が良いか悪いかは、筆者が独自に判定した。続いて「商品への誘導はあるか」では、記事の内容により商品の購買へ誘導しているかどうか(例えば腹痛の原因は便秘だから当社のお茶を書いましょう、など)をチェックした。誘導のないものは1点、あるものは0点とした。単純な広告は誘導と見なさなかった。

結果

筆者は「腹痛」や「風邪」など、多くの人が検索するだろういくつかのキーワードでgoogle検索を行った。結論から言えば、内容のデタラメなサイトはかなり減り、自社の怪しげな商品に誘導するような記事も少なくなっていた。筆者の印象では「まあまあマシになった」と言えるだろう。

結果は以下のようになった。見やすいように、点数はマル・サンカク・バツにしてある。

googleで検索、筆者調べ (2016.12.16現在)
googleで検索、筆者調べ (2016.12.16現在)

表のように、症状によって少しずつ異なるが、例えば上から2番目の「頭痛」はかなり信頼のおける検索結果となった。残念ながらWELQ問題が指摘される以前の検索結果と比較ができないのだが、筆者の記憶では、以前に同じ検討を行ったらほぼ全てがバツであっただろう。それを考えるとかなりの改善だ。

考察

以下の4点について考察する。

・ステマ記事はほぼ無くなっていた

・まだまだ無記名の記事は多い

・製薬会社のサイトが比較的上位に上がってきた

・個人医師や鍼灸師のサイトが上位に

・ステマ記事はほぼ無くなっていた

今回のチェックでは、ステマ記事(ステルスマーケティング記事、広告でないように見せかけて実際は広告である記事)はほとんど無くなっていた。以前は散見されたことを考えると、改善があったと判断して良いだろう。

・まだまだ無記名の記事は多い

しかし、まだ「誰が書いたかわからない」サイトは多い。記事の執筆者について、今回の検討では暫定的に「医師である」ことを高得点としたが、筆者は「医療記事は医師だけが書くべき」とは考えない。医療知識を持ち学んだ他領域の専門家やジャーナリストなど、幅広い書き手がいた方が情報は正確になるし、記事はわかりやすくなるし、健全な状態である。

・製薬会社のサイトが比較的上位に上がってきた

いわゆるキュレーションサイトがいなくなったことで、製薬会社のサイトが上位に上がってきた。製薬会社のサイトは専門家によるチェックを厳密にしているため、情報の信頼度は高い。そして、それほど自社の製品(=くすり)への誘導が強くないのも製薬会社のサイトの特徴である。

・個人医師や鍼灸師のサイトが上位に

気になるのはこのあたりだ。個人医師のクリニックは記名記事で、医師は医師としての責任と経営者としての責任の双方を持っているためそれほど誤ったことが書かれることは少ない(ゼロではない)。が、医師・看護師以外の資格(鍼灸師や整体師など)で書かれている情報は時として東洋医学にのみ偏っていたり独自の理論を展開していることがあり、極端なことがある。こちらには注意が必要である。

本検討の限界

本記事での検討はあくまで筆者個人が作成した採点方法に基づき、筆者一人が採点をした結果である。より確かな記事とするためには、広く認められた手法で、複数の医師などの専門家により行われる必要がある。

まとめ

WELQ問題後、キュレーションサイトは急速にインターネットの世界から姿を消した。その後のネットに存在する医療情報について、医師の視点から調べた。今後、定期的にチェックするようなシステムが必要だと考える。

※筆者とgoogle社や製薬会社、サイト運営会社に利益相反関係はない。

※採点方法について

検索結果の一番初めに出てくる広告サイトは検討に入れなかった。

また、医師のインタビューは医師の執筆とした。同じサイトの別ページが検索結果の5位以内に2つ以上出てきた時は、そのまま1つずつ採点した。wikipediaの執筆者は不明とした。

また、採点結果の詳しい点数はこちら。「書いた人」のみ10点満点、他の2項目は5点満点である。

採点結果の表
採点結果の表

(追記2016.12.17)

記事中に「鍼灸師や整体師など」という記載がありますが、正確な国家資格の名称は「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」です。