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もはや手遅れか? 4連戦で露呈した森保ジャパンの深刻すぎる問題【チュニジア戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

不安材料だけが残った6月の4試合

 4連戦最後のチュニジア戦を、0-3の敗戦で終えた森保ジャパン。対戦相手のチュニジアは、この4試合のなかで最も本気度の高いパフォーマンスを見せたチームだっただけに、W杯本大会を見据えた場合、日本にとっては2戦目のブラジル戦以上に深刻な敗戦となった。

 とりわけ深刻に見えたのは、0-3という結果ではなく、そこで浮き彫りになった現在のチーム状況だ。

「今回の代表活動では、カタールW杯に向けて、ベースをより強固に浸透させていく部分と、選択肢を増やしていくために、選手をより多く起用していきながらパフォーマンスを見極めていく目的で活動している」

 これは、チュニジア戦の前日会見における森保監督のコメントだが、実際に6月の4試合を振り返ってみると、このコメントに沿った采配に終始した印象を受ける。

 要するに、W杯本大会に向けたチームとしての戦い方のブラッシュアップ作業ではなく、現在はまだその前段階。

 具体的に言えば、基本布陣の4-3-3に、いろいろな選手の組み合わせを試してみて、それぞれにどのような変化が見られるかを見極めたうえで、W杯メンバーの最終選考と本番用の戦い方を探り出す場として、この4試合を使ったことになる。

 では、森保監督はこの4連戦を終え、本大会用の選択肢を増やすことができたのか? 戦況に応じた効果的オプションを見出せたのか?

 おそらく、明確な答えは見つけられなかったのではないだろうか。

 確かにパラグアイ戦では、堂安と三笘の両ウイングが幅をとり、インサイドハーフに鎌田が入ったことで、それまでになかった攻撃パターンを見ることはできた。しかし、本番で戦うドイツ、コスタリカ、スペインを相手に、同じことができるとは到底思えない。

 それは、同じ4-1で勝利したガーナ戦にも言えること。そもそも試合の強度、試合に臨む相手の姿勢やコンディション、あるいは戦い方が異なるため、そこで得られた情報はほとんど本番では通用しないと考えるのが妥当。事実、相手が本番さながらの強度で挑んでくれたチュニジア戦でさえ、そのことは実証されてしまった。

 つまり、この4試合で試した選手の組み合わせは、絵に描いた餅でしかない。そう考える方が現実的だ。

 それに、今回の活動には、冨安、酒井、守田、大迫(勇)といった主軸が不在だった。もし主軸4人が戦列に復帰した場合、森保監督が彼らを控えに回す可能性は限りなく低いと見るのが妥当で、そうなると、今回試した選手の組み合わせによって起こった攻撃面の現象を、本大会で再現させるのはほとんど不可能と見ていい。

 それに輪をかけるようなもうひとつの不安要素は、森保監督が今回の活動の目的としていた「ベースをより強固に浸透させていく部分」だ。

 この4試合を通してはっきり見て取れた本番用の戦い方として、日本のビルドアップ時にハイプレスをしかけられたとき、安易にクリアして回避せず、ボールをつなぎながらプレスをかい潜って敵陣まで前進することがあげられる。

 これは今回のシリーズで何度も森保監督が口にしていたことだが、しかし実際にこれを試せたのは、ハイプレスをしかけてきたブラジル戦しかなかった。

 しかもその試合で浮き彫りになったのは、プレスをかい潜ろうとしては引っかけてしまい、それを起点に何度もショートカウンターを浴び、ピンチを招いたことだった。そうなった場合の対策も、何も用意されていなかった。

 森保監督は、この戦い方については個々がレベルアップすること、ビルドアップの立ち位置を修正すること、選手の予測力を上げることで、問題を解決できると目論んでいるようだが、残された時間で個々のレベルアップがどこまで期待できるのか、また9月のテストマッチ2試合だけで本番に間に合わせることができるのか、大いに疑問が残る。

 仮に9月にプレス回避のブラッシュアップを試せる相手と戦えなかったとすれば、選手がこの戦い方に確信を持てないまま、初戦のドイツ戦に挑まなければならなくなる。ぶっつけ本番で、未完成なリスクの高い戦い方でドイツに挑めば、どういった結果が待っているのか。想像するだけで寒気がするとは、まさにこのことだ。

 本来なら、今回の4試合は攻守両面にわたる明確な戦略とそのための戦術を定めるために活用すべきだった。そこで見えた課題、修正点を、9月の2試合で再確認したうえで、本番に挑むというのが順当な準備、目標達成のアプローチだと思われる。

 ドイツにしてもスペインにしても、あるいは今回対戦したチュニジアにしても、多くのW杯出場チームは、すでに本大会用の戦い方は定まっていて、残りの時間はそのブラッシュアップと修正作業に使うという段階に入っている。

 少なくとも、ネーションズリーグのドイツやスペインの戦いぶりを見るにつけ、日本は格上の彼らから、一歩も二歩も後れをとっていると言わざるを得ない。そんな状況で、本当にW杯本大会でグループリーグ突破は果たせるのか。

 チュニジア戦を終えてはっきりしたのは、そんな日本のチーム状況だった。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】シュミット・ダニエル=5.0点

2失点目は譲り合いに参加し、3失点目は正面からミドルを決められた。持ち味であるはずのビルドアップでもキック精度を欠くなどW杯メンバー入りから後退するパフォーマンス。

【右SB】長友佑都(82分途中交代)=5.0点

4分のCKの守備ではハイボールに敗れ、ビルドアップ時にはボールの出口になれず。攻撃面では伊東、堂安との絡みが少なく、82分のプレーで1本もクロスを供給できなかった。

【右CB】板倉滉=5.5点

2失点目は吉田、シュミットとの譲り合いに参加。ただ、それ以外に大きなミスはなく、相手のプレスを回避する持ち上がりのドリブルを見せるなど、冨安不在を感じさせなかった。

【左CB】吉田麻也=4.5点

長いシーズンの疲労か、4試合連続先発の疲労か、過去最悪レベルのパフォーマンスだった。PKを与えて先制点を献上し、全3失点に関与してチーム全体に打撃を与えてしまった。

【左SB】伊藤洋輝=5.5点

不用意なチャレンジから背後をとられ、1失点目の原因を作った。試合を重ねるごとに自信をつけていることは間違いないが、SBとしてプレーするには経験が不足。やむを得ない。

【アンカー】遠藤航=5.0点

吉田同様、この4連戦で出場時間が長すぎた。ボールロストとミスパスが目立ち、トップフォーム時とはほど遠いパフォーマンスを見せた。疲労回復、精神的リフレッシュが必要。

【右インサイドハーフ】原口元気(HT途中交代)=5.5点

監督からの明確な指示がないなか、攻撃的に振る舞うか守備的に振る舞うか、周囲とのバランスを含めて中途半端なプレーを強いられた。攻守両面で効果的なプレーを見せられず。

【左インサイドハーフ】鎌田大地(60分途中交代)=5.5点

35分の決定機で痛恨の空振り。試合展開に大きな影響を与えた。相手の守備ブロックに穴を開けるためのアイデアが不足し、パラグアイ戦のような躍動感を見せられずに終わった。

【右ウイング】伊東純也(71分途中交代)=5.5点

35分に抜群のクロスボールを供給して決定機を演出。攻撃が停滞するなか、単独で右サイドをこじ開けるプレーを見せたが、決定的な仕事はできず。後半途中でベンチに下がった。

【左ウイング】南野拓実(71分途中交代)=5.0点

立ち上がりに2度危険なエリアに進入し、クロス供給からチャンスを演出したが、それ以外は効果的なプレーがなかった。トップ下でも不発に終わり、何もできずに途中交代した。

【CF】浅野拓磨(60分途中交代)=5.0点

58分に伊東のクロスをオーバーヘッドで狙うも、ゴールならず。持ち味のスピードを生かしたプレーもなく、下がってボールを収めたのも1度だけ。厳しい現実を突きつけられた。

【MF】田中碧(HT途中出場)=5.5点

後半開始から原口に代わって右インサイドハーフでプレー、60分以降はダブルボランチの一角でプレー。気の利いたポジショニングは見られたが、攻撃に変化をつけられなかった。

【FW】古橋亨梧(60分途中出場)=5.5点

浅野に代わって後半途中から1トップでプレー。強引に狙ったシュートが1本あったが、この試合でも特徴を出せなかった。チームのなかで持ち味を発揮する方法を見出したい。

【MF】三笘薫(60分途中出場)=5.5点

鎌田に代わって後半途中から左ウイングでプレー。孤立した状態で難しいドリブル突破を強いられたが、クロス供給との使い分けで攻撃に変化をつけた。ただ、3失点目に関与した。

【MF】堂安律(71分途中出場)=5.5点

伊東に代わって後半途中から右ウイングでプレー。斜めからくさびのパスを使って久保との絡みを試みたが、打開するまでには至らず。シュートも記録できず、存在感がなかった。

【MF】久保建英(71分途中出場)=5.5点

南野に代わって後半途中から1トップ下でプレー。W杯メンバー入りをかけて積極的に攻撃に絡もうとはしたが、アクセントになれず。命運をかけた直接FKでもシュートは枠外に。

DF】山根視来(82分途中出場)=採点なし

長友に代わって後半途中から右サイドバックでプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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