11月の親善試合に持ち越しとなっている森保ジャパンの2つの問題とは? 【コートジボワール戦分析】

(写真:ロイター/アフロ)

3バックではなく定番の4バックを採用

 森保ジャパンのオランダ合宿2戦目のコートジボワール戦。日本は試合終了間際に得たフリーキックのチャンスで、柴崎岳が蹴ったボールを88分から出場した植田直通がヘディングで決め、日本が1-0で勝利を収めた。

「試合の立ち上がりも悪くなかったし、とくに後半になってからは我々のペースで試合が進んでいたので、アディショナルタイムにあのような形でセットプレーから失点してしまったのは、とてもフラストレーションを感じる」

 試合後の会見で、最後のワンプレーを悔やんだのはコートジボワール率いるフランス人パトリス・ボーメル監督だった。

 一方、最後に切ったカードで勝利を手にした森保一監督は、してやったり。「100%ではないが、準備していたことをある程度できたと思う。チャレンジしながら結果を出す部分で、選手たちがすばらしいハードワークを見せてくれた」と、上々の手応えをつかんだ様子だった。

 とはいえ、今回の2試合はあくまでもフレンドリーマッチだ。結果を重視するW杯予選と違い、内容を重視すべきフレンドリーマッチの鉄則に従えば、土壇場でつかんだ勝利とは別に、冷静に試合の中身を振り返る必要があるだろう。

 特に来年以降のW杯アジア予選のスケジュールが未定であることを考えると、おそらくフレンドリーマッチを組めるのは年内に限られる可能性は高い。つまり、よりフレンドリーマッチの重要度が増しているという現状も忘れてはいけない。

 

 そんな中で迎えたコートジボワール戦。森保監督は、カメルーン戦から7人を入れ替えて、以下の11人で試合に臨んでいる。

 GKにシュミット・ダニエル、DFは室屋成、吉田麻也、冨安健洋、中山雄太、ダブルボランチは柴崎岳、遠藤航、2列目は右から伊東純也、鎌田大地、久保建英、そして1トップには予定どおり鈴木武蔵が配置された。

 注目のシステムについては、前日会見で森保監督が「システムはコートジボワール戦でも3バック、4バックというかたちでトライし、試合の流れを見て最終的に判断したいと思う」と語っていたこともあり、カメルーン戦の後半に採用した3-4-2-1も予想された。

 しかし、蓋を開けてみれば定番の4-2-3-1。現段階において、まだA代表の基本布陣は4-2-3-1で、3バックはオプションのひとつという指揮官の考えに変わりがないことが改めて明確になった格好だ。

 もうひとつの注目は、カメルーン戦でボランチを務めた中山がこの試合では左SBに抜てきされた点だ。カメルーン戦では、安西が左SBに起用されたものの後半開始早々に途中交代を強いられ、システムを3-4-2-1に変更した経緯がある。

 それだけに、中山の起用が長友不在時の左SB問題に対する解決策になるかどうかは、今後のことを考えても重要なポイントになった。

 対するコートジボワールのボーメル監督が採用したのは、10月9日に行なわれたベルギー戦と同じ3-4-3。

 クリスタル・パレスのFWウィルフレッド・ザハが不在だったものの、スタメンは前線の両サイドにニコラ・ペペ(アーセナル)とジェルビーニョ(パルマ)、両ウイングバックにはセルジュ・オーリエ(トッテナム)とマクスウェル・コルネ(リヨン)、ダブルボランチにはフランク・ケシエ(ミラン)とアビブ・マイガ(メス)、そして3バックの中央にはエリック・バイリー(マンチェスター・ユナイテッド)が配置され、現有戦力のほぼベストメンバーがスタメンに名を連ねた。

柴崎のポジションが高くなった理由

 試合は開始から終了まで両チームがほぼ互角に渡り合う展開となったが、試合の流れを変えるきっかけとなったのは、前半39分にコートジボワールが行なった選手交代だった。

 この試合を大きく2つに分けるとすれば、そこが分岐点になる。

 それまで攻守両面にわたって周囲と絡めずにいた1トップのジュマ・サイードをベンチに下げ、代わりにクリスティアン・クアメを起用。同時に、3バックの右を担当していたオディロン・コッスヌをアンカーポジションに移動させ、システムを4-3-3に変更したボーメル監督の采配である。

 この交代策について、ボーメル監督は次のように説明している。

「日本の(前線の)選手がライン間に入ってきて、我々のダブルボランチが引かなくてはいけなくなった。そこで、コッスヌをアンカーの位置に上げることで、ボールをうまく配給できるように修正した。

 その結果、攻撃的になり、とくに後半になってからはうまく攻撃を組み立てられるようになったのはよかった。ただ少し攻撃的になりすぎた分、日本のカウンターを受けるシーンがいくつかあったのは少し気になったところだ」

 その言葉どおり、この試合の日本は、立ち上がりこそダブルボランチを経由したビルドアップができなかったものの、次第に相手のダブルボランチがポジションを下げ始めたことにより、比較的プレッシャーが緩んだなかでボールを受けられるように変化した。

 それにより、攻撃の起点となる柴崎がカメルーン戦よりも高い位置でプレーし、11分には敵陣で2度スルーパスを配給。そのうち1本は鎌田に通り、32分には鈴木とのパス交換から右サイドに抜け出し、自らクロスボールを送っている(そのクロスは誰にも合わず、失敗に終わったが)。

 また、攻撃面ではとくに右サイド攻撃が際立っていた。開始2分の久保のシュートにつながった鈴木のクロスを皮切りに、伊東が3本、室屋が2本、そして前述の柴崎が1本と、前半だけで計10本を記録。ただし、成功したのは2分の鈴木のクロスのみで、それ以外はすべて失敗に終わっている。

 ちなみに、前半の左サイドからのクロスは3本(久保が2本、中山が1本)で、そのうち44分の中山のクロスが鎌田のシュートにつながった。

 もっとも、森保監督が求めているような連動性のある攻撃を見せたシーンはなく、結局前半で記録したシュートは久保と鎌田の2本のみ。1トップが大迫勇也ではなく、裏への抜け出しを得意とする鈴木だったこともあり、敵陣でくさびの縦パスを試みたのは柴崎の2本にとどまっている(2本とも成功)。

 ただし、これは1トップに永井謙佑(FC東京)を起用した時と同じ現象であり、ある程度は想定していたとおりと言えるだろう。

 いずれにせよ、日本の攻撃からはゴールの匂いは感じられず、むしろコートジボワールが自陣でボールをキープする時間のほうが長かった。

 そういう意味では、システム変更までの時間帯においても、中盤から最終ラインの間で日本の攻撃を跳ね返したコートジボワールの守備のクオリティを称えるべきかもしれない。

日本が見せた効果的なカウンター

 そして試合は、コートジボワールが4-3-3にしてから変化が起こり始め、後半はコートジボワールのリズムで試合が進行した。

 とくにコートジボワールが2枚目の交代カード(マイガOUT、アクパ・アクプロIN)を切った67分までは、コートジボワールがボールを握るなか、日本は自陣で守りながらカウンターで攻撃を仕掛けるという、ボーメル監督のコメントにほぼ一致する展開がつづいた。

 そのなかで日本が最も危険なシーンを迎えたのは、50分。久保のミスから相手にボールを奪われると、バイリー、マイガ、ジェルビーニョとつなげられ、右サイドのペペにドリブルによる進入を許す。さらにボックス内でペペからクアメにパスをつなげられ、クアメが落としたボールをジェルビーニョがゴール前に折り返し、それをケシエがシュートしたシーンだ。

 シュートはバーの上に外れたので救われたが、中盤でボールを奪われたあとに相手の連動性のある攻撃を受けたそのシーンは、皮肉にも本来森保ジャパンが目指している攻撃のかたちだった。

 それでも、日本がコートジボワールにゴールを脅かされたのは、その直前の48分にジェルビーニョに角度のないところからシュートされたシーンと、63分に柴崎が頭でバックパスしたボールをペペに奪われ、そのままシュートされたシーンくらいで、それ以外に大きなピンチはなかったのも事実だった。

 相手にボールをキープされても、日本の守備陣が個で勝負を仕掛けるコートジボワールの両ウイングに対してしっかりと対応。個人対個人の戦いで負けず、吉田と冨安のCBを中心とするディフェンスラインが崩壊することはなかった。

 これは、今回の2試合で森保ジャパンが手にした最大の収穫と言える。

 逆に、日本が効果的なカウンターを見せたのは58分、62分、そして71分。

 まず58分は、柴崎のフィードを相手がクリアしたセカンドボールに対し、再び柴崎が勢いよく前に出て回収。そのまま右の伊東に預けると、伊東が柴崎とのワンツーパスで抜け出し、中央の鎌田へパス。鎌田は近寄る相手に対して身体の向きを変えてトラップし、ドリブルで前進した後にシュートを放った速攻のシーンだ。

 62分は、センターサークル内で伊東のスライディングでボールを奪取したところから始まったカウンターで、こぼれたボールを拾った遠藤が素早く前方の鎌田に預け、鎌田がドリブルで前進。鎌田は左でフリーになっていた途中出場の南野にパスすると、南野がクロスを入れ、相手ボックス手前でフリーの伊東がシュートを狙ったシーンである。

 もうひとつゴールに迫った71分のシーンでは、南野のロングパスを受けた鈴木が右サイドでボールをキープし、鎌田につないだ後にゴール前に走った南野がパスを受けてシュート。ゴールには至らなかったが、これもフィニッシュにつながったカウンター攻撃のひとつだった。

次回に持ち越しとなった2つの問題

 一方、日本が記録した後半のクロスは前半と同じ10本で、そのうち8本が右サイドからのクロスだったことを考えると、試合を通して攻撃が右サイドに偏っていたことは否めない。

 これは、左SBの中山が本職ではなかったため、多くの攻撃参加が望めなかったことが原因と考えられる。実際、中山は後半に2本のクロスを入れたが、相手の素早い寄せに遭っていずれもブロックされている。

 もちろん中山は、守備面では上々の内容だったので及第点のパフォーマンスと言えるが、今回の2試合で4バックの左SBを務めた安西も中山も、長友不在時の解決策にならなかったという点は否めない。この問題は、次回に持ち越しとなった。

 それは、ダブルボランチを抑えられた時のビルドアップの問題についても同様だ。森保監督が依然として明確な回答を提示できなかったのも、コートジボワール戦を終えて押さえておくべきポイントと言えるだろう。

 カメルーン戦では後半から3バックを使った森保監督だったが、この試合では苦しいなかでも最後まで4バックを貫いた。

 その理由について森保監督は「4バックを維持したほうが勝つ確率が高いと判断した」と語ったが、その言葉からは先々のことを考えてテストするよりも、目の前の勝利を優先した姿勢がうかがえる。

 しかしながら、せっかくカメルーン戦で試した3バックに解決策の糸口があったことを考えると、相手にペースを握られた後半の早いタイミングでシステム変更に踏み切る策はあって然るべきだった。

 しかも、それが左SB問題の解決策にもつながるとしたら、限られた年内のフレンドリーマッチにおいて積極的に3バックを実験し、そのなかで課題を見つけてブラッシュアップさせておくべきだろう。そうでなければ、W杯アジア最終予選を戦う時、オプションとして3バックを使いたくても使えない状況に陥ってしまうのは、火を見るより明らかだ。

 唯一のオプションを絵に描いた餅にしないためにも、11月のフレンドリーマッチ(パナマ戦、メキシコ戦)では目先の勝利ではなく、来年以降の本番を考えた采配を期待したい。

(集英社 Web Sportiva 10月16日掲載・加筆訂正)