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問題解決のための実験よりも結果を優先した森保采配に疑問あり【コートジボワール戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
コートジボワールの右WBオーリエと競り合う日本の久保建英(写真:ロイター/アフロ)

森保ジャパンに残された2つの課題

 ヨーロッパ組だけで編成された森保ジャパンのオランダ合宿2戦目。日本は、コートジボワールを相手に後半アディショナルタイムのフリーキックから植田がヘディングシュートを決め、1-0で勝利を収めた。

 試合終了間際のゴールで勝利を収めたことにより好印象が残った試合ではあるが、フレンドリーマッチで大事なのは結果よりも内容だ。今後のことを考えても、この試合で見えた収穫と課題を客観的に見ておく必要がある。

 まず、最大の収穫はカメルーン戦に続いてほぼパーフェクトな守備を見せた吉田&冨安のセンターバックコンビの存在だ。質の高いプレーを見せた強豪を相手に、日本が2試合連続クリーンシートで終えたことは十分評価に値する。その最大の要因が、彼ら2人を中心とした隙のないディフェンスにあったことに疑いの余地はない。

 今回のコートジボワール戦の後半にしても、相手にボールを握られ苦しい状況が続いたにもかかわらず、日本の守備がほころびを見せたシーンは少なく、後半立ち上がりのシーン以外にピンチと言えるようなピンチはなかった。

 もちろん前から守備をしてハーフウェイライン付近でボールを奪いたいというのが森保ジャパンの狙いではあるが、それも相手が強ければそれは絵に描いた餅。状況に応じた対応をして、最後まで安定した守備を保てたことは自信になったはずだ。

 攻撃面では、伊東が右サイド攻撃を活性化させたこと、1トップ下の鎌田が時間の経過とともに実力を発揮したことが、収穫のひとつだった。特に鎌田はライン間でボールを受けるだけでなく、サイドに流れてチャンスを作り、なおかつ自らシュートを狙って存在感を示した。

 逆に課題は、主に攻撃面にあった。たとえば、この試合では左SBに守備重視の中山が入ったこともあり、攻撃が極端に右サイドに偏ってしまったことが修正点になる。中山の守備は及第点だったが、そもそも室屋と同じレベルの攻撃参加を期待するのは酷な話。

 つまり、長友不在時の左SB問題は、この2試合を終えても残されたままとなった。

 また、相手が39分の選手交代をきっかけに、布陣を3-4-2-1から4-3-3に変更した後の対応にも課題が残った。カメルーン戦同様、ビルドアップの際に日本のダブルボランチが圧力をかけられた場合の回避方法は、依然として未解決。

 それにより、後半は日本がボールを失う回数が増えてしまい、コートジボワールのボール保持率が上昇するという現象が起きていた。

 残念だったのは、目に見えるその現象が起こった時に、「日本に勝利を届けたい」という強い気持ちを、強化のためのテストより優先した森保監督のベンチワークだ。

 カメルーン戦のハーフタイムに断行した3バックへの布陣変更は、ダブルボランチが封じられた時、そして左SB問題を解決するための糸口になっていたはず。にもかかわらず、この試合では同じような事象が起きながら、その策を封印し、以前のような保守的な采配に終始してしまった印象は拭えない。

 もちろん勝負ごとは勝利するに越したことはない。しかし、これは強化のためのフレンドリーマッチ。結果よりも内容を重視する采配が指揮官に求められて然るべきだろう。

 特に今回のような質の高い相手とのフレンドリーマッチは極めて貴重な機会であり、だからこそ来年から始まるW杯予選のことを考えて、問題を解決するための試みを積極的に行うべきだった。

 このコロナ禍の中、来年以降は日程的にフレンドリーマッチを組むことがほぼ不可能になることを考えればなおさらだ。

 3バックがすべてを解決する魔法の杖だとは思わないが、しかし少しでもその精度を高めておかなければ、本番で使えるオプションにはなり得ない。少なくとも、カメルーン戦で一定の効果を示したとはいえ、まだ森保ジャパンの3バックの実験回数は少なく、完全に機能するまでには時間を要することは間違いない。

 いま大切なことは、目先の勝利ではなく最終予選本番に向けた強化だ。残された時間が少ない中で、限られたフレンドリーマッチをもっと有効に活用する必要がある。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】シュミットダニエル=6.0点

後半開始早々の48分にジェルビーニョのシュートを落ち着いてセーブした。ビルドアップ時には権田との違いを見せた他、最後まで安定感のあるパフォーマンスで危なげなかった。

【右SB】室屋成(88分途中交代)=6.0点

試合序盤は攻め上がってクロスを入れるなど伊東とともに右サイドを活性化させた。後半は守備に追われて攻撃参加が影を潜め、守備に追われた。攻守ともに及第点の出来だった。

【右CB】吉田麻也=7.0点

ジェルビーニョのドリブルに対して冷静に対処するなど、カメルーン戦に続くハイパフォーマンスだった。冨安とのコンビネーションも上々で、DFラインを安定化させていた。

【左CB】冨安健洋=7.0点

判断よく前後左右に素早く動き、1.5人分の仕事量をこなした。ペペを抑えるなど1対1の強さを披露し、左サイドのカバーリングも怠らず。吉田とともに陰のMOM的な活躍ぶり。

【左SB】中山雄太=5.5点

前戦のボランチに続きこの試合では左SBでプレーし、ポリバレントぶりを証明した。守備面は合格だったが、左サイドの攻撃を活性化させるまでは望めなかったため、マイナス0.5。

【右ボランチ】柴崎岳=5.5点

前戦よりも配給力は上がったが、決定的な仕事が最後のFKだけでは物足りない。バックパスでミスを犯してピンチを招くなど、まだまだトップフォームからはほど遠い出来だった。

【左ボランチ】遠藤航=6.0点

身体能力の高い相手に対しても球際の強さを発揮するなど、DFライン前の守備で大きく貢献した。柴崎との関係性も上々だが、パス供給を含めた攻撃面の貢献度が物足りなかった。

【右ウイング】伊東純也(85分途中交代)=5.5点

自らの特長を生かしたプレーで前半から積極的にクロスを入れたが、その成功率は高くなく、後半は単調になった印象。課題は残したが、今回の2連戦で序列を上げた可能性大。

【左ウイング】久保建英(61分途中交代)=5.5点

相手SBのマークで守備に戻る作業をこなした他、開始早々のシュートや33分のクロスなど見せ場はあった。ただ、トラップやパスでミスするシーンも目立ち、存在感は薄かった。

【トップ下】鎌田大地=6.0点

試合序盤はボールを受けられなかったが、時間の経過とともにスペースを見つけてトップ下で存在感を発揮した。44分、58分には好機を迎えたが、いずれも決められずに終わった。

【CF】鈴木武蔵(73分途中交代)=5.0点

大迫とのキャラの違いを見せたかったが、相手DFのマークが厳しく力を発揮できず。裏への抜け出しで1度チャンスを迎えたが、シュートを打てずに終わるなど課題が残された。

【MF】南野拓実(61分途中出場)=5.5点

久保に代わって途中出場し、左ウイングでプレー。原口投入後はCFに移動して原口のシュートを演出するなど前線を活性化させることは出来た。71分のシュートは決めたかった。

【MF】原口元気(73分途中出場)=5.5点

鈴木に代わって途中出場し、左ウイングでプレーした。出場直後にシュートを放った後は攻撃面での存在感が薄かったが、相変わらず献身的に動き回って守備面では貢献していた。

【MF】堂安律(85分途中出場)=採点なし

伊東に代わって途中出場。出場時間が短く採点不能。

【DF】植田直通(88分途中出場)=6.5

室屋に代わって途中出場。主に空中戦対策として右SBに投入されるも、アディショナルタイムの柴崎のFKから決勝点となるヘディングシュートを決め、短時間で結果を出した。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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