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世界最高額は年間約4180億円! サッカー欧州5大リーグのテレビ放映権料の最新データを詳しく紹介

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

無観客でもリーグ戦を再開する理由

 ヨーロッパサッカー界はドイツのブンデスリーガの再開を受け、イングランドのプレミアリーグ、スペインのラ・リーガ、イタリアのセリエAもそれに追随すべく、目前に迫るシーズン再開に向けた準備を加速させている。

 もちろん、いずれも「無観客」が大原則。すでに再開しているブンデスリーガがそうであるように、観客不在のなかで行われるサッカーの試合は見る者に味気なさを感じさせる点は否めず、実際、ドイツではサポーターから反対の声も上がっている。

 とはいえ、それでも各リーグは無観客でのシーズン再開を急がなければならない事情がある。なぜなら、彼らの重要な財政基盤となっているテレビ放映権収入を巡って、各ライツホルダーからのプレッシャーが強まったからだ。

 英国のBBCが「仮に無観客でプレミアリーグを再開できた場合でも、プレミアリーグのクラブ側はライツホルダーに対して計約3億4000万ポンド(約446億円)の放映権料の払い戻しが要求されている」と報じたことは、その一例と言っていいだろう。

 イタリアの通信社も「ライツホルダーが(セリエAに対し)今季の分割払いの最終支払い額にあたる2億2000万ユーロ(約255億円)の支払いを停止した」ことを報じている。

 もし、このままシーズンを再開できなければ、それによって各クラブが被る経済的ダメージは計り知れない。テレビ放映権収入を失うことで、多くのクラブが経営破綻する。健康のリスクを冒してまで、彼らがシーズン再開に突き進まなければならない理由はそこにある。

 もちろん、彼らにプレッシャーをかけるライツホルダーたちも、多額の資金を投じているだけに必死だ。

世界一のプレミアは年間約4180億円

 では、そもそも現在5大リーグはどれほど高額なテレビ放映権収入を得ているのか? そんな素朴な疑問に答えるべく、UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)が公表しているレポートから、2019−2020シーズンにおけるヨーロッパ5大リーグのテレビ放映権収入の現状について整理してみる。

 まず、世界で最も高額なテレビ放映権料とされるプレミアリーグは、スカイスポーツ、BTスポーツ、アマゾンが各契約条件に従ってライブ放送している国内分について、今季から3年総額55億3100万ユーロ(約6410億円)で契約。

 さらに、国外分については3年総額51億2700万ユーロ(約5950億円)で販売契約を結んでおり、今シーズン(2019−2020)だけでも国内外合わせて36億200万円ユーロ(約4180億円)ものテレビ放映権収入を得ているのだ(2020−2021以降は年間36億3500万ユーロ=約4219億円)。

 その結果、たとえばハダーズフィールドのような地方の小さなクラブでも、年間約1億2000万ユーロ(約139億円/2018年)ものテレビ放映権収入を手にしており、実に総収入の88%を占めている。それが逆に、今回の危機ではボトルネックになるという弊害が露呈した。

 この割合を50%以下に抑えているクラブは、いわゆる「トップ6」のクラブのみ。エバートンでさえ69%に及んでいるのだから、いかにテレビ放映権収入が各クラブの生命線になっているかがわかる。

 ちなみに、テレビ放映権収入世界1位を誇るマンチェスター・ユナイテッドは年間1億8700万ユーロ(約217億円)を手にしていながら、総収入に対してそれが占める割合は28%にとどまっている。

2位ラ・リーガは年間約2378億円

 一方、世界で2番目のテレビ放映権料を誇るスペインのラ・リーガは、モビスター・ラ・リーガとGOLがライブ放送している国内分を、今季から3年総額34億5500万ユーロ(約4010億円)で契約。さらに国外分については、今季から5年総額44億8500万ユーロ(約5205億円)という大型契約を結んでいる。

 これにより、2019−2020シーズンの年間総額としては、国内外合わせて20億4900万ユーロ(約2378億円)のテレビ放映権収入を計上。世界1位のプレミアリーグには年間1800億円ほど及ばないものの、今回の契約以前の2018−2019シーズンの年間総額が国内外合わせて18億800万ユーロ(約2098億円)だったことを考えると、年間約280億円も増加したことになる。

 イタリアのセリエAは、スカイスポーツとDAZNがライブ放送する国内分を2018−2019シーズンから3年総額29億1900万ユーロ(約3388億円)、国外分を10億2000万ユーロ(約1184億円)で契約。これにより、2020−2021シーズンまでは年間総額13億1300万ユーロ(約1524億円)のテレビ放映権収入が担保された。

 また、2021−2022シーズン以降の契約についても現在スペインのエージェントのメディア・プロ社と交渉中。昨年12月には「3年総額で25%増という大型契約に近づいている」と報じられていたが、今回のコロナ禍によってその交渉は難航することが予想される。

急上昇中のブンデスは年間約1671億円

 2017−2018シーズンからのテレビ放映権の新契約でイタリアを追い抜いたドイツのブンデスリーガは、スカイスポーツとDAZNがライブ放送する国内分を4年総額46億4000万ユーロ(約5385億円)、国外分を2018−2019シーズンから3年総額8億4000万ユーロ(約975億円)で契約。その結果、リーグとして手にする2018−2019シーズンの年間総額は14億4000万ユーロ(約1671億円)を計上した。

 前回の契約では、たとえば最終年にあたる2016−2017シーズンの年間総額が7億9400万ユーロ(約922億円)だったので、約181%増という驚異的な伸びを記録したことになる。リーグ戦が打ち切りになれば「複数クラブの経営破綻が濃厚」と報じられていたブンデスリーガだけに、たとえ無観客試合でもシーズンを完了させる意味は大きい。

 対照的に、早い段階でシーズンの打ち切りを決めたフランスのリーグアンは、そのほかの4リーグとは事情が異なっている。

 現在カナル・プリュスとBeINスポーツがライブ放送する国内分を4年総額29億5200万ユーロ(3426億円)、2年前まで国内パッケージに含まれていた国外分については新たに2018−2019シーズンから6年総額4億8000万ユーロ(約557億円)で契約。これにより、2019−2020シーズンの年間総額は昨シーズンと同様の8億1800万ユーロ(約949億円)だった。

 しかし、フランスではすでに来シーズン(2020−2021)から国内分の4年総額46億800万ユーロ(約5348億円)という大型契約を結んでいた。そのため、来季のテレビ放映権収入は年間総額12億3200万ユーロ(約1430億円)にジャンプアップする。

 つまり、今季に比べて約151%の増収が見込まれていたことが、早い段階でのシーズン打ち切り決定に大きく影響したと言える。今季の残り試合を消化できないことによる損失よりも、実入りの大きい来季を完全な形で開幕することを優先したわけだ。

 いずれにしても、各リーグのシーズン再開は、クラブの生命線となっているテレビ放映権料収入が大きく関わっていることは間違いない。そういう意味でも、1990年代後半から右肩上がりで上昇し続けてきたテレビ放映権料が、今回のコロナ危機後にどのような変化を見せるのかは注目に値する。

(集英社 Web Sportiva 5月17日掲載・加筆訂正)

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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