ヨーロッパと日本のサッカークラブの人件費トップ10は? 経済危機に直面するクラブの財政事情とその違い

(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

欧州のクラブが減給交渉を続ける背景

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、リーグ戦などあらゆる興行がストップした現在のサッカー界は、かつて経験したことのない経済危機が到来している。

 それは、これまで右肩上がりの経済成長を続けてきたヨーロッパのサッカー界も例外ではない。むしろ、収入が大幅に増えたことによって各クラブの財布は膨れ上がり、自ずとランニングコストも増加。そして収入減を失った現在、それが自らの首を絞める大きな原因となってしまったのである。

 そこで、各クラブは存続の危機を乗り越えるために経費削減に着手。その最初のターゲットとなったのが選手や現場スタッフのサラリーだった。なぜなら、サッカークラブの支出の多くを占めるのが人件費だからだ。

 現在、多くのクラブが選手や現場スタッフと減給交渉を行っている理由はそこにある。

 では、現在ヨーロッパのサッカークラブはどれほどの人件費を抱えているのか? UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)が今年1月に公表した「the European Club Footballing Landscape report」にあるクラブ人件費レポートを見てみると、そこには以下のようなトップ10がランキングされている(2018年度の年間実績)。

1位 バルセロナ/スペイン=5億2900万ユーロ(約615億円)

2位 レアル・マドリー/スペイン=4億3100万ユーロ(約501億円)

3位 パリSG/フランス=3億3700万ユーロ(約391億円)

4位 マンチェスター・U/イングランド=3億3400万ユーロ(約388億円)

5位 バイエルン/ドイツ=3億1500万ユーロ(約366億円)

6位 マンチェスター・C/イングランド=3億1400万ユーロ(約365億円)

7位 リバプール/イングランド=2億9800万ユーロ(約346億円)

8位 チェルシー/イングランド=2億7500万ユーロ(約320億円)

9位 アーセナル/イングランド=2億7100万ユーロ(約315億円)

10位 ユベントス/イタリア=2億6100万ユーロ(約303億円)

 レオ・メッシを筆頭に高額なサラリーの選手を多く抱えるバルセロナが、世界で最も多額の賃金を支払っているクラブとなっている。ただその一方で、バルセロナは年間収入部門でも6億9200万ユーロ(約805億円)で2位に位置している。それを考えると高額な人件費も決して不思議ではないが、しかし問題は、収入に対する人件費の割合が77%に達している点だろう。

 この割合は、トップ10のクラブの中ではダントツの1位であり、7億5100万ユーロ(約873億円)で収入部門トップに立つレアル・マドリーの57%と比べても、かなり高いと言っていい。

 ちなみに、人件費トップ20にランクされたクラブの中で収入に対する人件費の割合が多いクラブは、19位のモナコ(フランス)の108%、13位エバートン(イングランド)の85%、20位クリスタルパレス(イングランド)の78%がトップ3。

 以下、バルセロナを挟んで18位レスター(イングランド)の75%、17位ミラン(イタリア)の70%と続いている。

 いずれにしても、クラブが年間予算の多くを占める人件費にメスを入れることができれば、リーグ戦再開までの延命措置としては有効な策となるだろう。

人件費を抑えたJ1クラブの経営

 一方、日本国内に目を向けてみると、J1クラブの人件費はヨーロッパのクラブとは事情が異なることが分かる。たとえば、Jリーグが公表している2018年度のクラブ決算一覧からチーム人件費をランキング化すると、トップ10は以下のようになる。

1位 ヴィッセル神戸=44億7700万円

2位 鹿島アントラーズ=31億5700万円

3位 浦和レッズ=31億800万円

4位 名古屋グランパス=28億2300万円

5位 柏レイソル=28億600万円

6位 サガン鳥栖=26億7000万円

7位 川崎フロンターレ=26億1400万円

8位 セレッソ大阪=23億3400万円

9位 横浜F・マリノス=23億100万円

10位 ガンバ大阪=21億9300万円

 際立っているのが、神戸の44億7700万円だ。ただ、神戸は収入でもリーグトップとなる96億6600万円を誇っており、そのうちの人件費の割合も半分以下。とりわけスポンサー収入の62億800万円が経営の大黒柱となっている点が大きい。ちなみにスポンサー収入の2位は、神戸の約半分にあたる33億4500万円の名古屋となっている。

 逆に、現在経営危機が報じられているサガン鳥栖は、42億5700万円の収入に対して6割以上にあたる26億7000万円の人件費を計上。しかも、2019年度の収入は約25億6160万円に激減したことが公表されており、その危機的状況が見て取れる。

 今後はチーム人件費を11億6900万円にまで減らして黒字化を目指すとしているが、たとえそれを実行して存続できたとしても、財政の抜本的改革は避けられそうにない。

 では、今後は日本もヨーロッパと同じように選手や現場スタッフの減給交渉が経営危機を乗り越えるための特効薬となるかといえば、必ずしもそうとはいえない。なぜなら多くのクラブは収入に対する人件費の割合が半分以下となっており、そもそも人件費自体も高くないからだ。

 もちろん、リーグ戦中断期間が長引けば長引くほど各クラブの財布からコストだけが流出し続けることになるため、いずれは減給交渉も想定しなければならないだろう。特にJ2やJ3のクラブはそれほどキャッシュを持ち合わせていないため、資金がショートするクラブが続々と生まれる可能性もある。

 そういう意味では、リーグやサッカー協会からの特別融資を含め、ヨーロッパとは異なる方法でこの危機を乗り越える必要があるだろう。