必見! パリ・サンジェルマンが脅威の「ファンタスティック4」を生かすトゥヘルの新戦術で独走態勢

(写真:ロイター/アフロ)

国内を席巻するパリの新カルテット

 デロイト社による最新のサッカークラブ長者番付「フットボールマネーリーグ(2018-2019)」で、バルセロナ、レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッド、バイエルン・ミュンヘンに続き、ついに世界トップ5にランクアップしたフランスの絶対王者パリ・サンジェルマン(パリ)。

 その年間売上高は、6億3590万ユーロ(約780億円)。2011年にカタール資本になって以降、クラブは右肩上がりの成長を続け、ネイマール移籍騒動に始まった今季もその豊富な資金力に相応しい世界屈指のスター軍団を形成している。とりわけ、クラブ通算最多得点記録保持者のウルグアイ代表エディンソン・カバーニがベンチに控えるという贅沢すぎる陣容は、世界王者リバプールと同等以上の華やかさがあると言っていいだろう。

 そのパリが、シーズン後半戦に入ってからようやく本格始動。指揮を執る2シーズン目のトーマス・トゥヘル監督が「ファンタスティック4」と呼ばれる前線4人を最大限に生かすための新戦術の構築に着手すると、国内リーグで2位マルセイユに8ポイント差をつけて独走態勢を整えている(第20節終了時点)。

 もっとも、リーグアン3連覇を目論むパリのシーズン前半戦は、低調な試合が続いていた。

 主な原因は、ネイマールの移籍騒動と故障者の続出。特にネイマールがチームに残留するかどうかはトゥヘルのチーム作りに大きな影響を与えるだけに、パリにとっての実質的な開幕は、夏の移籍市場が閉じたあとの第5節(9月14日)以降と、大きく出遅れることとなった。

 さらに悪いことに、それ以前の第3節トゥールーズ戦で「MCNトリオ(キリアン・エムバペ、カバーニ、ネイマール)」のエムバペとカバーニが揃って負傷。チーム残留が決まって第5節から登場したネイマールと入れ違いで戦線を離脱することとなり、しばらくは主力不在のまま戦わざるを得ない状況が続いたのである。

 こうなると、指揮を執るトゥヘルもお手上げ状態。試合中も頻繁にシステムを変更した昨季のような多彩な戦術を使いこなす手法が影を潜め、システムを4−3−3に固定するなど、ほとんどチーム戦術の植えつけを行なわないまま戦うことを強いられた。

 そんなトゥヘルが本格的にチーム作りに着手したのは12月。エムバペが2度目の負傷から完全復帰してからのことだった。

 それまでほとんどシステムを変えることがなかったトゥヘルは、第17節(12月7日)のモンペリエ戦でエムバペとマウロ・イカルディを2トップに配置する4−4−2を採用。守備バランスが崩れることを懸念し、それまでアタッカー4人を同時起用することを拒み続けていた指揮官が温めていた新戦術をお披露目すると、ようやく本来の強さを発揮して連勝街道をひた走ることとなった。

 すなわち、エムバペ&イカルディの2トップと、両サイドMFに配置されるネイマール&アンヘル・ディ・マリアによる「ファンタスティック4」の形成である。

 このカルテットの爆発力は、すぐに話題の的となる。「ファンタスティック4」を生かすための4−4−2に変更してからのパリは、リーグ戦、チャンピオンズリーグ(CL)、そしてふたつの国内カップ戦も含めた9試合で、なんと計39ゴールを記録。1試合平均4.3ゴールという驚異的な得点率を誇っているのだ。

 そのなかでも、仲良しコンビのネイマールとエムバペが時折見せる異次元のコンビプレーは必見だ。“二人の世界”モードに入ったら、どんな局面でも打開してしまう阿吽の呼吸とハイレベルなテクニックは、見る者すべてを魅了するスペクタクルがあり、現在のパリ最大のセールスポイントとなっている。

 もちろん、トゥヘルは「ファンタスティック4」を使うことでカウンターを受けやすいという側面があることも理解しており、そのための守備対応策も試合を重ねながら修正中。現状、その解決策としてカギとなりそうなポイントは、故障がちなカバーニがトップフォームに戻ることと、マルキーニョスのボランチ固定化といったところにありそうだ。

 いずれにしても、もはやフランス国内でパリに対抗できるようなチームは存在せず、後半戦もそのまま独走してリーグ3連覇を果たす可能性は高い。

 また、今シーズンは守護神ケイロル・ナバスを筆頭に、イカルディ、パブロ・サラビア、イドリッサ・ゲイェ、アブドゥ・ディアロ、アンデル・エレーラといった即戦力を大量補強し、選手層の厚みも増しているだけに、フランスカップとリーグカップを含めた国内三冠も濃厚と見ていいだろう。

予断を許さないCL出場権争い

 一方、パリ独走態勢とは対照的に、2位と3位に与えられるCL出場権争いについては、昨シーズン同様に最後まで予測不能な展開が続きそうだ。

 現状、そのポールポジションに立っているのは、2位のマルセイユ。だが、それを追うレンヌとリールもマルセイユと互角の実力者であり、さらに前スペイン代表監督のロベルト・モレーノを新監督に迎え入れて士気上がるモナコもダークホース的な存在だ。

 まず、戦前の予想を覆す好調ぶりで2位につけているマルセイユは、11月に入ってから6連勝を含めて8戦無敗で前半戦を終えたことが大きかった。

 特にパリに完敗したあとのリール戦とリヨン戦で、試合内容はよくないながらも相手の自滅もあって2連勝したことが転機となり、以降はエースのディミトリ・パイェが抜群のパフォーマンスでチームを牽引。それまで定まっていなかったアンドレ・ビラス・ボアス監督の戦術も、メンバーをほぼ固定したことで安定するようになったのが好調を維持できたポイントだ。

 後半戦に向けた好材料としては、負傷により長期の戦線離脱を強いられていたフロリアン・トヴァンの復帰が確実視されている点が挙げられる。これにより、4−3−3の両ウイングは左にパイェ、右にトヴァンを配置できるため、得点力がアップすることは間違いないだろう。

 そのマルセイユを追うレンヌとリールは、ヨーロッパのカップ戦で敗退しているため、後半戦はリーグ戦に集中できる点が後半戦に向けた好材料だ。

 マルセイユと5ポイント差の3位につけているレンヌは、フランス代表でもディディエ・デシャン監督の右腕を務めるギー・ステファンの息子、ジュリアン・ステファン監督が最大のキーマンとなる。将来を嘱望される39歳の青年監督は、昨シーズンは決勝でパリを破ってフランスカップを獲得。今シーズンも、堅守をベースにチームを着実に成長させている。

 大ブレイクを果たした17歳の天才MFエドゥアルド・カマヴィンガが進化を続け、チーム内得点王のエムベイェ・ニアンがゴールを量産すれば、悲願のCL出場権獲得も夢ではない。

 一方、現在は2位と10ポイント差に離されている昨シーズン2位のリールも、CL敗退によってリーグ戦に集中し、息を吹き返した印象だ。年明け早々のディジョン戦を落としたものの、クリストフ・ガルティエ監督が率いるチームらしい堅守を取り戻している点が明るい兆しと言える。

 また、新天地加入によって本来の調子を取り戻しつつある新戦力レナト・サンチェスが好調を持続し、チームを去ったニコラ・ペペ(現アーセナル)に替わる得点源として迎え入れたヴィクター・オシメンがこのままゴールを量産すれば、攻撃面の不安も解消されるはず。戦力的にはマルセイユとレンヌを上回っているだけに、パリを除くCL出場権獲得レースでは本命と見ることもできる。

 そして不気味なのが、目下29ポイントで9位に低迷しているモナコの存在だ。

 4戦無敗でシーズンを折り返しながら、監督交代に踏み切ったフロントの決断が吉と出るか凶と出るかが最大の見どころだが、年明けのパリとの2連戦では、勝ち点1に終わったもののさっそく後半戦の巻き返しに期待を持てる戦い方もできていた。

 前任者のレオナルド・ジャルディムは、シーズン途中から3バックを採用してチームを復調させた経緯があるだけに、4−4−2を基本にチーム作りを進めるロベルト・モレーノ新監督が新戦術を浸透させることができれば、3位以上に食い込む可能性は否定できない。

 特に、目下14ゴールをマークして得点ランキングトップに立つウィサム・ベン・イェデルと、アシストランキング2位の8アシストをマークするイスラム・スリマニの2トップコンビはリーグ屈指の破壊力を誇るだけに、新指揮官が彼らをどのように使いこなすのかが注目となりそうだ。

 そのほか、日本人にとっては、現在最下位に低迷している昌子源が所属するトゥールーズの動向も気になるところだ。

 シーズン途中で招へいしたアントワーヌ・コンブアレ監督は、初陣で勝利して以降、まさかの9連敗を喫し、結局、年明けのフランスカップでアマチュアクラブに敗れたことが決定打となって解任された。フロントはテクニカル・ダイレクターのデニス・ザンコが暫定監督を務めることを発表しているが、現状では残留確定圏の17位メスに8ポイント差も離されており、リーグアン残留が極めて厳しい状況にあることは間違いない。

 それだけに、怪我で前半戦を棒に振った昌子ができるだけ早く復帰し、救世主となれるかが注目される。

(集英社 Web Sportiva 1月10日掲載・加筆訂正)