9番スクラムハーフはボランチ!? サッカーファン目線でラグビーW杯を楽しむための観戦ポイント

(写真:ロイター/アフロ)

どちらも同じフットボール

 いよいよ日本開催のラグビーワールドカップ(RWC)が開幕する。そこで、普段ラグビーを見ないというサッカーファンのために、サッカー目線でラグビー観戦を楽しむためのポイントをいくつか紹介したい。

 そもそもラグビーの正式名称は「ラグビーフットボール」(細かくいうと15人制をラグビーユニオン、13人制をラグビーリーグ)。サッカーのそれは「アソシエーションフットボール」だ。

 日本にそれぞれが伝わった時、ラグビーを「ラ式蹴球」、サッカーを「ア式蹴球」と呼んでいたが、元々は方式(ルール)が異なる2つのフットボールとして認識されていた兄弟スポーツだから、両者の競技性には類似点が多い。

 どのような経緯でフットボールがラグビーとサッカーに分かれたのかは、かなり長くなるので省略するが、ひと言で言ってしまえば、結果的に手を使うことができるのがラグビーフットボールに、手を使えない(ゴールキーパー以外)のがサッカー(フットボール)になっただけ。

 今ではまったく異なるスポーツのように見えるかもしれないが、実は両者には同じ起源があると聞けば、サッカー好きもラグビーに親しみを感じるはずだ。

 前回大会のヒーロー五郎丸歩、あるいは今大会で10番を務める田村優が元々サッカー少年だったことは有名だが、サッカーからラグビーに転身する選手が多いのは、そんな背景があるからかもしれない。

攻守の肝となるスペースの重要性

 たとえばサッカーを観戦するうえで注目ポイントとなるのが、両チームの「スペース」の見つけ方、使い方だ。とりわけ攻撃側は相手の背後のスペースをいかにとるかが重要で、逆に守備側は相手にスペースを与えないことがディフェンスの肝になる。スペースを与えるとそのギャップを突かれ、相手に前進、突破を許してしまうからだ。

 それはラグビーも同じ。相手の防御ラインの背後をいかに突くかが前進のポイント。サッカーのドリブル突破のようにボールキャリアが走って相手を抜き去ることもその有効な手段のひとつであり、サッカーのクリアのようにボールを前に蹴って前進、陣地挽回することもある。

 その際、サッカーファンに是非注目してもらいたいのが、バックスリーのポジショニング、スペース管理だ。

 バックスリーとは、フルバック(15番)、ウイング(11、14番)の3人を指し、彼らは防御ラインの裏に空いたスペースに立ち、相手のキックに備えて位置取りを変化させる。その様は、まるでサッカーの最終ラインそのもの。ボールが右サイドにあればボールサイドのウイングがポジションを上げ、それに連動してフルバックともうひとりのウイングが立ち位置を変える。サッカーの「つるべ式3バック」の動きだ。

 バックスリーの動きに連動性がなく、誤ったポジションに立っているようだと、相手のキックによって一気に劣勢に立たされる。逆にキックする側から見ると、相手のバックスリーが対処し難いボールを蹴れれば、よいキックということになる。

 とにかく、ボールがあるところだけに注目するのではなく、「今どこにスペースがあるか」をチェックしながら試合を見ると、サッカーとの共通性が見えてくるはずだ。

攻守の切り替えに注目せよ

 また、「攻守の切り替え」も両者に共通している観戦ポイントだ。

 近年のサッカーでは攻守の切り替えがますます重要視されているが、ラグビーも同じ傾向にある。ボールを奪ってから、いかに速く攻めるか。相手が守備態勢を整える前に攻撃することがチャンスにつながりやすく、逆に、守備側は奪われた後にいかにスピーディーに守備態勢を整えるかが重要になる。

 前回大会でジャパン(日本代表)を率いたエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は、タックルした選手に3秒で立ち上がることを義務づけたそうだが、その理由が攻守の切り替えにあることは言うまでもない。

 サッカーでも、ボールを奪われた選手がそのまま相手にプレスをかけるという戦術が主流になっているが、共通しているのは、素早く守備を行うことで相手の攻撃の芽を摘むという考え方だ。

 その場合、誰かひとりでもサボっているとピンチに陥りやすい。ラグビーでも、接点にいかに速く入れるか、あるいはいかに速く防御ラインを形成できるかに注目すると、試合展開が読めるようになるはずだ。

ポジション的な類似性

 その他、両者をポジションごとに見比べても面白いだろう。

 たとえば、サッカーの攻撃の司令塔はトップ下(攻撃的MF)だが、ラグビーでそれにあたるのは10番のスタンドオフ(フライハーフ)だ。

 ただ、最近のサッカーはボランチが攻撃の司令塔になることが多いように、ラグビーでもボランチ的な役割を担う9番スクラムハーフがリズムを作り、攻撃の起点になる傾向がある。スクラムハーフが接点からボールを出した後、かつてはその多くのケースで10番にパスしてから攻撃が展開されたが、最近は10番を経由せずに9番起点の攻撃も多い。しかも9番には、キックの精度も求められるようになっている。

 サッカーのトップ下が相手にマークされやすいのと同じように、スタンドオフ(フライハーフ)も相手から厳しいチェックを受けやすい。そこで、後方のボランチが攻撃を組み立てるように、一手前のスクラムハーフを起点に攻撃を組み立てるのだ。これも、サッカー好きにとっては馴染みやすい視点だろう。

 ジェイミー・ジョセフHC率いる今回のジャパンでも、茂野海人、田中史朗、流大の3人がメンバーに加わっているが、これまでは通常スクラムハーフは2人が定番だったことを考えると、9番の重要性が増していることが分かる。

 もちろん、サッカーのトップ下のように、プレッシャーを受ける中でもスタンドオフ(フライハーフ)がゲームをコントロールし、決定的な仕事をすることに変わりはない。

 重要なのは、いかによいタイミングとよいかたちで10番にボールを渡すか。つまりその一手前でボランチ的なプレーを担っているスクラムハーフに注目すると、違った視点でラグビーの面白さを味わえるはずだ。

前進のカギを握るウイング

 もうひとつポジション的な類似点を挙げると、ウイングも注目ポイントになる。

 サッカーでは、タッチライン際でプレーするウイング(もしくはサイドバック)が前進しやすいポジションになる。中央では360度から相手のプレッシャーを浴びるが、タッチライン際のウイングは180度からしかプレッシャーを浴びないからだ。

 ラグビーでも、同じ理由でタッチライン際は前進しやすいエリアになる。多くのトライが両サイドで生まれるのはそのためだ。

 ボールの動きは、中央から外側へ。守備側も相手をタッチに追い込むようにディフェンスするので、結局、最後はタッチライン際の攻防になる。

 そんな中、快速ウインガーが相手を抜き去ることができれば、大きくゲインすることができるし、トライに持ち込むことができる。中島翔哉がドリブルで相手を剥がせばチャンスが生まれるように、福岡堅樹や松島幸太朗が相手を抜き去ればビッグチャンス。また、彼らがフィニッシュできるようなかたちでボールを渡すことが、トライへの近道になる。

 それ以外にも、サッカーとラグビーの競技性で似ている点は多い。サッカーでいう球際の攻防またはデュエル、すなわちラグビーでいうブレイクダウンが試合の優勢や劣勢に直結するのもそのひとつ。

 それも含めて、サッカーファンであればすんなりラグビーの面白さが頭に入ってくるはずだ。

「食わず嫌い」になると損をする。せっかく身近なところで世界トップレベルのラグビーを楽しめるのだから、ぜひともサッカー目線でラグビーW杯を楽しんでほしい。