狙い通りの前半から一転、後半の森保ジャパンの攻撃が機能しなかった原因は何か?【パラグアイ戦分析】

(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

スタメンも布陣も予想通り

 森保ジャパンにとって、9月5日に行なわれたパラグアイ戦は、その5日後に控えた2022年W杯2次予選、対ミャンマー戦(アウェー)をにらんでの最終調整試合という位置づけだった。

 そういう意味では、ほぼベストメンバーを編成した前半のうちに出色の2ゴールを挙げたうえ、クリーンシートでフルタイムを終えられたことは、準備としては上出来だったと言えるだろう。

 コパ・アメリカでは東京五輪世代を中心にしたメンバー編成だったため、A代表の実戦の場としては約3カ月ぶり。にもかかわらず、選手たちがブランクを感じさせないパフォーマンスを見せたことは、指揮官を安心させたに違いない。

 ちなみに、6月の2試合(トリニダード・トバゴ戦、エルサルバドル戦)では、森保一監督がそれまで封印してきた3バックをテスト。ただし、あくまでもオプションのひとつとしたうえで、「現段階ではA代表のベースは4バック」と明言していた。

 パラグアイ戦の前日会見でも、3バックと4バックのどちらを採用するのか問われた森保監督は、「試合中にこれまで試してきた3バックをチャレンジするかもしれませんが、基本的には4バックでスタートしようと考えています」とコメント。約1年前にスタートした森保ジャパンの基本システムでパラグアイに挑むこととなった。

 スタメンは、ほぼ予想どおりの面々。最終ラインは右から酒井宏樹、冨安健洋、吉田麻也、長友佑都。アタック陣も1トップに大迫勇也、1トップ下に南野拓実、右に堂安律、左に中島翔哉といったお馴染みの顔が並んだ。

 予想外のスタメン起用を挙げるとすれば、3月のボリビア戦から6月の2試合まで3戦連続で先発していたGKシュミット・ダニエルではなく、権田修一が起用された点、柴崎岳とダブルボランチを組む相手が遠藤航ではなく、評価を上げている橋本拳人になった点だ。どちらも驚きではなく、手堅さが特徴の森保監督らしい采配と言っていい。

 それを考えると、ミャンマー戦も、おそらくパラグアイ戦のスタメンがそのまま名を連ねる可能性が高い。負傷以外の理由で変更があるとすれば、柴崎のパートナー役が橋本ではなく遠藤になる可能性くらいか。また、劣悪なピッチコンディションを考慮すれば、GKはビルドアップが持ち味のシュミット・ダニエルより、堅実な権田か川島永嗣を起用するのが妥当だろう。

 このメンバーは、1月のアジアカップのAチームとほぼ同じだ。唯一変更されたポジションは、同大会を欠場した中島を除けば、ボランチ1枚のみ。ミャンマー戦で遠藤がスタメンに復帰すれば、中島以外は約8カ月前のスタメンが再結成されることになる。これを就任から1年間のチームづくりの蓄積と見るか、新戦力が台頭していないことによるメンバーの固定化と見るかは意見が分かれるところだが、現状ではどちらも当てはまる。

 いずれにしても、日本代表は、ミャンマー、モンゴル、タジキスタン、キルギスと同組という恵まれすぎたグループを、就任半年後に固まったベストメンバーを基本に来年6月まで続く2次予選を戦う可能性は高い。

日本が完勝した3つの要因

 一方、今年2月に就任したばかりのエドゥアルド・ベリッソ監督率いるパラグアイは、チームの骨格づくりの真っ最中。来年3月から始まるW杯南米予選に向けた強化を進めている。6月のコパ・アメリカでは準々決勝のブラジル戦でPK戦の末に敗退したが、アルゼンチンと引き分けるなど、伝統の堅守は健在だ。

 ベリッソ監督といえば、マルセロ・ビエルサ監督の系譜を継ぐマンマーク・ディフェンスを基本とする緻密なサッカーがトレードマーク。セビージャを率いた時に前立腺がんの治療で現場を離れたこともあったが、復帰後もそのスタイルは変わらず、この試合でも立ち上がりから強度の高いディフェンスでペースを握った。

 しかしながら、それは長くは続かなかった。

「疲労が影響して高いリズムを維持できなかった。言い訳にはしたくないが、長距離移動が影響したと思う」

 ベリッソ監督は試合後の会見でそう振り返ったが、そこにフィジカルコンディションが肝となるマンマーク・ディフェンスの落とし穴があった。前半の日本がパラグアイを圧倒できた理由のひとつだ。

 果たして、日本の動きについていけなくなったパラグアイのマンマークが綻びを見せるようになると、「自陣ゴールに近いところでしかボールを奪えず、攻撃も相手ゴールの遠くでしかプレーできなかった」というベリッソ監督のコメントどおりの試合展開となった。

 もっとも、日本ペースになった原因がパラグアイだけにあったわけではない。前半の日本には、パラグアイ対策をしっかり練っていたことを伺わせるプレーが随所に見られ、それによって森保監督がよく口にする「連動性」を生かした鮮やかなゴールを2度決めることができていたからだ。

 23分の先制ゴールの伏線は、13分のシーンにあった。守備に戻った堂安が中央でボールを奪うと、そのボールを拾った吉田が下がってきた大迫へショートパス。その後、中島、南野がダイレクトパスをつなげてボックス付近の大迫に戻し、さらにワントラップした大迫から堂安、中島、南野と再び連続ダイレクトパスをつなぎ、最後はボックス内で堂安がシュートチャンスを迎えたスピーディな攻撃だ。

 ゴールには結びつかなかったが、マンツーマンをかわす有効な手段のひとつであるダイレクトパスを使って中央突破したことで、日本の攻撃を活性化させるきっかけとなった。

 もうひとつ、マンツーマンをかわす有効な手段となっていたのが、中島のドリブル突破だ。「中島からスピーディで縦を突く攻撃が生まれていたため、守るのに苦労した」とはベリッソ監督のコメントだが、中島のドリブルも、パラグアイの守備の綻びを生じさせる原因になっていた。

 さらに、両ウイングの堂安と中島が中央に寄ってマークを引き付けたことも見逃せない。相手守備陣を中央に閉じさせておいて、タイミングよくオーバーラップしたサイドバックを使えば、相手は再びサイドに開かざるをえなくなる。そこで中央にクロスを入れれば、スペースが生まれたゴール前でフィニッシュにつなげることができる。

 前半23分と30分に生まれたゴールが、いずれも両サイドバックのクロスから生まれているのは偶然ではない。前半に日本が記録したクロスは計6本。前線4人に入った縦パスも16本と、日本の攻撃バランスは久しぶりに上々だった。

後半の内容が低調だった理由

 その他で目立っていた現象は、本来はその中心であるはずの柴崎の縦パスが1本のみだったこと。ポゼッションではなく、ダイレクトパスを多用しながらカウンターを中心とした縦に速い攻撃を目指していたことがわかる。

 実際、この試合のスタッツでも日本のボール支配率は48.3%で、パラグアイの51.7%を下回っている(前半は日本が48.9%、パラグアイが51.1%)。ボールの保持を求めないパラグアイが望まない展開だった。

 ところが、後半に入ると試合のリズムは大きく変化する。ミャンマー戦を見据えた森保監督が前半で堂安、中島、酒井をベンチに下げたことも影響したが、その主な要因はベリッソ監督の戦術変更にあった。

 コンディションの差が明らかになったパラグアイは、後半開始から3人を交代してシステムを4-4-2に変更すると、オーソドックスなゾーンディフェンスに舵を切ったのである。戦い方を変えてきた相手に対し、日本の対応力が問われる展開となったわけだが、残念ながら前半のような意図した攻撃が減少したことは否めない。

 日本の攻撃の中心となったのは、後半から堂安に代わって右ウイングに入った久保建英の積極的な仕掛けによるもの。有効なサイド攻撃から作ったチャンスは58分、左から原口が入れたマイナスのクロスを久保が直接狙ったシュートシーンだけだった。

 後半に見せたそれ以外のクロスは3本のみ。さらに言えば、後半から右サイドバックでプレーした冨安の2本(57分、90分)も、83分に途中出場で左サイドバックに入った安西幸輝のクロス(83分)も、味方に合わず相手にクリアされるなど、本数も成功率も低下した。

 それも含めて、後半の日本の攻撃が行き詰まりを見せたことは否定できない。とくに大迫に代わって永井謙佑が投入されてからは、連動した攻撃が影を潜め、単発の攻撃に終始してしまった印象だ。もしパラグアイが消耗していなければ、日本が押し込まれる時間が長くなっていても不思議ではなかった。

 そういう意味で、前半と後半で違った顔を見せてしまったパラグアイ戦は、2-0の勝利という結果とは別に、課題を浮き彫りにした。

「勝利したことはすばらしいが、試合を決める3点目を奪うチャンスもあり、選手が変わったあとにもっと安定したゲームができたはず」

 森保監督はそう振り返ったが、ベストメンバーで戦った前半と、戦術変更した相手に対応できなかった後半の差は明白だった。この状態が続けば、2次予選、そして最終予選と、この先約2年にわたって代わり映えのしないメンバーで戦い続ける可能性が高まる。

「ベストメンバーで戦い続けることによって、最終予選以降にマンネリ化と行き詰まりを見せてチーム力が低下する」。その傾向が定着している日本代表の歴史を振り返ると、森保ジャパンの今後に一抹の不安を感じてしまう試合だった。

(集英社 Web Sportiva 9月8日掲載・加筆訂正)