二足のわらじを履く森保監督は東京五輪でどのような戦術を使おうとしているのか?【エクアドル戦分析】

(写真:ロイター/アフロ)

「決めきる力」というひと言だけでは片付けられない問題

 1分1敗で迎えたコパ・アメリカのグループリーグ最終節。U-22の選手にオーバーエイジの選手を加えた日本が、ここまで2敗を喫して最下位に沈むエクアドルと対戦し、1-1で引き分けた。勝ち点2で終わった日本は、グループリーグ敗退が決定。森保一監督が苦肉の策で編成した今回のチームは、これで解散することになった。

 1-1という試合結果、そして90分以降に作った2度の決定機のインパクトもあり、このエクアドル戦の日本のパフォーマンスについてはおおよそポジティブな印象となった。実際、初戦のチリ戦と比べると、とくに若い選手たちが自信を持ってプレーするようにもなっていた。

 しかし、「決めきる力が足りなかった」というひと言でこの試合を総括してしまうと、問題の本質を見失ってしまいかねない。

 たとえば、日本戦で2-2のドローを演じたウルグアイも、多くのチャンスを作りながら「決めきる力が足りなかった」から勝ち点2を失ったと言うことができる。日本もウルグアイも表面的にはそうなるが、しかし、そこには根本的な違いが存在していることは言うまでもないだろう。

 優勝を狙う彼らにとって、グループリーグ突破というノルマさえクリアできれば、2-2という結果自体は大きな問題にはならない。ルイス・スアレスもエディンソン・カバーニも多くのチャンスでミスしたが、このあとの戦いで研ぎ澄まされた状態になれば世界屈指の決定力を誇るだけに、日本戦を振り返ったときに「決定力不足」という課題が浮上することはないだろう。

 しかし日本の場合、事情は異なる。

 重要なのはそのプロセスで、それを紐解かなければ「決めきる力が足りなかった」という言葉の背後にある多くの問題は解決できない。最後の最後にポジティブな印象を残した試合だったからこそ、とくに試合序盤から後半途中までに起きていた現象を改めて振り返ることが、来年の東京五輪を見据えたうえでも重要になる。

 まずは、森保監督が選んだスタメンである。初戦のチリ戦から中2日で迎えた2戦目のウルグアイ戦では、スタメン6人を入れ替えたが、中3日で迎えたエクアドル戦では2戦目のメンバーをベースにスタメンを編成。唯一、安部裕葵を久保建英に変更した。

 森保監督の頭の中にある今大会の目的を考えた場合、2戦目のウルグアイ戦のスタメン編成からは、経験と勝敗の割合が4対6、もしくは3対7と見ることができたが、エクアドル戦のチョイスからは、その割合は1対9に変化したと見ることができる。経験重視から勝ち点重視へ。実際、その傾向は森保監督が見せた後半の選手交代策からも見て取れた。

 ちなみに、今大会一度もピッチに立てなかった選手は招集23人のうち5人。つまり彼らを除くと、奇しくも五輪登録メンバー可能人数の18人になる。また、3戦ともスタメン出場を果たした選手は植田直通、冨安健洋、杉岡大暉、柴崎岳、中島翔哉の5人。冨安と杉岡はU-22なので、植田、柴崎、中島が、オーバーエイジ枠3人にすっぽりとはまる。

 これが意図的なのか偶然なのかは現時点で知る由もないが、森保監督が今大会を東京五輪のシミュレーションとして臨んだ可能性は高まったと見てよさそうだ。

 だとすれば、エクアドル戦も含めた今大会の3試合で採用し続けた4-2-3-1が、五輪本番用のメインシステムと考えるのが自然だろう。

 残された疑問は、森保監督がメンバー招集の段階から4-2-3-1を考えていたのかどうかという点だ。

 4バックの際の純粋なサイドバックが1人もいなかったことからすると、メンバー発表後に心変わりしたのか、もしくはこれまで3-4-2-1で強化を図っていた東京五輪世代の選手たちを4バックに順応させる腹積もり、ということになる。

 おそらく後者の可能性が高いと思われるが、いずれにせよ、その矛盾がそのままピッチ上で露呈してしまったのが、今大会で浮き彫りになった最大の問題点だった。

4-2-3-1のメリットを生かせないサッカー

 たとえば、エクアドル戦で日本が見せたサイドからのクロスボールは、前半1本、後半4本の計5本のみ。チリ戦が7本(前半1本、後半6本)、ウルグアイ戦が12本(前半8本、後半4本)だったので、3試合のなかで最も少なかったことになる。

 相手の実力を考えれば、より深刻にとらえる必要があるだろう。

 しかもクロス5本のうち、相手ペナルティーエリアの両サイドのエリアからマイナスに入れたクロスは0本。ウインガーがサイドをえぐることもなければ、サイドバックが攻め上がってクロスを入れることもなかった。

 いずれも、サイドを突破せずに試みた横パスに近いクロスか、アーリークロスに限られた。

 4-2-3-1のシステム上の特徴は、両サイドにサイドバックとウイングを配置することで、マイボール時に厚みのあるサイド攻撃を繰り出せる点にある。最大のポイントは、サイドバックとウイングの縦関係のコンビネーションで、2人の関係性を生かしてこそ、効果的なサイド攻撃は実現する。

 しかし今大会を通じて、日本のウイングとサイドバックのコンビネーションからサイドバックがクロスを入れたのは、ウルグアイ戦の59分のシーンが唯一。そのシーンでは、大外をオーバーラップした杉岡が、中島からパスをもらって左サイド深い位置からクロスを入れ、相手GKが弾いたこぼれ球を三好康児がシュート。日本の2ゴール目が決まっている。

 厚みのあるサイド攻撃がゴールにつながった典型的なシーンであり、4-2-3-1のシステム上の特徴を生かしたゴールだったと言える。

 ところがエクアドル戦では、一度もそれができなかった。これは3試合とも共通する問題だが、その原因は主に2つ考えられる。

 ひとつは、右の岩田智輝も左の杉岡も、純粋な4バックのサイドバックではないこと。高いポジションをとろうとするとき、もともとのスタートポジションが1列前にある3バックのウイングバックと、攻め上がったときに最終ラインに2枚しか残らない4バックのサイドバックでは、攻撃参加の難易度が異なってくる。

 4バックのサイドバックを3バックのウイングバックにコンバートするケースと、3バックのウイングバックを4バックのサイドバックにコンバートするケースでは、どちらの難易度が高いのかは言うまでもないだろう。まして、右の岩田は現在所属する大分トリニータでは3バックの一角でプレーしているだけに、さらに難度はアップする。

 もうひとつの原因は、両ウイングのポジショニングだ。

 とりわけ今大会の中島は、A代表でプレーするときよりも、明らかに中央でプレーする時間が長かった。仮に監督から自由を与えられていたとしても、その傾向が強すぎた。チリ戦では守備が破たんする要因のひとつになったが、この試合では攻撃面で問題を生じさせる原因の一端となった。

 この試合で日本が見せた縦パスは、前半23本、後半30本の計53本。A代表でもなかなか見られない本数を記録したが、その割には日本が相手を押し込んだ印象は薄い。

 ボール支配率を見ても、1ゴール目を決めた前半15分までは53.9%あったが、その後は15分ごとに48.6%、40.3%とトーンダウン。後半開始から15分間は46.5%で、記録したシュートは0本だった(その後のボール支配率は43.7%、49.9%と推移)。

 これだけの縦パスを駆使していても、主導権は握れない。そこにエクアドルの守備の問題は浮上しても、日本の攻撃の優位性は見えてこなかった。

 この試合で作った日本のチャンスは、縦パスからの中央攻撃に偏りすぎていた。

 ゴールに近いルートが空いていればそこを狙うのが当然だとしても、サイドエリアに誰もいないなかで攻撃が中央に偏ると、ボールをロストしやすく、カウンターのリスクも高まる。チリやウルグアイが相手なら、サイドを使ったカウンター攻撃から日本が2、3点を失ってもおかしくないシーンが多かった。

 1-1で試合を終えられたのは、エクアドルの稚拙な攻撃に救われたと言っても過言ではない。

 もちろんそれぞれのシステムにはメリットとデメリットが存在する。しかし、少なくとも4-2-3-1を採用するのであれば、そのメリットを生かす必要があるだろう。逆に、サイドを使わないサッカーをするなら、4-2-3-1を採用する意味はない。

 それこそが、今大会で日本のサッカーが機能していなかった最大の原因であり、この試合を「決めきる力が足りなかった」というひと言で総括できない理由でもある。

 今後、東京五輪に向けて4-2-3-1をメインとするなら、必ず解決しなければいけない問題だ。

東京五輪も4-2-3-1がメインになる可能性大

 そして、経験よりも勝ち点を重視したと思われる指揮官のベンチワークである。

 試合展開の推移から見た場合、この試合の最初のターニングポイントは、後半開始からエクアドルが1枚を代え、システムを4-1-4-1から4-2-3-1に変更したことだった。その後の約20分間、日本は1度のチャンスも作れず、逆にエクアドルは決定機こそ作れなかったものの、確実にリズムをつかむことに成功している。

 しかし森保監督は、具体的な修正を指示することもなく、66分の選手交代まで動くこともなかった。しかもその交代策は、岡崎に代えて同じポジションに上田綺世を投入したのみ。たしかにその後、日本は流れのなかから2度チャンスを作ったが、試合の流れを変えるには至らなかった。

 次に動いたのは三好を安部に代えた82分。さらにその6分後にはボランチの板倉滉を下げて前田大然を前線に投入し、攻撃枚数を増やして勝負をかけている。

 これは過去2試合とは明らかに異なる選手交代策で、そこに経験よりも勝ち点を重視した形跡が見て取れる。ただ、勝ち点3を狙うにはあまりにも遅すぎた交代策だった。

 一方、エクアドルを率いるエルナン・ダリオ・ゴメス監督は83分に3枚目のカードを切り終えると、最後はセンターバックのアルボレダが攻撃に参加するなど捨て身の攻撃でゴールを目指した。日本が試合終了間際に作ったビッグチャンスは、そんなスクランブル状態で生まれたものだった。

 いずれにしても、東京五輪を目指すチームの本格的強化は今大会からスタートしたばかり。二足のわらじを履く森保監督には、これから2022年のカタールW杯予選本番を迎えるA代表と、東京五輪を目指すU-22代表の2チームを、同時に強化しなければならないという難しい問題に直面することになる。

 それも含めて、森保監督は両チームとも4-2-3-1をメインとし、3-4-2-1をオプションとして強化する決断を下した可能性は高いと見ていいだろう。

 では、オプションの3-4-2-1はどんな戦況で使おうと考えているのか。今後の両チームの試合を見ていくうえでは、そこも見逃せない注目ポイントになってくるはずだ。

(集英社 Web Sportiva 6月27日掲載・加筆訂正)