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なぜ森保ジャパンの3-4-2-1は守備的に映ったのか? 【エルサルバドル戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

就任以来初めて試みた試合中のシステム変更の狙いは?

 2-0で勝利した6月9日のエルサルバドル戦のシュート数は15本。無得点に終わった4日前のトリニダード・トバゴ戦のシュート数が25本だったことを考えると、確かに日本の攻撃が改善され、チーム戦術の浸透も進歩したように見えるかもしれない。

 しかし前回も書いたように、強化のための親善試合においては、あくまでも結果より試合内容に焦点を絞る必要がある。しかも、ゴールが決まるか決まらないかは紙一重。W杯や国際大会といった本番の試合は別として、強化試合で結果だけを評価基準にしてしまうと“勘違いの素”になりやすい。

 たとえば、この試合で2ゴールを決めて勝利に貢献した永井がプレーするFC東京は、現在シーズンの真っ只中。長いシーズンを終えてひと息ついた後に合流し、長期休暇を目前にしたヨーロッパ組とは比べようのないほど良い状態にある。

 もちろん代表初ゴールを含めた2ゴールを記録した永井のパフォーマンスは賞賛すべきだが、トリニダード・トバゴ戦とエルサルバドル戦における日本の決定力、攻撃面についての評価は、その点を考慮して行うべきだろう。

 しかも、「日本が力のあるチームであることは試合前から分かっていた。今日の試合は選手に多くのことを学んでほしかった」(カルロス・デロスコボス監督)というこの日のエルサルバドルは、必要以上に日本をリスペクトしていた印象を受けた。

 序盤こそボールをつないで攻めようとする姿勢が見られたが、4日前の相手トリニダード・トバゴよりもテクニックやパスワークでは優れるものの、明らかにフィジカルで下回り、試合自体のインテンシティもかなり低くなってしまった。

 また、エルサルバドルは選手間の距離が遠いうえ、日本のダブルボランチに対するプレッシャーをほとんどかけることがなく、スペースを空けないようにポジションをとるだけの守備に終始。スタメンを大幅に入れ替えたとはいえ、日本にとっては戦いやすい相手だったことは間違いない。

 そんな中、この試合の注目ポイントになったのは、森保監督が前の試合に続いて3-4-2-1を採用したことと、就任以来、初めて試合中のシステム変更を行ったことだった。

 まず前者については、トリニダード・トバゴ戦のスタメンから3-4-2-1の「4」を総入れ替えして、特に両ウイングバックに違ったキャラクターの選手を起用。酒井&長友が、伊東&原口という本来は攻撃的MF(またはウイング)を担うプレーヤーに替わったことで、見た目的には攻撃的な布陣に変化した。

 ただし、実際にサッカーが攻撃的になったかと言えば、そうでもなかった。理由のひとつは、この日の1トップに永井が入ったことにより、日本の攻撃は幅をとってサイドから攻めるよりも、永井のスピードを意識した相手DFの背後を狙う縦への攻撃が目立っていたからだ。

 その象徴が、先制ゴールの起点になった冨安の縦パスだ。冨安のそれはくさびのパスではなく、DFの裏に抜け出す永井を狙った一発のロングフィードから生まれたもの。それ以外にもこの日の日本は裏を狙う一発のパスが多く、それが影響して相手を押し込むような厚みのある攻撃は影を潜めた。

 もちろん永井を生かすことを考えれば、それが有効な攻撃方法であったことは間違いない。しかし、それが攻撃的サッカーであるかどうかの基準にはなり得ない。むしろ5バックの状態など、守備的サッカーで有効な攻撃方法にカテゴライズするのが妥当だ。

 この試合の日本のボール支配率は、前半が50.8%で、後半は46.8%。最終的に1試合トータルでは48.9%と、51.1%のエルサルバドルに及ばなかった。客観的に見て、両ウイングバックのキャラクターが攻撃的になったにもかかわらず、チームとしては攻撃的サッカーをしていなかったことになる。

 攻撃的なのか、守備的なのかは、森保監督の3-4-2-1を評価するうえで極めて重要な要素になる。なぜならそれは、森保監督がこのオプションをどのような局面で使おうとしているかに直結する問題だからだ。

 後半59分。森保監督は、負傷した永井に代えて大迫を投入すると同時に、畠中と伊東を下げて、山中と室屋をピッチに送り込み、システムを4-2-3-1に変更した。代表監督に就任以来、16試合目にして初めて試合中にシステムを変えた瞬間だ。

 この時、1トップに大迫、2列目には堂安、南野、原口が配置され、ダブルボランチは引き続き小林と橋本がプレー。DFラインは室屋、冨安、昌子、山中が並んだ。

 果たして、この布陣は3-4-2-1よりも攻撃的なのか、守備的なのか。森保監督は、追加点を狙うために4-2-3-1に変更したのか、2点リードを守るために変えたのか。3-4-2-1を実戦で使おうとするなら、実はそこが最も重要なポイントになる。

 ちなみに、日本の後半開始15分間のボール支配率は37.3%で、シュートは2本。4-2-3-1に変えてからは、60分~75分間のボール支配率が46.7%、75分以降が56.1%と上昇し、60分以降にシュート5本を記録している。

 森保監督が3-4-2-1をどのようなオプションとして位置づけているのかはまだ明言していないので不明だが、少なくとも、この試合で見えたことは、3-4-2-1は4-2-3-1よりも守備的色合いが強いということだった。

 果たして、9月からスタートするW杯予選ではどのような局面で3バックを使うのか。これは、森保監督が自らに課した新しいチャレンジであり、新たに加わった評価ポイントとも言っていいだろう。

 最後に代表デビューを飾った久保について。

 おそらく森保監督としては予定外の起用だったと見るのが妥当だ。香川が負傷してメンバー外になったため、繰上げ当選のようなかたちでメンバー入りしたからである。また、試合自体のインテンシティが低かったこと、2-0でリードしていたことなど、多くの要素が彼のデビューを後押しした格好でもあった。

 とはいえ、計り知れないプレッシャーを感じる中、臆せず何度か自分の特長を出した点は評価に値する。いまさらながら、ポテンシャルは国内で群を抜く。

 しかし、プロサッカー選手は18歳から22歳の間が分岐点。その後のキャリアがおおよそ決まる大事な時期を迎えるだけに、今後は「適正な環境」の中でプレーを続けることが、成功への近道だと思われる。

 まずは所属クラブの公式戦でプレーし続けること。そのクラブがどのような環境にあるかにもよるが、それが極めて重要になる。また、代表としてはひとつ下の世代、U-22代表でスタメンの座を勝ち取り、コンスタントに活躍することが次のステップだ。

 今回のA代表デビューは、そのプロセスにおけるボーナスと見ておきたい。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】シュミット・ダニエル(GK)=6.0点

相手のシュートは後半66分の1本のみ。2試合連続で評価対象のプレーは限られる中、無難にプレーした。現状の正GK候補筆頭と見られるだけに、逆にW杯予選が心配になる。

【右DF】冨安健洋=6.5点

この試合でも安定した守備対応を見せたうえ、永井の先制点の場面では正確なフィードによってゴールを演出した。コパ・アメリカも出場予定ゆえ、さらなる成長が期待できそう。

【センターDF】昌子源=6.0点

キャプテンマークを巻いて最終ラインを統率。2試合連続で3バックのセンターでプレーした。主にラインコントロールなど守備面で安定感を見せ、上々のパフォーマンスだった。

【左DF】畠中槙之輔(59分途中交代)=6.0点

序盤は相手の16番に手を焼いた印象もあったが、時間の経過とともに落ち着きを取り戻した。前半41分には原口へのパスを通し、永井の2点ゴール目の起点となった。

【右ウイングバック】伊東純也(59分途中交代)=6.0点

この試合では右ウイングバックのポジションでプレー。得意のタッチライン際でのプレーとなったことで持ち味が多く出た。序盤には相手のミスを逃さず、チャンスを作った。

【左ウイングバック】原口元気(67分途中交代)=6.0点

経験済みだけに左ウイングバックでも戸惑うことなくプレーし、アシストも記録。現状、ポリバレント性が最大の強みになりつつあり、逆にスタメンの座が遠のいている感も。

【右ボランチ】橋本拳人(61分途中交代)=5.5点

所属クラブでの献身性を代表でも見せることができた点は評価できるが、それほど相手のプレッシャーを受けなかっただけに、攻撃面での貢献に物足りなさも感じられた。

【左ボランチ】小林祐希(80分途中交代)=5.5点

中盤に空いたスペースを動き回り、自由にプレー。それだけに、攻撃のテンポを上げられなかったことは反省点。次の移籍先次第で、今後の代表での立ち位置が左右されそう。

【右シャドー】堂安律(71分途中交代)=5.5点

強引なプレーを減らし、味方を使う選択を増やした印象。存在感は薄かった。現在は代表で壁にぶち当たっているが、今後はそれをどうやって乗り越えるのかに注目が集まる。

【左シャドー】南野拓実(67分途中交代)=5.5点

特にパスを受ける時のコントロールが不安定で、シュートやパスなど次のプレーにスムースに移行できていない印象。シュートがネットを揺らせない要因のひとつになっている。

【1トップ】永井謙佑(59分途中交代)=7.0点

今回は追加招集の立場だったが、自らの特長を生かしてチャンスをものにした。代表初ゴールを含めた2ゴールを記録し、マン・オブ・ザ・マッチの活躍。59分に負傷交代した。

【FW】大迫勇也(59分途中出場)=5.5点

負傷した永井に代わって後半途中から緊急出場。開かれた試合展開の中で枠内シュート2本を記録したが、いずれもネットを揺らせず。存在感を見せつけるには至らなかった。

【DF】山中亮輔(59分途中出場)=5.5点

畠中に代わって出場し、4-2-3-1の左サイドバックでプレー。後半63分にミドルシュートを狙ったが、枠を外れた。特筆すべきパフォーマンスもなく、無難なプレーに終わった。

【DF】室屋成(59分途中出場)=6.0点

伊東に代わって4-2-3-1の右サイドバックでプレー。大迫へ正確なクロスを入れるなど、攻撃面で存在感をアピール。その後に出場した久保との連携も含め、上々の出来だった。

【MF】久保建英(67分途中出場)=6.0点

代表デビューを飾った。試合展開、相手のレベルも影響したが、特長を発揮して爪痕を残した。まだA代表での出場は状況次第という条件はつくが、ポテンシャルは申し分ない。

【MF】中島翔哉(67分途中出場)=5.5点

4-2-3-1の左ウイングでプレー。いつものような違いを見せられなかったが、可もなく不可もなく。最大の見せ場となったFKの場面では、直接狙うもシュートは枠を外れた。

【MF】柴崎岳(80分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。小林に代わってボランチでプレーした。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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